211 スライムさんと日の出
寒い。
外の空気で目がしゃっきりと開き、だんだん、耳がちぎれそうに痛くなる。
朝のスープも飲んでいない。手袋の下は指先が動きにくい。
でも私は薄暗い早朝の、いつもの道を歩いていた。
「えいむさん!」
お店の前で、ぴょんぴょんはねている丸い影がいた。
スライムさんだ。
「おはよう」
「えいむさん、ちこくですよ!」
「え? もう、日が出ちゃった?」
私は空を見た。
紺色だった空が、だんだん青っぽくなってきていた。
「まだです!」
「よかった」
「えいむさん! よゆうが、だいじですよ!」
「そうだね。ごめんね」
「ゆるします!」
私たちは、道を歩いた。
「こっちがいいですよ」
すこし道がのぼっていく。
それに、山の、林のほうに向かっていた。
「林の中に入るの?」
「てまえです」
入っていく木々の前で、スライムさんがくるっと回って止まった。
その顔がすこし明るく見えた。
「あっちです!」
「あ」
坂の下の方には、先に行くと川があった。
その先はごつごつとした岩があって、さらに先には林がある。
もっと先は暗くてよく見えない。山の形だけはわかる。
山の向こうの空が水色っぽく。
もっとうすい色かもしれない。
山と山の間、谷のようにへこんでいるところが光った。
「でました!」
「うん」
白いすこし黄色いような、赤いような光。
見えたと思ったら、もう、すこしずつ大きくなってきた。
ちょっとの光だったのに、丸い形が見えるようになってきて、そうこうしているうちに、丸い光は地上から離れていた。
どれくらいの時間見ていたんだろう。すっかり、山と光が離れてしまってから、私はようやく、スライムさんを見た。
スライムさんも私を見た。
「どうでしたか!」
「明るかった!」
「でしょう!」
「うん。あときれい」
「でしょう!」
「スライムさんに誘ってもらってよかった」
「でしょう!」
「寒いけど」
「ふっふっふ」
スライムさんは、待ってましたとばかりに、にやりとした。
「どうしたの?」
「ぼくは、よういしていましたよ。あたたかい、のみものをね!」
「おお!」
「おいておいても、つめたくならない、まほうのびんに!」
「魔法の!」
「まほうなのにまほうじゃない、でもまほうのような、びんに!」
「おお! それは、どこに?」
私はまわりを見た。
「えっ?」
「どこにあるの?」
「……えいむさん」
「なに?」
「らくをして、あたたまる。そういうことでは、いけませんよ!」
スライムさんは、きっ、と私を見た。
「お店に忘れたの?」
「それはいえません!」
「あっ」
スライムさんは、ぴゅっ、と走り出した。
というか転がりだした。
「待って!」
「わはははは!」
スライムさんはころんころん転がりながら、お店のほうに向かっていった。




