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184 スライムさんと抹茶

 お店に入ると、スライムさんが待ちかまえていた。

 どことなく、いつもよりおだやかな表情に見える。


「えいむさん。いらっしゃいませ……」

「あ、こんにちは」

「おちゃ、いかがですか……」

「お茶? いいの?」

「はい、では……」


 スライムさんは、いつもよりもそっと、カウンターの上に乗った。


 そして、奥のほうにあった器を押してくる。


「えいむさん、これをどうぞ……」


 スライムさんがカウンターに用意していたのは、黒っぽい器だった。

 大きさは、私のコップよりもちょっと横が広くて縦が短い。


「これは?」

「おちゃです……」

「ふうん?」


 コップなのかな?


「コップにしては、なんだか、ちょっと、でこぼこしてる?」

 表面が、つるりとしておらず、ところどころ、でこぼこで、ざらりとして感じられるところすらあった。


 しかも、中に入っているお茶は、なんだか緑色をしている。


「シチューみたいに、透き通ってないスープだね」

 自分でそう言ってみると、野菜スープに思えてきた。


「いい、おちゃです……。あと、これはおかしです……」

 スライムさんは、白くて丸いものが3つのった小皿を出してきた。

 人さし指の爪くらいの大きさだ。


「食べていいの?」

「はい……」


 私はその白い物を口に入れてみた。

「砂糖のお菓子かな」


 でも、すごくあまいというわけではなく、ほんのりとしたあまさがじわりと口の中に広がって、溶けて消えた。


「! おかしから、たべましたね……」

「えっ?」

「なんでもないです……。どうですか……」

「あんまり食べたことないかんじだけど、おいしい」

「よかったです……」 

「じゃあ、次は、お茶ももらうね」


 私は、器を手にとった。


「黒くてでこぼこしてるけど、なんだかきれいだね」

 私は器をまわして、すこしちがう角度から器を見てみた。

 光が当たるとふしぎに青っぽく見えるところもある。


「! うつわを、まわしましたね……」

「えっ?」

「なんでもないです……。どうぞ……」


 私は、おそるおそる、野菜シチューのようなお茶を飲んでみる。

「あ……。おいしいかもしれない」

 最初、どろりとした感じで、ちょっといまいちかもしれないと思ったけれど、あまみもあって、いい香りがして……。


 私はすいすい、最後まで飲んでしまった。


「とてもおいしかったです」

 と器を置く。


「! さいごに、ひとことを……」

 スライムさんがぽつりと言う。


「え?」

「……。えいむさん、やったことあります……?」

「なにを?」

「おちゃを……」

「お茶をやるってなに?」

「とぼけてますよね……? のみくちを、ゆびで、ふきましたよね……? ……。……。おちゃを、しってますね!!」

「なんの話?」

「ほんとうに、しらない……? ということは……」


 スライムさんは、ゆっくりカウンターから降りた。


「すごいのは、ぼくじゃなかった……? えいむさんだった……?」

 よた、よた、と私からはなれる。

「スライムさん?」

「すごくないすらいむさんだった……?? うわー!」


 スライムさんがお店をとびだしていった。


「待ってー!」

「すごいえいむさんは、こないでくださいー!」

「私はすごくないからー! 一緒にお茶飲もうよー!」

「それはたのしそうですー!」

「じゃあ逃げないでー!」

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