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紅い死神の征魔戦争  作者: 雨色 A音
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第67話 墓荒らしにて語る者

「やぁやぁ待ってたよ、叶夢くん!」


「久しぶりっすね翔真先輩。というかそれ独房にいるテンションじゃないと思うんすけど」


「いやいや。何時いかなる時も笑顔で後輩を迎えるのが先輩の役目だからさ」


地下にある薄暗い独房。そこは日本支部で一時的に身柄を預かることになった者達を拘束する場所であり、内通者として摘発された金丸 翔真はそこでいつもと変わらぬ姿を叶夢の前に見せていた。


「それで内通者は分かったの?」


「ええ。じゃなきゃこっちに来ませんよ」


叶夢は今日さっきまでの出来事を全て翔真に話す。それらを全部聞き終え翔真は再び口を開いた。


「なるほどなるほど‥‥やっぱ櫂が動いてたんだ。全く、司の陰に隠れて何やってんだか」


「先輩は知ってたんですか? 内通者の正体」


「もちろん。まぁ君たちがこんなに早く突き止めるのは予想外だったけどね」


翔真は笑いながら、手のひらを見せて首を横に振る。


「それで、僕に聞きたいことって?」


「いやー、それなんですけどね。実際はもう無いっす」


「ずこっ‥じゃあなんの為に来たのさ」


「いやー。色々あるんですけどね‥まぁ暇潰しに」


「暇潰しって‥随分と呑気だね。もしかしたら今死ぬかもしれないのに」


「まさか。仮にも内通者やってるようなやつがこんなタイミングで殺すとでも? 第一、コンタクトした場所が極端な場合で、人知れずの場所で死んでいた場合なんざ疑われるリスクの方がデカいのに。‥それに」


叶夢は静かに自らの服の襟に手を伸ばして、その裏を翔真に見せる。


「‥あ、なるほど」


翔真が目にしたのは襟の裏に張り付いた赤く光る小型の機械だった。叶夢はそれに気付かせると紙とペンを取り出して翔真の前に差し出す。翔真はそれに反応を書いて返した。


『大丈夫?というかそれ録音されてない?』


『可能性はあるので、重要なことだけ筆談にしますよ』


「それで、これからどうするの?」


「まぁ最後の時間は尊敬できる先輩と過ごそうかなと‥ね」


「まぁどうせ僕も同じようなものだから、付き合うけどね。あ、どうせなら朔夜も混ざるー?」


翔真は壁の向こうにいる人物に向けて大声で呼びかける。その部屋の隣にはいつものように帽子を顔に被せて壁を背に座って堕落を貪る出雲 朔夜の姿があった。


「叶夢がしくじったっていう笑い話ならさっき聞いたんで結構です」


「まぁまぁそう言わずに」


叶夢はそう言うと朔夜の部屋にもう一つのメモとペンを床に滑らせる。朔夜はそれを受け取ると、すぐさま筆を走らせ書いた文字を叶夢に見せた。


『順調か?』


『俺がここに居るのがそれの証明だろ?』


数十分の間、叶夢たち三人は口を動かしつつも、そのメモで意思疎通をし続けた。


「あ、そういや気になることがあったんだけど」


翔真は朔夜に最初に見せた叶夢のメモを手に取り、叶夢にヒラヒラと見せる。


「これってどういう意味?」


「これですか? あぁそれなら‥お」


静かな独房の中に明るい電子音が流れる。その音は叶夢の携帯からだった。叶夢はそれを確認して、ふとほくそ笑んだ。


「これの事ですよ。さっきとれたんです」


叶夢は自らの画面を翔真と朔夜に見せる。


「‥あはは! やるじゃん!」


翔真はその画面を見ると、手を叩いてそれを賞賛した。その画面はとある人間からのメッセージを移しており、そこには一枚の写真と共にこう書かれていた。


『作戦成功』


ーーーーー


「あ、来ました!」


叶夢がメッセージを受け取る数十分前。叶夢に言われるまま部屋に戻り、叶夢の身にあった出来事を全て話した千夜は三人と共に部屋で待機していた。そして時期にして叶夢が独房に向かっているであろう途中に千夜の携帯にメッセージが届いていた。


