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18 エイムと熱

 朝起きると、やけに暑く感じた。

 そのせいかなんだか息苦しくて、体が重い。

 母にそう言うと、そんなことはなくて、今日はとても涼しくて気持ちのいい日だと言う。


 おかしいな、と思いながらパンを食べようとしたけれど、ちょっと口に入れただけで胸がいっぱいになってしまう。

 母は私の様子を見て、おでこに手をあてた。


 熱がある。

 寝ているよう言われ、私はベッドにもどった。

 

 せっかくの朝ごはんは、薬草のスープに変わってしまった。

 母は、私がスープをすっかり飲むまで、ベッドの横で監視をしていた。監視というには優しい顔をしていたけれども、許さないという意味では同じことだ。

 スプーンで一口。

 苦い。


 母は、体にいいから飲みなさい、とすぐに言う。

 言われる前から言われているみたいなものだから、いっそ言わなくてもいいのにと思う。


 スープの一滴一滴にまで染みわたった苦味を飲みほして、私はまたベッドに寝た。


 母は食器を片づけて部屋を出ていった。


 たいくつだった。

 頭はぼうっとするけれど、もう苦しさはない。

 のども痛くない。

 せきも出ない。

 だいじょうぶなのではないか。


 そうっとベッドから降りてみる。

「おっと」

 足元が揺れているみたいに、ふわふわしていた。

 苦しさも痛みもないだけに、ちょっと怖い気がした。

 体がこわれてしまったのではないか、そんな気持ちだ。

 ベッドにもどらざるをえなかった。


 窓の外はとてもいい天気だった。

 スライムさんはなにをして遊んでいるだろう。

 私はといえば、お昼になったらまた薬草のスープを飲まなければならない。

 寝たふりをしてやりすごそうか。

 でも、熱がひどくなったら困る。


 そうだ。


 私は思いついて、母を呼んだ。


 しばらくして、帰ってきた母が持ってきたのは、葉っぱが赤い薬草だった。

 私が、スライムさんのよろず屋に行って、かぜが治る薬草を買ってきて、と頼んだのだ。


 母はどこか半信半疑だったけれど、スライムさんの良い評判も聞いたことがあるそうで、その薬草を使ってスープを作ってくれた。

 スープに、すこし赤みが出ていた。


 飲んでみる。


「う」


 辛い。

 それから、体がぽっぽと熱くなってきた。

「これを飲んだら治るって?」

 母にきいた。


 スライムさんによればこの薬草は、病気に対抗する力を強くする力があるものだという。

 治る力を手に入れるので、病気が終わったらいままでよりも元気になれるということだった。

 そう聞くと、熱くなってくるのも、体が治ってきている証拠のように思えた。


 もう一口飲むと、最初よりも辛くない。

 もう一口、もう一口と飲んでいって、すっかり、全部飲んでしまった。

 ぽかぽかした体で、横になる。

 ちょっと寝苦しく感じたけれども、しばらくしたら眠気がおそってきた。



 翌朝、すっかり元気になった私はスライムさんのよろず屋に出かけた。

「こんにちは」

「おや! げんきになったんですね!」

「うんありがとう」

 一日見なかっただけなのに、スライムさんの姿をなつかしく感じた。


「スライムさんの薬草のおかげだよ」

「そうでしょう。あのやくそうは、すごいやくそうですからね」

「高かったのかな」

 ふと、値段が気になった。


「そんなことはありません。あれは、うらでそだてているやくそうのなかで、たまにできるやくそうなので、むりょうです」

「スライムさん、無料はだめだって言ったでしょ」

「あれは、つんだらすぐくさるやくそうなので、どっちみち、どっちみちなのですよ!」

「どっちみち、どっちみち」

 よくわからないけれど、今日のところは、そういうことにしておこう。


 スライムさんは、カウンターの上に、ひとつ草を置いた。

 緑の草に、穴があいていた。

 虫食いというよりも、人の手が入ったような、等間隔の穴だった。

「ほしふりそう、っていうんですよ! きれいでしょう!」

「へえ……」

 スライムさんによると、これは偶然こういう穴になるらしい。


 私は、大きな月が出ている夜を思い浮かべた。

 月の光が草の穴を通り抜けて、地面にできた影に、ぽつ、ぽつ、と光が見える。

 それが星降り草の名前の由来ではないか。


「きれいだね」

「でも、あなのせいで、くさってしまうんです」

「ふうん? すぐ腐るのは、昨日の薬草でしょ?」

「そうですよ。これです!」

「え? 昨日のは……、あれでしょ」

 私はカウンターに赤い草を見つけた。


「いやですね! あれは、とってもからいだけのくさですよ! たべてもからいだけです!」

「え?」

「からだはあったまるかもしれませんね!」

「え? スライムさん?」

「どうかしましたか?」

 スライムさんは不思議そうに私を見る。


「……ちょっとお話があります」

 私はしばらく、スライムさんと、薬草の取り扱いについての、大事なお話をした。



「スライムさん! 薬草をまちがえたら危ないんです! ちゃんと聞いてますか!」

「はい!」


 返事は良い。

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