179 スライムさんと薬草男
「これは……?」
スライムさんに案内されてお店の裏に行くと、よろいが置いてあった。
騎士が、完全に武装しているようなもので、体だけではなく、腕や足の関節までしっかり守れるような、とてもしっかりした、大きなよろいだった。
土台に取りつけられていて、しっかり立っている。
でも、頭のかぶとだけがない。というより。
頭のところに、薬草がたっぷり、のせられていた。
「ついに、かんせいしました!」
スライムさんは、よろいのところまで行くと、ぽんぽん、とつま先をさわった。
「やくそうおとこです!」
「薬草、男……?」
「はい!」
スライムさんは、うれしそうに、左右に小刻みに動いた。
「やくそうおとこは、せいぎのみかたです!」
「ほうほう?」
「たとえば! だれかが、とうぞくに、おそわれていたとします!」
「大変だ」
「しかし、やくそうおとこは、そんなひとをたすけます!」
「よろいを着てるし、強そうだもんね」
「はい! あっというまにたおします!」
スライムさんは言った。
「めでたし、めでたし」
「しかし!」
スライムさんは、ぴょこぴょこと、歩きはじめた。
「ここでひとつ、もんだいがあります」
「なんだろう」
「とうぞくに、おそわれる。そんなときに、かんがえられることはあるでしょうか」
スライムさんは私を見た。
「えいむくん、どうぞ」
「なんだろう……。あ、お金がない!」
「もーちーろーん、それもあるでしょう。しかし、にんげんとしてもっともたいせつな、きけんがせまっていることがありませんか?」
「……ケガ?」
「そうです!」
スライムさんは、前かがみになった。
「えー、とうぞくですから、とうぜん! ぼうりょくによって、きんせんをうばいとる! そういうことがかんがえられるんです! よろしいですか! ですから、ひがいしゃは、けがをしていることがある! そうかんがえるのがだとうではないでしょうか!」
「なるほど」
「えー、えいむくん。つまり。やくそうです。やくそうおとこは、やくそうを、たべさせてあげるんですー」
スライムさんは言った。
「食べさせてあげる?」
「はいー、やくそうおとこは、やくそうでできています。ですから……。たすけにいっても、やくそうを、わすれることなく、たべさせてあげることができるんです!」
「うっかり、忘れたら大変だもんね」
「そのとおりです! すらはたすらざぶろうでした。……どうでした?」
「うん?」
なにが?
「さて。というわけで、このやくそうおとこをかんせいさせられれば、せかいがへいわになるんです!」
「薬草で体をつくって、食べさせてあげるなんて、大発明だね」
「はい!」
スライムさんは、ぴょん、ととんだ。
「自分の体を食べさせるなんて、そんな発想、誰にもできないよ!」
「そうですか!?」
「正義の味方が自分体を食べさせるなんて、すごいよ! 愛と勇気だけが友だちなんて、誰にも思いつかないよ!」
「えへへ」
スライムさんがにこにこした。
「じゃあ、薬草男は、これから仕事?」
「それはまだです。うごかないので」
「薬草男は、どうやって動かすの?」
「わかりません!」
「うん?」
「なかみは、ぎっしり、やくそうがはいってるだけなので、うごかないんですよねえ」
「そっか。そうだよね」
「はい!」
「じゃあ、危険から身を守ってくれる人に、薬草を持ってもらうしかないね」
「そう、ですね……」
スライムさんは、残念そうにした。
「おさっしします」
「はい? あ、でも、薬草を使った帽子とか、あれば便利だよね。いつもかぶってればいいんだし。かぶとの中にかぶれるとか」
「! そうですね!」
「そういうの、入荷してみたら?」
「はい!」




