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紅い死神の征魔戦争  作者: 雨色 A音
7/82

第7話 孤立無援

本来はこちらが7話となった話なのですが、うっかりミスで投稿せずそのまま10話以上更新してしまいました…

申し訳ありません

4月25日午後8時中央舍地下5階。

神具顕現のために叶夢達31小隊はここにいた。

地下5階には闘技場があり、面積もあのローマのコロッセオとほぼ同じ面積だという。闘技場らしき門をくぐり抜けると、フィールドに広がっていたのは半径5mで描かれていた魔法陣だ。


(なるほど‥ここで神具顕現を行うのか‥)


叶夢が辺りを見回していると観客席にオペレーターや神座がいるのを確認した。


「神座司令!31小隊五人全員揃いました!」


白鳩がいつもより大きめの声を出し、神座に報告をし、反応した神座は観客席から飛び降りこちらに向かってきた。


「お疲れ様。昨日の手紙で伝えた通り、今夜は神具顕現を行う。まぁ‥約1名を除いてだがな叶夢」


「うるせーな嫌味か? ていうか、これ別に俺いなくても良かったんじゃないのか?」


叶夢の悪態に対し神座は軽く鼻で笑いながら返す。


「いやいや、無事に神具が制御出来るとも限らんだろ? 非常用だ‥あとお前また敬語忘れてんぞ」


「う!‥あーはいはい。たしかに俺は必要でしたね。流石神座司令ご懸命な判断です」


「はぁ‥まぁいいや‥」


神座は叶夢の後ろの4人に視点を戻した。


「神具顕現の際に触媒になるのは、武器だけじゃない。神具になる英雄や神はお前ら自身の人格を見て武器となるんだ。だからどんな奴が来てもおかしくない。つまるところ神具は持ち手で腐ることがないから、そこら辺は安心しろ」


「司令! 質問よろしいでしょうか!?」


「おう」


突然に白鳩が挙手し、その大声に叶夢がうるさそうに耳を塞ぐ。


「顕現できたとして、解放の詠唱等はどうすれば良いでしょうか?」


「勝手に頭に入って口から出る。以上」


「ありがとうございました!」


(くっそがばがば)


二人のやり取りに叶夢が顔に手を当て呆れながら、四人から離れる。


「質問は以上か?無いならこのまま神具顕現に入る。俺は今日、用事があるから手短に済ませるぞ」


神座が後ろに下がると白鳩が魔法陣の中心に向かった。そして弓を自分の足元に置き、右手を前に翳した。同時に魔法陣が煌めき回り出す。


「神具顕現!ロビン・フッド!」


顕現が終わると同時に魔法陣の光と回転は止まり、白鳩が足元にあった自分の弓に手をかけるとあることに気づいた。


「あれ‥形が違ってる?」


神具顕現する前と形状が明らかに違っていた。神具になる前は特に目立った特徴が無い物だったが、神具ロビン・フッドとなった白鳩の弓はより刺々しくなり白から深い緑となっていた。白鳩は変化した自らの弓を興味深そうに見ながら魔法陣から出てきた。


「何かあっさりだったなぁ‥でもこれで俺も神具持ちか。能力とかも使いこなせるようにならないとね!叶夢く‥ぐはっ!」


叶夢は白鳩が嫌味を言う前に拳を腹に当て口止めをした。


「よし、次は私‥」


出ていく白鳩とすれ違うように矢岬が魔法陣に向かっていった。白鳩と同じように背中にかけたライフルを地面に置き、右手を翳すと魔法陣が紫に光り出した。


「神具顕現!メデューサ!」


詠唱が終わりライフルを背負うと、顔を赤くして豹助達の元に戻ってきた。


「何か‥恥ずかしかった‥」


「では次は私が」


村雨が深呼吸で呼吸を整え、魔法陣に向かって行く。背中に背負った刀を足元に置き、左手を翳した。


「神具顕現オケアノス」


深い青の光を放ち、また神が武器に宿る。村雨が足元に置いた刀を鞘から抜くと、鏡のような鋼の色をしていた村雨の愛刀は、コバルト色に変わり淡く青い光を放っていた。


「ロビンフッドにメデューサ。それにオケアノスか‥どれもマイナーだけど、それなりに名の知れた神様達見たいだにゃ‥まぁ、どれも俺に相応しい神具では無かったようだけどね」


