171 スライムさんとぼく
スライムさんは、お店の前にある草原で、ぐねぐねと体をくねらせていた。
くねらせながら、たまにイモムシみたいな動きになって前に進んでから、またぐねぐねと、横向きに転がる。
「スライムさん?」
私が呼びかけると、スライムさんは止まった。
「あ、えいむさん。……どうして、ぼくがぼくだってわかりましたか?」
「え?」
「ぼくは、どうしてぼくってわかるんですかねえ」
スライムさんは言った。
「どうしてって、見ればわかるんじゃない?」
「うーん」
スライムさんは軽くぐねった。
「じゃあ、えいむさんがいないときは、どうですか?」
「うん?」
「えいむさんが、みててくれないと、ぼくはいないんですかね?」
スライムさんは言った。
「いると思うけど」
「かくにんが、できませんよ!」
「ははあ……」
私はいったん腕を組んだ。
「じゃあ、こういうのは?」
「どういうのですか?」
「鏡を見る!」
「なるほど!」
スライムさんは、ぐねぐねから、ぴょん、ととんだ。
「かがみをつかえば、だれもいなくても、かくにんできますね!」
「うん」
「やりました!」
スライムさんは、ぴょん、ぴょん、ととんでいたけれど。
ぐね、となった。
「あれ? スライムさん?」
「かがみがないと、ぼくは、いないんですかね……?」
スライムさんが、ぐねぐね。
「そっか。そうなっちゃうか」
「はい。かがみがないと、ぼくは、いない……?」
「それは、水面があればいいとか、そういうことじゃないんだよね?」
「はい!」
「同じだもんねえ……。うーん」
言われてみると、私がここにいるということも、たしかに、はっきり証明できないような気がする。
「じゃあ、私も、いない……?」
「えいむさんはいますよ!」
「そっか。危なかった」
「ぎりぎりでした!」
スライムさんは、ふう、と息をはいた。
「私がいるかどうか、か……。そんなこと、考えたことなかったなあ」
「そうですか?」
「私がいるかどうかなんて、あたりまえだと思ってたから。スライムさんはすごいねえ」
「ふっふっふ!」
「でも、だったら……。あれ? なんか変だな」
「なんですか?」
「本当に私がいるかなあ、って私が考えるんでしょ? だったら、いるんじゃない?」
「どういうことですか!」
スライムさんが私にぴったりくっついた。
「いるかなあ、って私が思ってるんでしょ?」
「はい!」
「じゃあ、私はいるよね」
「はい!」
「スライムさんも、自分はいるかなあ、って考えてるでしょ?」
「はい!」
「じゃあ、スライムさんも、いるよね?」
「!! はい!」
「いたよ!」
「いました!」
私たちは見合って、よし、と一緒に言った。