「叶夢くんからか‥それで内容は」


「はい、これです!」


千夜はその画面を三人に見せる。


『お疲れ様 31小隊の諸君。

早速で悪いが君達‥正確には白鳩と豹助に頼み事が出来た。第三小隊の部屋に潜り込んで、注射器を探して欲しい。それで全て終わりだ』


「注射器‥かにゃ?」


「何でそんなもの‥‥でも叶夢くんが言うことなんだから結構重要なものなのかもね」


「けど潜入だなんて、俺だけにゃらまだしも白鳩が見つかったら終わりじゃないかにゃ?」


「ちょっと待って‥あ、隊長からまたメッセージが届いた!」


しばらくして紫以奈の携帯に叶夢からメッセージが届いた。


「なんでわざわざ紫以奈の携帯に送ってきてんだにゃあのバカ」


「対策だろうけど‥」


白鳩と豹助はその作戦に目を通した。


『作戦内容

第三小隊にて白鳩が櫂と接触。その隙に豹助は時間停止を使って部屋に侵入して注射器を探す。作戦時間は10分以内で』


「‥確かにこれは僕必要だね。頼んだよ豹助くん!」


「何だにゃこの力技の作戦!? というかこれ今から実行だよにゃ?」


「まぁ叶夢隊長が時間稼いでる今しか無いですよね‥二人とも急いでください」


「失敗は許されないのでそこの所よろしく‥と叶夢なら言うと思うので頑張ってきてくださいね」


「嫌なところがどんどん似てきてるよ村雨ちゃん!?」


白鳩と豹助は静かに部屋を出る。


「いいかい豹助くん。失敗は許されないからね」


「誰に向かって言ってんだにゃ‥お前こそしくじんなよ」


「その憎まれ口叩けるならOKか‥‥そろそろだよ」


「あぁ」


白鳩がそう言うと、豹助はすぐ近くにある階段を降りて姿を消した。豹助の姿が見えなくなると白鳩は深く息を吸って目線を上に向ける。


(これで最後か‥あぁ、くそ。僕ってばまだ決心が着いて無いんだな)


白鳩の心の中は叶夢からの伝えられた真実を受け入れられずにいた。信じていた同期が自分たちの敵であったこと。そして今、自分はその同期を自分の手で追い詰めることに。


(そりゃ無理か、誰だってこうなる。これは仕方ないことなんだ。誰かがやんなきゃ行けない事なんだ。そして)


白鳩はエレベーターに乗り、ボタンを押す。それが目的の元に下っている間、白鳩は深く深呼吸をした。


(かつて第1小隊‥みんなのリーダーとして道を間違えた部下を、友達を、この手で引き戻すのは、僕にしか出来ない事なんだ)


白鳩が決心を済ませるのを待ったかのように、エレベーターの扉が開かれた。エレベーターを出た白鳩はその足を目的の場所に進める。


「さーて、やりますか」


白鳩は第三小隊の部屋の前に立ち尽くすと、自分が来た道を見返す。そこには少し遅れて来た豹助の姿があり、白鳩と目を合わせると同時に近くにあった自販機の裏に隠れた。それを見た白鳩は前に目を戻して、目の前のドアをノックした。


「櫂ー? いるー?」


白鳩の声から数秒経ってからドアノブが下に傾く。豹助はその音を聞いて魔力回路に魔力を流す。


「なんだよ‥白鳩か」


「なんだよってなんだよ。久しぶりに会ってその顔はないんじゃないの?」


僅かにドアが空いた瞬間。豹助の口が静かに開いた。


時空凍結フリーズ・ワールド


豹助が放った魔法は周りの時の流れを強引に止める。そのまま豹助自身が自販機の裏から飛び出した。


(目撃されるリスクを消すために魔法発動してから自販機を飛び出す。それでドアの隙間は‥)


