表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅い死神の征魔戦争  作者: 雨色 A音
69/83

第69話 抗う術もなく、与えられず

「怠惰?‥何が違うというのですか? 変わらず全て貴方だと言うのに」


司は叶夢に問い詰めると共に、自らの短剣に光魔法を纏わせて投擲した。


「司‥どうして!」


慟哭にも似た叫びを吐いた白鳩は、投擲された短剣をその弓で放った矢で打ち落とす。


「白鳩、貴方には理解できないでしょう。私には大いなる目的があります」


「その目的はこんな方法でしか到達できなかったものなのかよ! 仲間を殺してでも!」


「いえ、本来であれば殺す必要はありませんでした。ですが主は彼らを障害と判断した‥私だって嫌だった‥でも仕方ないでしょう? 主の導きであれば」


「その主っていうのは‥」


「嫌だなぁ‥分かってるはずでしょう白鳩。サクリファイス様に決まってるじゃないですか」


目の中に渦巻く狂気。いや狂信と言うべきか。叶夢たちはそれに恐怖を覚えた。


「彼の力を見て確信した。人と魔族を超越した存在、超魔族デスロードこそ人を導く新たな存在‥すなわち神なんですよ」


「神様信じて救われるつもりが、足元を掬われちまったって訳かにゃ‥」


「豹助、上手いこと言ってくれたな」


「狙った訳じゃねえにゃ」


「ははっ‥ある意味正気に戻されたよ豹助くん」


「ついでだ豹助。今回の指揮はお前に任せる」


「は? 何言ってんだにゃお前‥」


「指揮出せるのがお前だけになるからな。頼みの白鳩を見てみろ」


「あ?‥白鳩?」


豹助は叶夢に言われるままに、白鳩の方を見る。


「‥そんなことの為にあいつらを犠牲にしたって言うのか!!」


白鳩は血走った目で司に向けて怒号を吐き散らす。その見た事もない白鳩の表情に豹助たちは驚きを隠せなかった。


「ええそうですよ! 彼らの犠牲は仕方無かった‥私は彼らの命を摘み取った以上、彼らの意志を次ぎこの道を歩むしかないんです!」


「お前の勝手な都合で殺しておいて意志を次ぐだと?‥‥ふざけるんじゃねえよ!!」


白鳩の叫びと共に、その身体から莫大な量の魔力が溢れ出す。その勢いは近くにいた千夜と紫以奈を身構えさせる程だった。


「白鳩があんなにブチ切れしてるの初めて見たにゃ‥叶夢?」


「あいつが怒るわけも分かるわ‥かく言う俺も今あいつが言い切った言葉で踏ん切りついた。あれは殺していいヒトだ」


「‥今のお前も相当まともじゃないにゃ。いつもだったらあの白鳩みたいにキレててもおかしくないはずだろにゃ」


「頭の中ごちゃごちゃしてるからお前らの事を考えてる余裕が無いだけだ。‥告げる」


「告げる」


叶夢と白鳩は口を開き、自らの英雄への願いをこいねがう。


「我、人なれど牢獄に爪を突き立てし獣。我、人なれど人に反逆を誓いし悪魔」


「深き森の狩人よ。その毒牙を我が身に突き立てろ」


「暗黒となりて虚無を誘え」


「我が身を喰らいて、封印せし力を解放せよ」


「「神具」」


「解放」「暴走」


「モンテ・クリスト」「ロビンフッド!」


神具が解放され、二人の身体から魔力が溢れ出す。それによって叶夢の左目は赤混じりの黄色い虎の目に変わり、また髪の一部に白い髪が混じった姿になる。白鳩は両腕が紫色になりに頬に紫色の血管のような模様が浮き上がった。


