19 スライムさんのおやすみ
おやすみ。
よろず屋に言ったら、お店の前に看板が出ていた。
今日はちゃんと、薬草を買いに来たんだけど。
まあでも、スライムさんも休みたいときもあるだろう。
しょうがないので、道具屋さんまで行くことにした。
翌日来てみると、また、おやすみ、という看板が出ていた。
めずらしいこともあるものだ。
おやすみなら仕方がない。
私は帰ることにした。
さらに次の日、来てみると、また、おやすみ、という看板が出ていた。
さすがになんだか変だ。
病気になったりしたのだろうか。
それとも、もうお店をやめてしまう?
遠くへ商品を買いに行ったりしているのだろうか。
私がよろず屋の前で考えていたら、急に入り口の戸が開いた。
スライムさんだ。
「いつになったらはいってくるんですか!」
おこっている。
「いつって、おやすみっていう看板が出てたから。ひっくり返すの忘れたの?」
「なにをいってるんですか! よくみてください!」
スライムさんが力説する。
そう言われても、と看板の文字をよく見てみる。
「あれ?」
おやすみ。
たしかに、不安定な字でそう書いてある。
けれども、その字をよく見てみると……。
「よろずや、って書いてある」
私が言うと、スライムさんは満足そうにした。
小さな、よろずや、という文字を大量に書くことで、離れて見ると、おやすみ、となっているようにしているのだ。
「どうです! すごいでしょう!」
「スライムさんが書いたの?」
「いらい、しました。500ごーるどもしましたよ!」
料金として高いのか安いのかはわからないけれども、500ゴールドかけるほどのものかな、とは思ってしまった。言いはしないけど。
「でもこれ、おやすみ、っていう意味なのか、よろずやが営業中っていう意味なのか、わからないような……」
「しんのいみが、どちらなのか、わからないですか?」
真の意味?
「うん。それに、離れて見る人のためにあるんだから、お客さんにはわからないかも」
「ぼくはわかりますよ」
「スライムさんは看板がなくてもわかるからね」
「へへへ」
なんだかうれしそうにしている。
「まあどうぞ、はいってください。つまらないおみせですが」
スライムさんがお店の中に入っていこうとする。
「スライムさん、看板」
「かんばんは、ちゃんとでてますよ?」
「もー!」
私はもう一度スライムさんに説明をした。




