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21 スライムさんと手品

 今日もスライムさんと話をしていたとき、ふと私は思いついた。


「スライムさん、これって魔法の道具?」


 私が見ていたのは、しましま模様のハンカチだった。

「ちがいますよ。ふつうのはんかちです」

「ちょっと借りてもいい?」

「はい! いっかげついないには、かえしてくださいね!」

「すぐ返すよ!」


 私はハンカチを手にとった。

 薄っぺらい生地で、ちょうどいい。


 両手でそれぞれ端をつまんで、ひらひらさせた。

「スライムさん、ここに横しまのハンカチがあります」

「はい!」

「これを、小さく丸めます」

 私は両手で握るようにして、手の中にハンカチを入れた。


「そして魔法をかけます。くーるくる」

「おお」

「さて。このハンカチはどうなったでしょうか

「わかりません!」

「では」


 私はハンカチを元通り広げてみせた。

 ただし、最初に持っていた端の、となりを持っている。


「横しまだったハンカチが、なんと縦しまになってしまいましたー!」


 私が大げさに言うと、スライムさんは、ぽかんとして見ていた。

 あれ?

 なーんだ、持つ場所を変えてるだけじゃないですかー! なんて、笑ってもらえると思ったのにな。


「すごいです!」

「え?」


 スライムさんは目を輝かせて言った。

「すごいです! えいむさんは、まほうがつかえたんですね!」

「え。ええと……」

「すごいです! どういうまほうですか?」

「あ、え? えっと」


 スライムさんのことだから、嫌味なんかではなく、本気で言っているに決まってる。

 どうしよう。

 こうなると、説明するのがなんだか恥ずかしい。


「あの、あ、いまのは魔法じゃなくて」

「まほうじゃない!」

 スライムさんが目を丸くした。


「それはいよいよすごいですね!」

「じゃなくて」

「……ふふふ。ほんとうはわかってるんですよ」

 スライムさんがにやりと笑う。


 なーんだ。

 私はほっとした。


「もう、スライムさんも人が悪いなあ」

「その、はんかちは、まほうのどうぐではありません。ですが! ほかにまほうのどうぐがある……。そのてのなかにね!」

 スライムさんが、びしっ、と私の右手をにらみつけた。


「どうです? ずぼしでしょう?」

「ん?」

 なんか話がかみ合ってないぞ?


「てんそうのはこ、ですね?」


 スライムさんはカウンターから降りると、奥でごそごそやっていた。

 やがて持ってきたのは、私の手くらいの大きさの箱、二つだった。


「いいですか」

 スライムさんは両方の箱を開けた。

 どちらも中はからっぽだ。

 また閉める。


「ここに」

 スライムさんは、片方の箱に小石を入れた。

 模様が、白と緑が混ざりあう途中のような、変わったものだった。

 ふたを閉める。

 開ける。

「え?」


 からっぽだ。


 そしてスライムさんがもう一方の箱を開けると、いま入れた小石が入っていた。


「なにこれ」

「てんそうのはこ、ですよ」

 スライムさんによれば、この箱に入れると、一方に入れたものはもう一方に移る、というものらしい。


「えいむさんは、この、てんそうのはこをつかったんです!」

 びしっ!


「たてしまのはんかちを、べつのばしょに、べつのばしょから、よこしまのはんかちをだした。これが、たてしまを、よこしまにした、とりっくです!」

 びしっ!


「……」

「まほうはつかっていない、でも、まほうのどうぐはつかった。そういう、とりっくですね!」

 びしっ!


 スライムさんは、犯人でも見つけたかのような顔をしていた。


「えっと、あの……」

「なんですか!」

「ま、まいりました」

「やっぱり! ぼくにかかれば、こんなものです!」


 スライムさんは得意げだった。

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