「あぁ醜い‥まるで魔族だ。私の光を持って清めてあげましょう。それが私が出来る救済です!」


「ったく狂信者が‥嫌なこと言ってくれるにゃ」


「言わせとけよ‥あと豹助」


叶夢は腰の鞘から紅祟を抜刀して、その刃を司に向ける。


「狂信者の足を掬うのは神様じゃない。悪魔だ」


「ピッタリじゃないか。今の僕らの外見も」


「ったくお前らにゃ‥まぁいいにゃ。目的がはっきりしてんならもう何も言わないにゃ」


溜め息を吐いた豹助が剣の切っ先を司に向けて叫ぶ。


「お前ら! 裏切り者を狩るにゃ!」


その叫びと共に叶夢と白鳩の二人の姿が消える。


「早いですねぇ‥ですが動きが少し単調なのでは?」


目をつぶった司は再び現れた叶夢と白鳩の攻撃をそれぞれ片手で止める。


「ツカサアアアアアアアア!!!!」


「耳障りですよ白鳩! あなたの攻撃では私を殺せない!」


「どうかな!」


止められた白鳩の拳の手首付近。そこに魔力が集まり小さなボウガンが着いた手甲が出現したかと思うと、白鳩はそのまま毒矢を至近距離で放った。


「ぐっ‥治癒の神光シャイニングヒール!」


司が自らに回復魔法をかけると、白鳩から受けた毒が治癒してしまった。


「危ない危ない‥白鳩の毒はある意味一番警戒するべきものですから。何より」


司が右手を差し出した先。その僅か数センチ先に叶夢の顔面があった。


「この距離なら避けれないでしょう?」


「叶夢!」


「あのバカ! 千夜、行くにゃ!」


「わかってますよ!」


叶夢への攻撃が始まる寸前に豹助と千夜が一斉に駆け出す。アイコンタクトすら無いままの咄嗟の判断。各々が既にやるべきことは分かっていた。


時間凍結フリーズ・ワールド!」


時間を停止させながらも豹助の足は加速する。豹助は既に魔力を充填された司の前から叶夢を襟を掴んで上に離脱する。


「残り五回‥くそっ、こんなところで使わせやがってにゃ!」


「助けてくれてどうも。恩は早いうちに返す」


「ったく! 絶対思ってねえだろにゃ!」


時間が動き出すと同時に豹助達のいた足場に氷塊が冷気を纏って出現する。


「氷壁‥竜次に比べれば貴方の氷などただの児戯!」


「叶夢、千夜! 最大火力の魔法準備! 白鳩と俺、紫以奈が隙を作るにゃ!」


「ふっ‥貴方達に出来ますかね!」


「やらなきゃいけねえんだにゃ! 俺は!

時間凍結フリーズ・ワールド!」


「‥! 待て豹助! そいつは」


叶夢の言葉の終わりを待たず再び時間が停止に向かう。叶夢はそれに抗うように持っていた紅祟を司に向けて投擲する。


「告げる‥我が元に集え十二の勇士の魂よ! 神具解放! シャルルマーニュ!」


空かさず豹助が神具の聖剣を司に向けて放つが、目を疑う光景が豹助の視界を支配する。


光牙一閃シャイニング・インパクト!」


「ぐっ‥てめえも使えるのかにゃ!」


「貴方程度の時間停止など足止めにもなりませんよ!」


司の持った短剣が光を纏って豹助の腹部を貫く。豹助は吐血しながらも血走った目で司を睨みつけて、すぐに短剣を司の腕ごと取り除いた。


「げほ‥程度だぁ?‥なめてんじゃ」


聖剣は床に突き刺さる。短剣を抜くことによって腹部からの出血は酷さを増す。度重なる不幸の中に落下している豹助の目にまだ光はあった。


「ねえよ!」


床への落下。豹助の目に入ったのは叶夢が投げた紅祟だった。魔力が切れて時間凍結が維持出来なくなり、世界への干渉が許された一瞬で豹助はそれを手に取り力の限りそれを振りかざした。


「悪足掻きですか? なんと見苦し‥ぐあああ!」


振りかざした刀身からは叶夢の魔力によって作られた黒い斬撃が放たれ、司の身体を抉る。


「豹助、よくやった」


豹助の力が抜けて手を離した紅祟を受け取った叶夢は怯んだ司に向けて再び紅祟を振りかざす。


「おのれ‥よくも! 私に!」


「隊長避けて!」


「まかせた!」


紫以奈の号令に叶夢は後ろに下がって空かさず豹助の元に駆け寄る。


「今更何をしようと‥!?」


地を這う吹雪ブリザガ・グランド‥今です! 紫以奈! 白鳩さん!」


司の足元が凍った瞬間に紫以奈は既に構えていたスナイパーライフルのトリガーを引く。風魔法による加速した弾速は銃声を置き去りにして司の身体を貫いた。


「それじゃ貰ってってよ。僕からの冥土の土産‥‥紫毒の剛槍バイオレット・バリスタ!」


銃弾に怯んだ司に、猛毒を纏った巨大な矢が襲いかかる。もはやそれは矢と言える大きさではなく、槍程の大きさにまで巨大化していた。


「‥‥掴んだ」


「‥!」


司が災害とも言える白鳩の魔法を目にして言い捨てた言葉は、叶夢に嫌な予感を過ぎらせる。


「くたばれ司アアア!!」


「‥白鳩!」


「くたばるのは貴方ですよ。白鳩」


「!?」


瞬間。全てが反転した。形容であればどれだけ良かったことか。叶夢の目に映ったのは、白鳩が司に向けて放った魔法が司の翳した手に直撃した瞬間にその威力を死なすことの無いまま白鳩に向けて放たれていた光景だった。


