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210 スライムさんとプレゼント箱

「えいむさん、ぷれぜんとをどうぞ!」


 私がお店に入るなり、スライムさんがカウンターの上でそう言って迎えてくれた。


 スライムさんの横には箱がある。白い包み紙に、赤いリボンが縦横と巻いてあって、上でちょうちょ結びになっていた。

 大きさは、スライムさんが入れそうなくらい。なかなか大きいぞ。


「プレゼント?」

「はい!」

「今日は、なにかあったっけ?」

「あってもなくても、ぷれぜんと。これがぼくのりゅうぎです!」

「そうだっけ」

「はい!」

 スライムさんは、力強く言った。


「でも、こんなに立派なプレゼントをもらうのは、なんだか悪いなあ」

 私はあらためて箱を見た。

 ぴんとした箱の大きさといい、リボンのきれいな色といい、中身を期待してしまう外見をしていた。


「おきになさらず!」

「そう?」

「どうぞ!」

 スライムさんが、すこし箱を押した。

「じゃあもらっちゃう」

 私は箱を持ち上げようと手をかけた。

 すると。


「あれ?」

 箱の横に手をかけて、重さをたしかめるためにちょっと持ったら、空箱のように軽い。

 と思ったら箱の、下を残してぱかっと開いてしまった。


 箱の下側の面がカウンターの上に残っていた。

 薬草がのっている。


「薬草だ」

「はい! どうぞ!」

「どうも?」

 私は箱を置いて、薬草を食べた。


「おいしい」

「でしょう!」

「ひんやりしている」

「きょうは、そとがひんやりしてますからね!」

「そっか。スライムさんも食べる?」

「はい!」

 私とスライムさんは、薬草をもむもむ食べた。


「おいしかったね」

「はい!」

「ところでこれはどういうこと?」

「やくそうの、あじについてですか?」

「そうじゃなくて。いつも、ふつうに、薬草をくれるよね?」


 買って帰るのとは別に、ここで食べる分ならとよくくれる。


「きづいてしまいましたね。そうです、これが、ぷれぜんとこうかです!」

「プレゼント効果?」

「はい! えいむさん。このはこをみて、わくわくしましたか?」

「え? うん、なんだかいいものが入ってるのかも、って思ったよ」

「でしょう! これが、しんせいひんです!」

 スライムさんは、箱を、ぷに、とさわった。


「この箱が?」

「そうです! これさえあれば、ありとあらゆるものが、ぷれぜんとになります!」

「たとえば?」

「やくそうでも! あさごはんでも! ちょっと、もってきて、といわれた、ねじでも!」

「ネジでも」

 欲しい人もいるのかもしれないけど、私はあまりネジに興味がない。

 そのネジでもプレゼントになってしまう。


「開けて、ネジが入ってたらちょっとがっかりするかな」

「がっかりですか?」

 スライムさんは、ちょっとつぶれた。

「でも、ただネジをわたされるよりも、うれしいかもしれない」

「うれしいですか!」

 スライムさんは、しゃきっとした。


「ふつうにもらうと、ふつうだけど、こうやってもらうと……。まず、わくわくがあるでしょ?」

「はい」

「開けたら、そのわくわくはなくなるんだけど」

「はい……」

「開けるまでは、わくわくだよね?」

「はい!」


 つまり、いったん、わくわくが追加されて、そのわくわくが消える。

 消えただけで損をしているわけではない。


 ということは、わくわくが消えるまでの間は、純粋に、わくわくが増えているわけで。


「わくわくお得理論だね!」

「なるほど!」


 ちょっとしたものをこれで届けたりしたら、楽しそうだ。


「すごくごうかな料理じゃなくても、いつものパンでも、この中にあったらちょっとおいしそうに見えるかも。

「そうですか!」

「画期的だね」

「はい!」

 スライムさんは、ぴょん、ととんで、空中で体を横に一回転させて着地した。


「やるね」

「はい!」

「……そうだ。こうしたらどうなるんだろう」

 私は箱を持った。

 スライムさんがそれを見つめているのを確認しながら、私はゆっくり、頭にかぶった。


「え、えいむさん……!?」

「どうも、プレゼントエイムです」

 私はあいさつをした。


「ぷ、ぷれぜんとえいむさん……!!」

「どうも、スライムさん」

「これはこれは……。ぷれぜんとえいむさん」

「どうかしましたか?」

「いつものえいむさんでもすごいのに、ぷれぜんとえいむさん……。これは、すごすぎる……」

「プレゼントスライムさんもやる?」

「! はい!」

「どうぞ」

 私は、スライムさんに箱をかぶせた。


 すっぽりかぶってしまって、ただの箱にしか見えない。


 私はゆっくり持ち上げた。


 スライムさんが私を期待に満ちた目で見ていた。

「プレゼントスライムさんだ……」

「はい!」

 スライムさんは元気に言った。

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