走りながらも豹助の思考は最高速で動き続ける。入口の前には二人の姿があり、白鳩が完全に開けさせたとはいえそこは櫂に完全に塞がれていた。


「見つけたにゃ‥‥さぁ頼んだにゃ。白鳩」


豹助は反応の無い白鳩の目に全てを任せ、助走をつけた足で地面を蹴飛ばし二人の頭上に跳躍する。足一欠片、ぶつかることは許されない中で豹助は背面を下に向けて飛ぶ。


「よっと‥」


目掛けた先は櫂の頭のてっぺんとドア枠の間。自分の身長よりも高い場所、自分の体の幅ギリギリの隙間。豹助は二人に触れる事無く部屋に滑り込んだ。


「残り五秒‥あったにゃ!」


豹助が扉が開きっぱなしになった櫂の部屋に侵入して、玄関から資格になる場所に身を寄せた。


「侵入成功‥これで一回目」


豹助は口に手を当てて上がった息をすぐに隠す。呼吸を整えている間に止まっていた時間が再び動きだした。


「‥久しぶりに会ってみて随分と元気そうじゃねえか。あれからもう立ち直ったのか?」


「まぁね。お陰様で」


「かっはははは! 確かに前の面に比べたら幾分かマシだな! どうだ? 積もる話もあるし上がってくか?」


「いやいいよ。こっちも顔が見たくて来ただけだから」


白鳩は豹助が入った事を確信すると、次に行動を進めた。


「まぁ、とは言え立ち話もなんだし外のソファにでも座って話そうか」


「断わっといてそれかよ」


「だって半年もいなかったんだろ? ホコリだらけの部屋なんて僕はごめんだね」


「少しは片付けたつもりだったんだが‥まぁお前が言うならそっちにするか」


白鳩はドアを抑えていた櫂を無理やり連れ出して、目の前にあるベンチに座らせると、一人自販機に飲み物を買いに行った。


「何がいい?」


「なんでも」


「一番困る回答どうも‥ほい」


白鳩は買った二つの缶コーヒーを両手で取り出すと、左手に持った方の缶を櫂に向けて投げる。綺麗な放物線を描いた缶は櫂が差し出した右手に収まった。


「ありがとよ」


「はいはい」


白鳩がベンチに座ると、櫂は缶を片手で開けて中のコーヒーを喉に流し込む。白鳩もコーヒーを飲んで一息ついて口を開き始めた。


「ほんと半年ぶりだね」


「半年か‥お前が第1小隊の座を降りて」


「立ち直った‥って言うと嘘になるかな。まだ引きずってる」


「だろうな、お前はそう言う奴だ。優し過ぎんだよ」


「そこが僕の長所だからね」


「相変わらずだな‥‥お前も桐原も」


「あいつは優しいというか‥マイペース過ぎると言うか‥」


「まぁそこがあいつの強さみてェな部分もあるからな」


櫂は少し笑いながら言い放つ。それに対して白鳩は苦笑いをして返した。


「はは‥それがあるから多分あいつは残れたんだと思うよ。僕と違って」


「‥こんなこと言いたかないが、お前自分が惨めになってこねェのか?」


「‥」


「ったく、お前がそのザマじゃアイツらが報われねェな。こんな弱虫の為に死んじまったって考えたら」


櫂が無慈悲にも放ったその言葉は、白鳩の口を固く閉ざさせるのに十分だった。


ーーーーー


「うーん。見つからないにゃ」


白鳩が外で話をしている間、豹助は櫂の部屋で注射器を探していた。本棚からテーブルの下。カーペットの下などを捲っても影も形も現れることはなかった。


「となるとやっぱ机の引き出しかにゃ」


豹助は窓際にある机の引き出しを覗き見て、そこに手を伸ばす。持ち手を持って開けようとするも、何かが引っかかる感覚があり中身が確認出来なかった。