「え?」


「白鳩さん!」


紫以奈が腰のホルスターからハンドガンを引き抜き、銃口を白鳩の足元に向けて打つ。

その弾丸は着弾と同時に強風を吐き出して、白鳩の身体を矢の軌道から突き放す。


「間に合わない‥」


「さぁ、お逝きなさい‥‥おや?」


「ナイスだ紫以奈!」


引き起こされた反転に、叶夢が立ち塞がる。そのまま叶夢は紅祟を前に突き出し、魔法を半壊させた。勢いを殺された魔法は崩壊とともに霧散する。


「ほう‥貴方も時間凍結を使えるのですね。いえ、貴方は神具でしたか」


「叶夢くん、今何が」


「‥げほっげほ」


「叶夢! 大丈夫ですか!?」


叶夢は魔法を受け止めると、すぐに刀を杖にして膝を床に着く。口元を抑えた手の指の隙間からは血が零れていた。


「おやおや、残念ですね。白鳩の魔法が運悪く当たってしまったようだ」


「何が起こったの‥」


「魔法がそのまま跳ね返ってきたにゃ‥いや跳ね返ってきたっつーよりは‥」


「うわぁ! 豹ちゃんいつの間に」


「あいつが時間凍結を打った時にここに思いっきり蹴飛ばされてきたんだにゃ‥だーいてえ」


「傷の方は大丈夫ですか」


「治せるぐらいには軽傷だったにゃ‥でも今は叶夢の方が重傷だと思うがにゃ」


「問題無えよ」


叶夢は口内に残った血液を飲み干して、口の周りに着いた血を服の袖で拭いながら司を見る。


「おぉ怖い怖い。その毒すら飲み干すとは‥やはり根底から人間では無いのですね」


「安心しろよ。サクリファイスよりかは人らしいぜ俺」


「ではこの光も貴方には通用しないでしょうね!」


「全員‥後方待機。巻き込まれても文句聞くつもり無いからな」


「では祝福を‥聖光一閃ライトレイ・インパクト


司が突き出した掌から凄まじい速度で無数の光線が放たれる。叶夢は理解すら置き去りした反応で即座に避ける。


「やりますね。ではこの軌道ではいかがでしょう?」


叶夢を逃した光線は後方に飛んでいくのでは無く、叶夢を追うように全てが違う軌道で直線に曲がる。


「曲がりやがったにゃ!?」


「なんだよアレ‥」


「なんだよって‥あれも司の能力じゃないのかにゃ?」


「いや‥あれは」


(厄介だな‥)


叶夢は怪訝そうな顔を浮かべながらも光線を当たる間際で避けて再び走り出す。しかしそれを追うように光線は有り得ぬ軌道を描き続けながら叶夢を逃がさんと追い続ける。


「いつまで逃げられますかね?」


「‥執拗うざいな」


「ほらほらもっと早く動かないと、死んじゃいますよ」


「‥‥」


叶夢は光魔法を避けながらも静かに呼吸を整える。時間凍結を打った直後のため、魔法を打てない。しかし流暢にクールダウンするのを待つ暇もない。その中で叶夢が取る行動はある程度絞られる。


(そろそろ避ける範囲にも限界が来ている‥となれば、来るのは‥)


司も魔法を発動したまま思考を巡らせる。既に司の放った聖光一閃はほぼ自らの周りに魔法をを残していたが唯一通ってない箇所が存在した。その中で司と叶夢の意識はただそこの一点で重なった。


「待っていましたよ。私の背後を取ったその瞬間を!」


叶夢は魔法の隙間を走り抜ける。既に叶夢の後ろには聖光一閃が退路を塞ぐように真っ直ぐに叶夢の命を狙っていた。


「‥‥」


「さよなら。叶夢」


「叶夢!」


叶夢と司の身体が千夜の叫びと共に閃光の中に消える。その中で最後に四人の目に映ったのは、誰かの左手が飛ばされる影絵だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