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166 スライムさんとたてる

「えいむさんは、もくひょうってありますか?」

 スライムさんとお茶を飲んでいたら、スライムさんが言った。


「目標?」

「はい」

「うーん。早寝早起きとか?」

「もっとおおきな、もくひょうです!」

「ああ、そういうことなら、とくにないかなあ。スライムさんは、なにか目標立てたの?」

「ぼくは、おうさまに……。えいむさん」

「なに?」

「どうして、もくひょうを、たてる、っていうんですか?」


 スライムさんが言った。


「それは……。目標を立てることの意味じゃなくて、どうして、立てる、って言うかってことだよね?」

「そうです!」

「どうしてだろうね。やっぱり、目標って、置いておいたりはしないじゃない?」

「といいますと?」

「置くとかじゃなくて、立てる! って言ったほうが、ちゃんとできそうじゃない?」

「なるほど……? なるほど! そうですね!」

 スライムさんが、ぴょーん、ととんだ。


「たてたほうが、たってますから、たってますよ!」

「うん」

「なるほど。これからは、たてます!」

 スライムさんは、ちょっとだけ縦長になった。


「うん。ところでスライムさん、王様って」

「! えいむさん! どうして、はらをたてる、っていうんですか!」

 スライムさんは、はっとして、言った。


「腹を立てる?」

「はい!」

「それは……。ほら、やっぱり、お腹って、ふだん、立ってないでしょ?」

「はい!」

「それで、お腹が立ったら、こう……。怒ってる感じするよね?」

「はい?」

「やわらかいお腹が、立ったら、怒ってるぞ! って」

「なるほど。えいむさんのおなかも、やわらかいですか?」

「は?」

 私が言ったら、スライムさんはちょっと目をそらした。


「しつれいしました。でも、そうですね。ぼくのからだが、たったら、おこってるかんじも、しますね!」

「でしょう? でも、想像だけどね」

「いえ、あってます! これからは、それでいきます!」

 スライムさんは、ぴ、と立てた。


「で、スライムさん、王」

「そうだ! なら、どうして、おちゃをたてる、っていうんですか?」

「え? そんなこと言う?」

「はい! おちゃをいれることを、たてる、っていうこともあります!」

「スライムさんは、物知りだねえ」

「えいむさんに、おほめ、いただきました!」

 スライムさんはぴょーん、ととんだ。


「ということは、えいむさんは、わからない?」

「そうだね。お茶を立てる? なんだろうね」

「そうですね」

「……そういえば」

「なにか、ひらめきましたか!?」

 スライムさんが、ぴくっ、と私を見た。


「お茶を飲むと、ちょっと、眠気がうすれる、って聞いたことはあるけど」

「ねむけが……?」

「もしかして、お茶で立てる、みたいな、目が覚める、っていう意味の言葉があったとか?」

「めが、さめる……?」

「ほら、言葉って、だんだん言い方が変わったりするでしょう? だから、お茶も、昔は、お茶を飲んだら立てるくらい目が覚めるって意味だったのが、お茶を立てる、っていう言い方に変わっていったとか?」


 スライムさんが、難しい顔でかたまった。


「ちがうかな」

「そうです! まちがいないです!」

「そうかな?」

「そうです!」

「そうかな!」

「そうです!」

「そうだね!」

「そうです!」


 私たちは、そうかなそうですダンスをおどりながら、たまにお茶を飲んだ。


「そうかな!」

「そうです!」

「そうかな!」

「そうです!」

「お茶をたてるって、立てるでいいんだよね?」

「そうです! え、なんですか?」

「なんでもない」

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