少々調子に乗った豹助がみんなを小馬鹿にした様に笑った。豹助が自分の剣を魔法陣に突き立てると魔法陣が輝きを放つ。


「神具顕現‥シャルルマーニュ!」


激しく回転する七色の光が魔法陣を包む。

顕現が終わると光は消えて、豹助の姿を顕にする。豹助は笑いながら魔法陣を後にした。


「神具顕現おつかれさん」


神座は椅子から立ち上がると再び神具顕現を終えた豹助たちの元に向かって歩いてきた。


「それで次の用事だが‥そういえばお前ら隊長決めたか?」


「それなら俺が‥」


「はいはーい! 俺がやるにゃ!」


叶夢の言葉を遮るように豹助が神座に向かって元気に手を挙げた。


「まぁこの初対面のメンツなら誰が仕切っても変わんない気がしますし、いいんじゃないですか?」


「まぁ自分で言うのもなんだけど俺が一番経験あるしにゃ」


(まぁこいつがそこまで言うなら…)


千夜が豹助に賛同したのを見ると、叶夢は手を下げようとした。


「強いて言うなら叶夢くんだけには任せたくないかにゃ」


「ほう‥随分とピンポイントで言ってくれるじゃねえか豹助」


豹助の挑発に似た発言を叶夢は聞き逃さなかった。しかし、叶夢が反応をしたのを確認した豹助は笑った表情を崩さず叶夢への侮辱を続けた。


「生い立ちも不明。この間の戦闘で見せた新人とは思えない強さ。どう考えても敵側のスパイかそれの類としか考えられないにゃ。君には怪しい点が多過ぎるんだにゃ」


「あ、確かに」


まともな理由に叶夢自身も納得してしまう。


「まぁ人に言えない経歴なのは否定しない‥だが、かん‥支部長には話を通してるんだからいいだろ?」


「じゃあ何で隠すような経歴をこれから仲間になる僕らに話さないんだにゃ? 仲間にも秘密を作るような腹の内側がわかんない奴に上からってさ、何かイラつくんだにゃ」


豹助の目は嘲笑から怒りに変わった。神座はそんな豹助を見据え、叶夢と豹助の間に割り入る。


「確かに豹助の言ってる事は何一つ間違ってない。不確定要素が多い叶夢に舵を切らせるのは明らかに愚策だ。ましてや新設の小隊であればそのバカを隊長にするのはかなりリスキーだろう」


「確かにそうだな。俺も同じ立場だったら見ず知らずの奴に隊長は任せねえよ‥てか今バカって言った?」


「なら決まりだにゃ」


「かと言ってお前みたいな自尊心がクソ高いナルシストに任せるのは納得できない。いざとなった時に自分可愛さに仲間を捨てかねない危険があるからな。ましてやこの新設小隊‥未練は無いだろ?」


「はぁ?」


豹助が怒りを漏らす。最初は気だるそうだった叶夢の目は豹助を敵として捉え睨み付けていた。


「そう怖い顔すんなよ。煽り耐性があるかどうかのテストのつもりだったが、この程度で感情を動かすようじゃ無理そうだ」


「なんだと!」


「みんなが何も言わないからって調子に乗ってあることないこと。結局お前は自分より弱い人間に従いたくないだけだ」


「誰もそんなこと一言も言ってないにゃ」


「じゃあ何であんな上から目線で言うんだ?お前の言う仲間の単語の意味には上下関係もセットで登録されてんのか?」


「ぐっ‥」


言葉が詰まる豹助に叶夢は言葉を畳み掛ける。


「まぁ俺が言いたいのはただ一つ。

俺がお前より弱いって言うなら、俺を負かせて見ろよ。神座、ここって誰か使う予定あるか?」


「無いぞ。こうなるだろうからお前らの貸切にしておいた。神具の試運転ついでにな」


神座は何処か楽しそうな顔を浮かべた。


「わかったぜ豹助‥バトルロワイヤル形式の模擬戦で勝負しよう。そのニヤケ面、泣きっ面に変えてやるよ」


「‥あぁ!受けて立つにゃ。ただし、バトルロワイヤルじゃないにゃ。君が仮に僕らの敵だったとして内通者が他にもいた時のために、君は一人、そして俺たち四人。1対4で戦ってもらうにゃ」


「「「!?」」」


他の3人が絶句し、同時に察した。豹助は完全に叶夢を潰すつもりだと。


「元から1人みたいなもんだからな。俺は構わないぜ」


「ちょ、叶夢くん!? 君、自分の状況わかってるの!?」


白鳩は焦って叶夢に問いただす。他の二人も焦ってはいたが態度に出すことが出来なかった。


「そっちがそう言うなら了承と受け取っていいのかにゃ? んじゃ時間は20時30分から。せいぜい始まるまでの時間、負けた時の言い訳でも考えておく事だにゃ」


豹助は神具を持ってコロシアムを後にした。他の四人もリードで引きずられた飼い犬のように後を追って行った。

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