「鍵掛けてやがるにゃ‥どうやって開けようかにゃ」


この時点で既に時間は四分近く経っており、豹助の中にも焦りが出ていた。


「ゲームだとピッキングとかして開けてたよにゃ。まぁ俺出来ねぇから関係ねえけど。にしてもマジでどうやって開けようかにゃ‥大きな音立てる訳にも行かねえしにゃ」


豹助が周りを見渡しても鍵らしきものは見当たらず、あるの自らが呆れで吐いた溜め息だけだった。


「はぁ‥‥年代物とかでもないし、力技でぶち破るのも無理そうだにゃ。経年劣化でもしてれば話は変わっ‥‥‥経年劣化?」


豹助は鍵穴を見つめたまま、唾を飲み込む。


「‥時間的には残り六分。フルでやったら俺の逃走用の停止時間は確実に無くなるにゃ‥けどまぁアイツならやるだろうにゃ」


豹助の手が鍵穴に付く。その掌には多量の魔力が流れていた。


「こいつの時間を加速させて、文字通り経年劣化させてぶっ壊してやるにゃ‥持ってくれよ俺の魔力回路」


賭けとも言える愚行。確証の無い道に豹助はその足を進めた。


ーーーーー


場面は戻り、櫂が言い放った言葉に白鳩は口を閉じていた。


「ほんと残念だよな。お前のミスで、全員‥‥いや正確的には桐原と白鳩が生き残ってそれ以外が死んじまってよ。普通、逆だろうが」


「あはは‥櫂はズバズバ言ってくれるね。僕としてもそうなるのが正しかったって思うときはあるよ」


「ほんとにそれだけか? お前が考えてる事は」


「あぁ、それだけさ」


「だとしたら尚更だ‥‥なんでお前は今ここにいる。なんの為に生きてんだよ」


「なんの為‥だろうね」


(あぁ、そう来るよね。元からそんなに仲良く無くて何なら仲悪いの部類に入る彼にこれ言われるのは当たり前のことだ)


白鳩の頭に思い出されるのは、かつて自分が犯した失敗。

半年前、白鳩は命からがら桐原に引き摺られる形で日本支部に帰ってきた日を。


「白鳩! ‥‥かった‥早‥手当‥を!」


「‥っかり‥」


あの日の記憶は殆ど、白鳩の中に残っていなかった。覚えていたのは誰かが自分にかけていた言葉の破片と、どうしようも無い後悔だけだった。


「 」


白鳩の口は動いていても、自分でも何を言っていたのか分からなかった。ただ光の無い目で生きていても死んでも無いヒトがいるだけだった。


「あの時の僕は酷かったね。我に返って気が付いたら数ヶ月経ってたし、何なら今も僕はあの日から止まったままかもしれない」


「‥悪いな、何か変な雰囲気にしちまって」


「何言ってんのさ。僕はこれは話のネタにされる覚悟で君の前に現れてやったんだよ?」


「ったく、相変わらずよく分かんねェな」


「じゃなきゃ今でも征魔士なんてやってないよ。それで僕なりの答えなんだけどさ」


白鳩はコーヒーを飲み切って一息つくと、その口を開き始めた。


「今の僕ができることって何だろうって考えた時に、ただ生きることなんじゃないかって思ったんだ。犠牲になった仲間の分まで幸せも苦しみも全て飲み込んで、その中でも新しい仲間を守っていく。そうすることが僕が生き残った意味なんだってね」


「はァ馬鹿らしい‥そんなのてめェの独りよがりじゃねェのか?」


「馬鹿らしいし独りよがりだよ。それは自分が一番よく分かってる。だけど失敗に囚われた人生送って、死んで汚い面であの世の彼らに会うのはもっと酷いことだと僕は思うんだ」


