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10 スライムさんとヘクスサリバー

「こんにちは」

 私は今日もよろず屋にやってきた。でも、めずらしく知らない男の人がいてびっくりしてしまった。


 カウンターの前にいるその人は私を見た。お店の中はせまいので、私と男の人はほとんどならんでいるみたいになってしまう。


「こんにちは」

 男の人はにっこり笑った。清潔で、きれいな顔をしている。服装や体つきから男の人だとわかったけれども、顔だけだと女の人にも見えてしまうようなところがある。

 腰には剣を差していた。


「ここのスライムさんは、危なくない魔物ですよ」

 私が言うと、男の人はうなずいた。

「うん、よくわかってるよ」

「そうですか」


「おまたせしました!」

 スライムさんが外からやってきた。


「あ、めいるさんもいらっしゃいませ!」

「こんにちは」

 私は、他の人の前でいつものように名前を訂正するのがなんだか恥ずかしくて、そのままにしておいた。


 スライムさんはカウンターの横の木戸から中に入っていった。

「君はメイルちゃん?」

「あ、あの、ええと」

「もしかして、またスライムさんは人の名前まちがってるのかな」

 男の人は笑っていた。


「まちがえられたこと、あるんですか?」

「いつもだよ」

「どうぞ!」

 スライムさんがカウンターの上に石を置いた。キラキラ光る石だった。ただ光っているのではなく、虹が動いているかのような、いろいろな光り方をしていた。


「ちょっと試していいかな」

「どうぞ!」

 スライムさんが言う。


「あ、剣を抜くからちょっと離れて」

「こっちにきていいですよ」

 スライムさんが言ったので、私はカウンターの中に入らせてもらった。


 そして男の人が剣を抜いた。

「わあ」

 私は思わず声が出た。

 男の人の剣は、スライムさんの石のように、キラキラと光っていた。でもこちらは単調な光り方だった。


 男の人は、カウンターに置かれた石を刃にあてて、そっとなでるように動かした。

 きい、きい、とこすれる音が聞こえる。


「あれ?」

 刃が虹のように光った気がした。


 それは見まちがいではなく、石でこすった部分が虹のように光る。

 どんどん広がっていって、石を離しても剣の刃はその光のままだった。


「うん。いいね、ありがとう」

 男の人は言った。

 そして、腰から出した巾着袋をカウンターに置いた。がちゃ、という音が聞こえた。


「お代はこれで」

「はいどうも」

 スライムさんは言った。

「ちゃんと確認してよ」

 男の人は巾着袋の中を開けて見せた。

 たくさんの金貨が入っている。


「はいどうも」

 スライムさんが言うと、男の人は苦笑した。

「ちゃんと全部確認してほしいんだけどな」

「だいじょうぶですよ」

「また来るから、もし足りなかったら言ってよ」

「はい!」

「じゃあね」

 男の人は言って、私にちょっと手を振って帰っていった。


「ありがとうございました!」

 スライムさんが体を振って見送った。


「お客さんなんてめずらしいね」

「たまにはきてますよ! ちゃんときてるんですから!」

 スライムさんがぴょんぴょんはねた。

「いまの人は?」

「ええと……、あれるさんです!」

 ということは、アレルではないということなんだろう。


「あれるさんのけんは、とくべつなちからがひつようなので、そのけんのちからをたまに、あのいしであたえないといけないんです。そのいしです」

「へえ。すごい剣なの?」

「はい。ゆうめいですよ! せいけん、へくすさりばーです!」

「ヘクスサリバー?」

「はい!」

 聖剣ヘクスサリバー。スライムさん元気に言ったのできっと有名な剣なんだろう。

 まちがって言ってるんだろうけど。

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