114 スライムさんと名前を忘れた草
「えいむさんえいむさん!」
スライムさんが、ぴょんぴょん、はねながらやってきた。
「あれ? ここはどこだっけ?」
私は、見たこともない場所にいた。
私とスライムさんの間には、私の身長くらいの長い棒が立っている。
「そんなことはいいんです! ちょっと、ききたいことがあります!」
「なに、スライムさん」
「ぼく、すきなくさ、があるんですけど、それのなまえを、わすれちゃったんです」
「忘れちゃったの?」
「だから、そのとくちょうをいうので、いっしょにおもいだしてくれませんか?」
「しょうがないなあ。じゃあ、思い出すきっかけになるようなこと、言ってくれる?」
「わかりました!」
スライムさんは、ぴょん。
「そのくさは、いろいろなひとがつかいます。けがをなおしたり、たいりょくをかいふくしたりするのにつかう、くさです」
「あー……。なら、薬草だね。けがを治したり、体力を回復する草っていったら、薬草だよ。その特徴は、完全に薬草だよ」
「なるほど……。でも、ちょっとわからないんです」
「なにが?」
「ぼくも、やくそうかも、とおもったんですけど、そのくさは、おうさまに、もっていくのに、ちょうどいいものだったきがします」
「あー。じゃあ、薬草じゃないかあ」
「そうですか?」
「王様に持っていくのが、薬草じゃ、ちょっとさびしいもんね。薬草も、王様に献上されたら、ちょっとびっくりしちゃうかも」
「なるほど!」
「あ、あと、どうぐやさんで、いちばんやすく、かえるものだった、きがしますけど」
「なら薬草だよ。道具屋で一番安いっていったら、薬草だよ。たまに、よくわからない、あんまり使わない道具が一番安いこともあるけど、それは草じゃないから。一番安くて草っていったら、薬草。決まりだね」
「そうですか! やりました!」
「よかったね」
「あ、それと、ひとつ、てにいれると、ずっとながく、つかっていける、ってききました」
「じゃあ、薬草じゃないね。薬草は、いくらあっても困らないくらい、たくさんあったほうがいいもん。質より量なのが、薬草だから。スライムさんが思い出せないのは、薬草じゃないね」
「そうなんですか。そうだそれと、つかうとき、のむのか、きずにつけるのか、たべるのか、いまいちわからなかったきがします!」
「あ、じゃあ薬草だよ。薬草って、いまいち、どんなふうに使っていいのか、はっきりしないところがあるもん。なんとなく使ってるところがあるもんね。私とスライムさんは、おいしく食べてるけど、それが正しいかってきかれたらわからないよ。それは、薬草、決まりだね」
「そうですか! あと、ねんのためなんですけど。すごく、つよいまものを、たいじするときは、かかせない、ってきいたことがあります」
「じゃあ薬草じゃないかなあ。薬草は、ちょっとした相手だけ、どうにかできる草だもん。強い相手だったら、薬草を食べ続けないといけなくなって、戦いどころじゃなくなっちゃうんじゃない? 戦ってる間、体は傷だらけで、お腹いっぱいで、大変だよ。薬草じゃないよ、きっと」
「そうですか。あと、すらいむをたおしたら、てにはいるってききました」
「スライムを倒したら手に入る?」
「そうです。えいむさん、ぼくをたおしてください」
スライムさんが、にじり寄ってくる。
「スライムさん?」
「さあえいむさん、ぼくをたおすんです!」
「ええ?」
「えいむさん! えいむさん!」
「う、うう」
なんだか、体が重くなってきて……。
「はっ」
「えいむさん、まだねてるんですか?」
顔のすぐ前に、スライムさんがいた。
私のおなかの上に乗っていたのだ。
スライムさんが降りたので、起き上がる。
ここは、よろず屋の裏庭だった。
「スライムさん、重いよ……」
「やっとおきましたか?」
「えっと……? そっか、私、待ってたら、寝ちゃったんだっけ。えっと、なにしてたんだっけ」
「ししょくかいですよ!」
スライムさんが、草のいっぱい入ったかごを、押してきた。
「あ、そっか。試食会……。この草、なんて名前だっけ?」
「えいむさん、わすれちゃったんですか?」
「スライムさん、私がこの草の特徴を言うから、名前を教えてくれる?」




