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紅い死神の征魔戦争  作者: 雨色 A音
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第68話 告げられし罪の名は

深夜0時。日本支部の地下コロシアム。本来は時間外の為使用許可は降りる筈は無い場所に叶夢たち第31小隊の姿があった。


「午前0時‥全然来ねえにゃ」


「焦んなよ。時期に来るさ‥‥zz」


「いや寝ないでよ」


「いでっ」


コロシアムの中心で四人が緊張に身体を固められている中、叶夢はただ一人刀を肩に立て掛けあぐらをかき、顎を左手の上に置いて空いた右手で携帯をいじって欠伸をしながら待っていた。


「お、キタキタ。待ってましたよ、櫂先輩に司先輩」


「全く、こんな夜遅くに何の用ですか? 出来れば手短にお願いしたいのですが」


「‥‥」


司と櫂が不服そうな顔でコロシアムに足を踏み入れる。叶夢は体勢を変えずに続けて口を開いた。


「大丈夫っすよ。すぐに済むことなんで‥‥豹助。例のものを」


「はぁ、はいはいにゃ」


豹助は服のポケットから透明な袋に入れた注射器を二人に見せる。


「それは?」


「そこの櫂先輩の机から出てきた注射器っすよ。こいつは拡張魔力施術っていう施術に使用する特注の注射器です」


「ほう‥その使える魔法を増やす程度の注射器がどう言った意味を持っているというのですか?」


「この施術を知っているのはとあるマフィアの関係者のみ‥それとそこから発生した魔族だけがそれを知っています。司先輩はその魔族の名前を知ってるんじゃないですか?」


「‥‥サクリファイス。では櫂が内通者だと」


「話早くて助かりますよ。それを伝えるのもあって今夜は呼ばせてもらいました。突然ですいませんね」


「今の話は全て事実ですか? 櫂」


櫂は司から目を離して、怪訝そうな顔で口を開く。


「‥‥まぁ証拠が出ちまったんなら隠す必要もねェ。あぁ、そうだよ俺が内通者だ」


「そんな‥‥」


「‥嘘だろ」


「どうしたんですか白鳩さん? 分かりきってた事じゃないですか」


「あぁいや‥なんかあっさりしすぎてるなって」


櫂の予想外の反応に白鳩は驚きを隠せずにいた。


「まぁあの人も馬鹿じゃないにゃ。それに、ここじゃ味方はいないから下手なことする方が悪手だにゃ」


豹助はそう言いながら叶夢の方を見る。叶夢は前髪の陰から光の無い紅い目で二人の姿を見ていた。


「櫂‥信じていたのに‥一体どうして‥」


「悪いな司‥どうしても断ることが出来なかったんだ‥」


「くっ‥‥刀堂 叶夢。内通者を暴いてくれたことを感謝します。彼の身柄は私が責任をもって支部長に元に」


「あれー? もう終わったのかい?」


「!?」


突如として入り口から聞こえた声に誰もが声を詰まらせる。ただ一人叶夢を除いて。


「遅かったじゃないですか、翔真先輩」


「おいおい‥これでも急いで来たんだよ。バレないようにね」


「何故、貴方がここに‥」


その場所に立っていたのは、呑気に鍵束を指で回す金丸 翔真。そしてその後ろには朔夜とアレックスの姿があった。


「みんな思ってるだろう言葉の代弁ありがとさん。通りすがりのアレックス君から出してもらったんだー。それじゃ続きやっていいよー」


「続きって‥‥もう内通者は判明しましたよ」


「へぇ、誰だったの千夜ちゃん?」


「櫂先輩です。彼の机の中から動かぬ証拠が出て‥」


「まだだ」


「え?」


千夜の言葉を感情の抑圧すら感じさせない叶夢の言葉が遮る。


「内通者の集めた情報を見て思ったことがあった。これが全てなのかって‥」


「全てって‥」


「まぁだろうね。あんな遠距離からこの量の情報‥‥明らかにおかしかった。いるんだろ? 協力したやつが」


翔真の言葉に櫂は俯く。それに構わず叶夢は続けて喋り出した。


「この量で全て‥考えたらわかる事だ。一人で出来る訳が無い」


「協力者‥ということは小隊絡みでってことですか?」


「もしかして遠征組の中にまだ内通者が」


