181 スライムさんとですし
「どうぞ!」
スライムさんが、カウンターの上に薬草を持ってきてくれた。
「もらっていいの?」
「はい!」
「でも、お高いんでしょう?」
「はい! でも……、きょうだけは……。たべてかえるなら、むりょうにします!」
「やった!」
「はい!」
私たちは、いつものように、もむもむと薬草を食べた。
「あ、そうだ。スライムさんは、お客さんと話をしてて、困ることってある?」
「こまることですか?」
「話をしてるとき、ずっと話してる人がいるときあるよね」
「ありますね!」
「そういうときは、どうするの?」
「きいています!」
スライムさんは言った。
「はなしているひとには、きく。これです!」
「そうなんだけど、いそがしいときもあるでしょ?」
「ありますね!」
「そういうときでも、きくの?」
「そういうときは、いそがしいので! といいます!」
スライムさんは、ぴょん、ととんだ。
「うまく言えないときは?」
「……えいむさん。きょうは、ですしのあそびをしましょう!」
「ですしの遊び?」
「はい!」
スライムさんは、ぴょん、ととんだ。
「ですしは、かいわをつづけることもできますし、もらうことも、できます!」
「ふうん? どういうこと?」
「たとえば……」
スライムさんは、ちょっと体をひねった。
「ぼくが、やくそうのはなしをします」
「うん」
「はなしに、はいってきてみてください!」
「わかった」
「やくそうは、おいしいですし……。からだにもよくて、きれいですし……。それに、うらにわで、つくれるから、べんりですし……」
「……」
「おみせでうることもできるので、おしごとにもなりますし……」
「ねえスライムさん」
「なんですか?」
「話に入れないよ」
「どうしてですか?」
「ですし、ですしって言うから……。あっ」
「そうです!」
スライムさんは、きりっ、とした。
「ですし、とさいごにつけておくと、ずっと、はなせるのです!」
「そうだったのか!」
言われてみると、そんな気もする。
「話が長い、お父さんの友だちも、ですし、ですし、って言ってた気がする」
「でしょう! ですしは、あいてのかいわにも、わりこめます!」
「どんなふうに?」
「じゃあ、えいむさん。やくそうについて、はなしてください!」
「わかった」
ええっと。
「私は、薬草をよく、スライムさんのお店に買いに来ます」
「そうなんですね! やっぱりやくそうは……。えいむさん!」
「なに?」
「きます、っていういいかたは、かんたんに、わりこめます!」
「あ、そっか。薬草をスライムさんのお店に買いに来ますし……、そのまま、スライムさんと遊んだりしますし……。スライムさんは、いつも元気ですし……」
「げんきですし、ぼくは、いろいろなしなものを、えいむさんとあそぶためによういしたりしますし!」
スライムさんは、私を見た。
「そっか。ですし、って言うと、途中から入りやすいね」
「そうです! あとは、おいしい? ってきいてください」
「え? スライムさん、薬草、おいしい?」
「おいしいですし、やくそうはきれいですし、ですしですし、ですしですしですし! こんなふうに、みじかいへんじを、ながばなしに、できますし!」
「そっか。でも、内容がなくなってきたね」
「ないようが、あるか、ないかは、べつもんだいです!」
「たしかに」
「じゃあ、ですしをうまく使って、話をする方法を練習しようかなあ」
「それもいいですし、れんしゅうをしないというほうほうもありますし」
「どうしようかなー」
「あ、えいむさん! いま、ぼくが、ですしをつかってるところですよ!」
「うーんと、まずは、薬草でも食べようかなー」
「えいむさん! ですし!」
「私もですし」
「あー、めちゃくちゃですしー!」
「ですしですし」
「えいむさん!」
「ですし」
「ですし!」




