208 スライムさんと○○しないと出られない部屋
「こんにち……」
中に入ってそう言いかけたとき、背後でお店の入り口がバタン! と勢いよく閉まって、私は飛び上がりそうになった。
強風だろうか。でもそんな風は感じなかった。
「えいむさん……」
スライムさんが、ひょこりとカウンターにあがった。
「スライムさん。いま、風ふいた?」
「いいえ」
「じゃあ」
「……まるまるしないと、でられませんよ」
「まるまる?」
「はい」
スライムさんは言った。
「まるまるというのは、そこに、なにかが入ります」
「まるは、空欄の○?」
「そうです」
「じゃあ、なにかしないと出られないっていうこと?」
「はい。ちょうど、そういったのろいがかかるか、かからないか、というときえいむさんがきたので、かかりました!」
「私のせいで……?」
「ちがいます。そうです」
「どっち!?」
「はんぶんはぼくですし、もうはんぶんも、ぼくといっても、いいかもしれません」
「スライムさん。……私も、半分受け持つよ!」
「えいむさん! ありがとうございます!」
スライムさんはぷにぷに動いた。
「それで……、私たちは外に出られなくなったの?」
「はい」
「なにをすればいいの?」
「わかりません」
「わからないの?」
「ぼくらに、できること、ということはたしかです」
「でも、なにをすればいいのか、わからない」
「はい」
「うーん。どうしようか」
「……いいあんがあります」
「なに?」
「いったん、やくそうをたべましょう」
「そうだね」
私は椅子を2つと、テーブルを持ってきた。
テーブルには、薬草がのった皿を置く。
椅子には私が座って、となりのいすにはスライムさんが乗った。
「むずかしいことを、かんがえるなら、まず、おちつくことがひつようです」
「なるほど」
「あせると、よけい、じたいがわるくなります。もしくは、いっしゅんで、かいけつします」
「どっちだろうね。はい、スライムさん」
私は薬草をスライムさんにわたした。
「ありがとうございます!」
とむしゃり。
むしゃりむしゃりと食べる。
「今日はごうかいだね」
「ふっふっふ。ごうかいすらいむです!」
「じゃあ私も」
むしゃり。
むしゃり、むしゃり。
「お、えいむさんも、ごうかいですね!」
「でしょう」
そのとき、入り口で、カチリ、となにか音がした。
「なんの音だろう」
私が歩いていくと、入り口がバーン! と開いた。
外が見える。
「開いたよ、スライムさん」
「ええー!?」
スライムさんが椅子から飛び出した。
私に軽くぶつかる。
「どういうことですかえいむさん!」
「薬草を食べればよかったのかな」
「なるほど。なんていうとおもったんですか!」
スライムさんが左右にすばやく動いた。
「どうしたのスライムさん!」
「これから、ぼくが、かれいに、かいけつしようとおもったのに!」
「出られるんだからよかったじゃない」
「こうしてはいられない!」
スライムさんがお店の奥に向かう。
そして、バタン! とまた入り口が閉まった。
「ふっふっふ!」
スライムさんがもどってくる。
「スライムさん、また閉まっちゃったよ」
「しめました!」
「どうして?」
「こんどこそ、ぼくが、かれいに、かいけつするからです!」
「そっか。じゃあ、いったん薬草を」
私がむしゃり。
すると……。
入り口が、ぱかーん、と開いた。
「こら! えいむさん!」
「えへへ。うっかりうっかり」
「うっかりだったらしょうがないですけど! じゃあ、もういっかい!」
スライムさんが奥に向かう。
もどってきたところで。
「ぼくが、かれいに」
「むしゃり」
私が薬草をかじると、また開いた。
「こらえいむさん!」
「うっかり、うっかり」
「わざとですね!」
「……むっしゃり、むっしゃり」
「たべないでください!」