「だとしたらまた探さないといけないんじゃないかにゃ! 叶夢、なんでそれ早く俺らに言わなかったんだにゃ!?」


「言う必要が無いからだ」


「‥どういう事ですか。隊長」


叶夢はずっと手に持っていた携帯を紫以奈に渡した。


「‥ひっ!」


紫以奈はそれを受け取り画面を確認するや否や、顔を青ざめて持っていた携帯を落としてしまった。


「どうしたんだにゃ‥‥なんだよこれ」


落ちた携帯に三人の視点が向き、表示されたメッセージ画面が目に入る。そこに書かれていた内容に豹助が絶句した。


『拝啓 叶夢隊長へ。

第22小隊総出での捜査の結果。

第4小隊 第6小隊 第7小隊

及び 神宮寺 司 阿原 櫂を除く

第2小隊 第3小隊の全員の死亡を確認。死体はそれぞれの待機所で発見。

死因は光魔法によって首を刎ねられたことによる失血死。

見た感じ一ヶ月は経ってました。

報告をしたので小生は戻ります。

無事を祈っていてください。主に小生の』


「‥‥嘘‥だろ」


「司先輩‥いや司、俺は拡張魔力施術の名前を出しても内容までは話してない。何でとあるマフィア‥いやゼルリッチやサクリファイスにしか知りえない情報をノーヒントでお前が当てることが出来たんだ?」


普段の叶夢であれば嘲笑いながら詰めているはずの発言を、今の叶夢は淡々と告げる。


「なぁ内通者共、答えろよ。あの時どんな気持ちだったんだ? 仲間を殺したときも、情報屋殺したときも、仲間に罪着せたときも」


叶夢の言葉に櫂と司は沈黙を貫いていた。


「どんな顔して俺らに向けて口開いてたんだよ。櫂、司」


「‥叶夢くん!」


「ッ!」


「どわっ!」


翔真の叫びと同時に司の手から眩い光が放たれる。それによって全員の目が潰れてしまった。


「全員固まってろ!」


「違う叶夢くん! 狙いはそこじゃない!」


「違うって‥‥そういうことか。豹助、注射器を守れ!」


「あぁ!?‥‥しまった!」


豹助の言葉と共に光が収まり、ようやく視界が取り戻された。しかし、叶夢の目に最初に映ったのは豹助から奪った注射器をその手に収めた司と櫂の姿だった。


「櫂、先に行きなさい。コイツらは私が食い止めます」


「あぁ、恩に着るぜ相棒!」


二人は注射器を腕に打つ。その寸前に翔真がナイフを取り出し二人に向かって走り出していたがその中身は既に体内に注入されていた。


「どけよ‥」


「‥‥!? 何で」


「オラァ!」


櫂が翔真に向けて手を翳すと、急に翔真の身体が引き寄せられた。その理解すらも出来ないまま引き寄せられた翔真の身体は櫂の一蹴りによって朔夜達の元に送り返された。


「まずい、逃げられます!」


「ここは私が!」


紫以奈がホルスターからハンドガンを取り出して、二発の銃弾を二人に向けて放つ。


「この程度で止められるとでも?」


司はその銃弾を、羽虫でも払うかのように素手で弾き返す。


「嘘だろにゃ!」


勢いを保ったまま紫以奈に向けて戻ってきた弾丸を、叶夢が前に立ち構えていた紅祟で撃ち落とす。


「助かりました‥」


「気にするな。それよりも‥」


叶夢の目に映ったのは、翔真や朔夜を踏みつけてコロシアムの外に出ていった櫂の姿だった。


「逃げられるにゃ!」


「朔夜! そっち任せたぞ!」


「わかってんだよ!」


朔夜たちの姿は突如出現した霧に飲み込まれて消える。


「やれやれ‥‥あとは櫂に任せますか」


「司‥どうして‥」


「白鳩、話は後だ」


叶夢が司に対して刀を向けると、豹助達も武器を構える。白鳩も躊躇いながらも弓を司に向けた。


「楽しみですね‥紅い死神。主の名のもとに貴方をここで断罪する!」


「‥だってよ。いつもみたいに名乗ったらどうだにゃ叶夢」


「あぁ、そうだな。ただ今回は少し違うが‥」


司という光を目にしてもその眼は輝くことは無く、死神は自分の過去に告げられたもう一つの名を呟いた。


「今日の俺は紅い死神としてお前の前に立ってるんじゃない。

元ゼルリッチの魔子が一人。『怠惰』刀堂 叶夢。その罪に殉じてお前を絶望の淵に叩き落としてやる」

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