「‥‥」


黙った櫂を横目に、白鳩は話を続ける。


「だったら人生やり切ってみんなの分まで生きてやったぜ!‥‥って言う方が彼らも託せて良かったって思えるんじゃないの?」


「‥お前らしい平和ボケした理想論だな」


「そうだね。今のところはそんな答えで落ち着いた‥‥おっと」


白鳩はスボンのポケットにきたバイブ音に反応し、自らの携帯の画面を開く。それ見た白鳩はふと静かに笑った。


「うわもうこんな時間だ‥僕も行かないと」


「だいぶ経ってたな‥どっかの誰かさんの長話のせいで」


「はいはい‥」


白鳩と櫂の二人は缶をゴミ箱に投げ入れて再び部屋のドアの前に戻る。


「久しぶりにお前と話せて良かったぜ」


「僕も君が変わって無くて安心したよ‥‥あ、そうだ」


櫂が部屋の中に戻ろうとドアを開けた瞬間、白鳩は櫂の事を呼び止めた。


「何だよ‥まだあんのか」


櫂はドアを開けたまま白鳩の方に振り返る。白鳩はポケットの中の携帯に手をかけたまま、どこか寂しげに別れの言葉を告げた。


「じゃあね。櫂」


『ドア開いたよ』


その言葉と共に予め打たれたメッセージが送信された。


ーーーーー


「お、来たにゃ‥ったくめんどくさいことしやがって‥」


豹助は強制的に経年劣化させた鍵を壊し、机の引き出しの中身を確認した。


「あれ‥何も入ってねえにゃ。なんだよハズレかにゃ‥」


その中には何も入っておらず、注射器はおろかほこり一つも見当たらなかった。


「くそ、時間潰しただけだったにゃ‥‥待てよ。もしかしてこれ」


豹助が何かを察して、引き出しの底に手をつけて前側にスライドをさせる。すると引き出しの前面と共にその底面が引き抜かれた。


「二重底だよにゃ‥ふぅ、叶夢とゲームしててよかったー。さて中身は‥」


豹助が改めて引き出しの中身を確認するとそこには五本の注射器があった。


「よし見っけ!」


豹助がそれらを手に取ってポケットの中に突っ込むと、豹助の携帯に連絡が入る。豹助はそれが確認せずとも何の連絡かを知っていた。


「‥そんじゃじゃあにゃ! 時空凍結フリーズワールド!」


豹助は自らの魔法で時間を停止させ、全てが静止した世界を走り抜ける。廊下に出て部屋のドアが開いているのを確認すると、その場所から部屋の外に駆け出す。


「タイムアップ。俺らの勝ちだにゃ」


豹助が自販機の後ろに寄りかかって腰を下ろす。それと同時に停止していた時間も再び動き始めた。


「はぁはぁ‥にしてもギリギリだったにゃ。叶夢の野郎、これで失敗だったらマジでぶん殴ってやるにゃ‥」


「お疲れ様。豹助くん」


豹助が息を整えていると、後ろから白鳩の声が聞こえきた。白鳩は豹助の手を引き立ち上がらせ、帰路につく。


「例のものは?」


「ぶんどったにゃ。無事成功だにゃ」


「なら良かった‥こっちも色々話して、踏ん切り付いたよ」


「あっそ‥どうでもいいにゃ」


「どうでもいいって‥叶夢くんみたいなこと言うね」


「最悪の褒め言葉だにゃ‥」


「はは‥冗談だよ。何はともあれ作戦が成功したなら伝えておかないとね」


「そうだにゃ」


豹助は疲れながらも笑みを浮かべ、叶夢にメッセージを送信した。


『作戦成功』


ーーーーー


「なるほど。もうピースは揃ったわけだね」


「ええ。てなわけで今夜蹴りをつけます」


「えぇ! 今夜って随分と気が早いね!?」


「長続きさせる必要も無いですから‥‥てな訳だ。聞いてんだろ内通者」


叶夢は襟の裏に着いていた発信機を取ると、自らの口に近づける。


「今夜0時にて地下コロシアムにて内通者を吊る。決着つけてやるよこの人狼遊戯ゲームにな」


様々な人の思惑を漂わせ、懐疑をもたらし続けた姿なき内通者への最期のメッセージを告げるべく、罪を宿した少年は高らかに宣言する。


永劫なる怠惰を与える為に。

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