第83話 破天を成すために
エタり続けてほぼ数年放置してしまい申し訳ございません。
書き次第投稿してどうにか終わらせます…
『繰り返しお伝え致します。本時刻発車予定のツングースカ行きの列車でしたが、道中の魔族発生の影響により運転を見合わせており、運転再開の予定は未定となっています。繰り返し‥‥』
叶夢達による魔族撃退より数時間後。ツングースカの最寄りの駅のホームでは、被害の現状と遅延のアナウンスが繰り返し流されていた。
「‥‥先遣部隊の手によって、人命の被害はゼロか」
「素晴らしいです」
発車予定の列車の車内。征魔連合軍の制服に身を包んだ二人の男が手に持ったタブレットで数分前の速報を眺めていた。
「しかし、列車を飛ばして敵を一気に蹴散らすとは‥‥少々野蛮ではありませんか?」
「ははは‥‥相変わらずだな、ゼノンは」
「隊長の旧友でしたか?」
「旧友? まさか‥‥」
タブレットを持った方、整えられた金色の髪に深い藍色の目を持ち、左目の下には泣きぼくろがある青年は嬉しそうに笑いをうかべる。
「今でも友人だよ。ゼノン、ベロニカもメアリーも、朔夜‥‥そして」
「そして‥‥?」
「叶夢も、な」
「この戦場で再会出来ることを願っておりますよ。アルフレッド隊長」
「あぁ、ありがとう。アトラス」
「しかし、何故貴方はそこまで刀堂 叶夢に拘っているのですか? 彼は一度、貴方を裏切って‥‥」
「アトラス‥‥叶夢は仲間を裏切るような奴じゃない。あれはそうするしか無かったんだ。俺にはそれを責めることは出来ない」
「ですが‥‥いえ、失礼致しました」
「‥‥さて、列車が動くのを待つとするか」
アルフレッドは窓の外に目を向けながら、持っていた缶コーヒーの栓を片手で開けた。
ーーー
「ふむふむ。それで車両を蹴飛ばして群れを退けたと‥‥魔族の力のブーストどうなってんの???」
「今更だろ白鳩。まぁ同じ魔子の俺でもあそこまでやれないが」
「さすが脳筋担当だにゃ‥‥」
列車を降り、現場調査を朔夜達に任せた叶夢達は拠点のキャンプを目指し僅かに雪の残る荒野を歩いていた。
「アイツらタクシー捕まえて来るのかよ‥‥あぁ、俺らも拾ってくるんだった」
「全く。なんで叶夢はあそこで拾うのを渋ったんですか‥‥」
「待つよりも早いかなって思ったんだよ‥‥それに一般人こっちに向かわせる訳にも行かないだろ?」
「隊長、絶対後ろにアドリブ付け足しましたね」
「紫以奈。それは言わないでくれ」
「おい! こんなクソ長い道歩かされるこっちの身にもなってみろにゃ!」
「なってるだろ。俺も歩いてるんだし」
「そりゃ‥‥そうだけどにゃ!」
「軽く論破されてる‥」
「それにさ、好きなんだよ。こういうところ歩くの。言ってる場合じゃないっていうのは分かってるんだけどな」
叶夢は嬉しさと悲しさが混じる苦笑いした顔を四人に向ける。
「ここから大体二十分ぐらい歩くけど、大丈夫なの? 叶夢くん」
「むしろ時間があって助かったよ。魔力回路の冷却が出来るし‥‥さっきうっかり使っちまったからなぁ」
「一応聞くが、刀通しての魔法ならお前のストック使うことにはならないんだよにゃ?」
「あぁ、紅祟の刀身に使ってる魔煌石には溜め込んだ魔力を増幅させる効果があるからな。しかも打つのは俺じゃなくても良いって言うのが尚良い」
「奥の手みたいな使い方出来るのは偉いね。しかも叶夢くんの魔力回路のストックを使わないっていうのが暴走のリスクを抑えてくれてるし」
「だろだろ? もっと褒めてくれ」
「そうだね。後でたくさんアルカトラズ社に高評価レビューを送っておくよ」
「俺のことじゃないのか‥‥あだっ」
早足で追いついた千夜に、叶夢は頭を軽く叩かれた。
「当たり前です。特に叶夢煽てるとろくな事にならないのをみんな知ってるので」
「はいはい‥‥頭に乗りやすいですよーだ」
叶夢は首の後ろに手をやりながら、気だるそうに再び歩き始めた。
ーーー
「痛ッ!!‥‥思ったよりも身体への傷が深かったか‥‥」
「そりゃそうやろ‥‥回復魔法貸したろか?」
「悪いな‥‥頼むわ蛇之原。あー痛た‥‥」
場所は変わる。ツングースカのキャンプには戦いで傷付いた頼光が戻り、元いた狩耶は救急箱を頼光の手元に置いて、手当をしていた。
「にしても、君が敵を逃すなんて珍しいこともあるもんやなぁ。わざと?」
「半分は本気だったよ。ただ、明確に倒せるビジョンが俺には無かった」
「ビジョンなぁ‥‥」
「筋書き通りの癖によく言うよ。頼光」
そう呟き、頼光の近くに珈琲置いたのは不機嫌そうな顔をうかべたリアムだった。
「筋書き通りとは人聞き悪いな、リアム。俺だってあの時点で倒したかった。でも無理だった」
「あの怪物になんか希望的未来でも見えちゃったの?」
「違ぇよ、あれは俺が倒すべき敵じゃない。叶夢‥‥ゼルリッチの魔子が倒さなきゃいけないんだ」
「へぇ、興味深いこと言うやん?」
「これからの時代、あれぐらい越えられないんじゃ話にならないからな‥‥」
「随分酷なこと言うんだね。過度な期待は無駄死にの元だよ?」
頼光の期待を込めた言葉に、リアムは複雑な表情を漏らす。
「過度な期待ね。お前、叶夢達のこと信じてねえの?」
「頼光くんが信じ過ぎ。いくら自慢の後輩だからって言って‥‥」
「だからあそこまで弱らせるまでやったろ‥‥それに」
「はいストップ。口論すんのは任務終わってからにせえわ。そろそろみんな来るで」
口を閉じていた狩那が頼光の傷を治し終わると、軽く頼光の背中を平手で叩く。
「あだっ!」
「リアムも次の作戦に備えとき。時間もあんまり残ってないんやからな」
「あぁ。分かってるよ」
リアムは珈琲を飲み干すと、再びモニターの前に座り直した。
「頼光、サクリファイスが完治するまでの時間は?」
「いてて‥‥まぁあんだけの傷与えて、回復と適応を同時にやろうもんならそうだな‥‥」
頼光は少し考えた後に、リアムに目を向けて口を開いた。
「ざっと12時間。どっちかに全振りしたなら‥‥6時間ってとこだな」




