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紅い死神の征魔戦争  作者: 雨色 A音
62/83

第62話 前門の悪 後門の魔

「来るぞ」


氷の槍(アイスランス)!!!」


千夜が魔族の発射を待たず氷塊を巣に向けて打ち出す。しかしそれよりも早く小型の槍の先端のような形をした魔族が巣より打ち出され、その氷塊を砕かれる。


(早い!)


「もう少し早けりゃな!」


叶夢が自らの刀を振り、発射された魔族を真っ二つにする。


「あれよりも早く氷を打ち出せっていくらなんでも無理がありますよ!?」


「かと言って吹雪打ったら殺すからな。俺らごと氷像にするとか正気の沙汰とは思えねからな」


「今サラッと殺すって‥」


「言ったよ。そんなことよりお前もあれに相殺されないレベルの威力の魔法を打ち出せよ」


「無理があるんですけどそれ。けどまぁ、やってみるだけやりますけど!」


千夜の頬が緩み、太刀を握る両手の力が強まる。叶夢は刀を振りながら会話を続ける。


「まぁお手本見せてやるから、ちょっと真似してしみろって」


「そんな気軽にできるものなんですか?」


「魔力込めて刀で打ち出すだけだからな‥こんな風に」


叶夢は自分の刀である紅祟に、闇魔法を流し込む。魔力を流し込まれた紅祟は、その魔力を刀身内で増幅させ外に黒い電流を走らせる。


「叶夢! のんびりチャージしてる時間ないですよ!?」


「分かってるよ‥少し静かにしてろ」


叶夢は破裂寸前の刀身を鞘に収め、抜刀の構えに入る。見据えるのは巣から顔を出す頭部が鋭くなった虫の魔族。


(第三位魔族、ソードヘッドビートル。せいぜい文字通り頭の剣みたいな角で攻撃するしか能のない小バエみたいな魔族だが‥)


「なるほど、ミサイルにはうってつけだな」


「何1人で変な事ブツブツ呟いてるんですか?」


「千夜、タイミング合わせろ。お前の最速最大火力で多分あっちは潰れる」


「最大はまだ理解つきますけど、最速もいりますかね?」


「念の為、な」


千夜は渋々太刀を構え直す。


(確か叶夢くんは‥刀身に魔力を流して‥あ、あれでも確か魔力を刀の中で増幅させてるんですっけ‥ならこうかな)


千夜の意識はイメージの海の中に落ちる。その思考は叶夢が魔力を込めたシーンを無限回再生し続ける。


(氷の槍は速度はあるけど、威力は無い‥かといって粉砕する氷斧アイスエイジ・アックスはフリが大きい‥なら)


「‥こうかな」


千夜の蒼い刀身に氷の結晶が火花のように迸り始める。叶夢はその光景を見て、少し驚いた様子を見せ、笑みを浮かべながら前の巣に視点を戻した。


「合わせろ!」


「了解!」


魔族の巣からソードヘッドビートルが放たれる。目にも追えぬ初速から、二人の首を狙う。しかしそれよりも早く、叶夢の直感がその瞬間を捉える。


黒い閃光の剣(ブラック・レイヴン・ブレイド)!!」


叶夢が大きく刀を降ると、中に貯めていた魔力を黒い斬撃となって巣に向かって放たれる。発射されたソードヘッドビートルはそれに触れると一瞬で霧散し、巣へと押し返す。


(浅い‥これじゃ)


叶夢の思考の束の間、千夜はその太刀を大きく横に振った。


氷月斬(アイシクルスラッシュ)!」


叶夢の黒い斬撃に続き、千夜の氷の三日月状の斬撃が放たれる。その質量となった斬撃は叶夢の魔法を巣へと押し込むだけでは物足らず巣を外壁ごと破壊した。


「‥うそーん」


「‥あれ、やりすぎちゃいました?」


「豹助の陰に隠れがちだが、お前もお前で大概だよ」


巣は叶夢と千夜の魔法によって跡形もなく消え去った。


「そっち終わったかー?」


「今やってる真っ最中! せめて手伝ってくれると助かるんだけど!? 」


白鳩が矢を番えながら、怒り気味に応える。

向こう側の巣は叶夢のところよりも勢いが強く、豹助が前線に出てひたすらにソードヘッドビートルを剣で撃ち落としていた。


「ありゃー遠距離持ちは辛いねえ」


「そうですねぇ」


「老夫婦漫才やってないで手伝って貰えますか隊長!?」


「そうは言っても俺ら今ヒートアウト中だしなぁ‥」


「そうですねぇ」


「お前ら後でぶん殴ってやるにゃ!!」


豹助が叫びながらひたすらに魔族を打ち落とす。神具で剣を展開し本数を増やしていても、豹助の反応速度が先に限界を迎えていた。


「二人とも! チャージ済んだかにゃ!?」


「終わったよ!」


「こっちも完了!」


「そんじゃ頼んだ‥にゃ!」


豹助が魔族を狩り終えると、魔族を見据えたまま後ろに大きく跳躍する。豹助が範囲から外れると白鳩と紫以奈はそれぞれの魔法を巣に向かって撃ち込んだ。


毒蛇の矢サーペントドライブ


吹き荒ぶ風の弾丸(オーバーウィンド・バレット)!」


二つの魔法が豹助の脇の近くを通り過ぎ、巣目掛けて飛んでいく。先に着弾したのは白鳩の魔法だった。


「威力、足りてねえんじゃないかにゃ?」


「その為の私だよ」


矢によって毒が溢れ出した巣に、紫以奈の暴風を纏った弾丸が着弾する。それによって弾丸の中にあった嵐が解き放たれた。

猛毒をまとった暴風は巣を腐食しながら、ものの数秒で霧散させた。


「よーし消滅‥お疲れさんお前ら」


「本当、一時はどうなる事かと思ったよ‥」


「でも何で急に魔族の巣が‥まるで罠みたいに現れて‥」


「ですよね。叶夢が血痕を調べたと同時に現れたことを考えると‥」


「十中八九、紫以奈の言う通り罠だにゃ‥‥」


豹助が神具解放を解除し、地面に刺さった聖剣が消える。それを見た四人も武器をしまい、巣が存在した壁に足を進めた。


「‥ひっ!」


千夜は氷漬けにされた壁の中で何かを見つけた。


「‥人の目玉だな。これ」


「こっちには腕があったよー」


「何で叶夢と白鳩さんはそんなに落ち着いてるんですか‥」


「臭いであるって分かってるなら驚く理由も無いだろ」


「見慣れてるのよ、僕も叶夢もね」


叶夢は氷を蹴破り、手足がもがれて達磨のような状態になった遺体を引きずり出す。見るに堪えない程無惨な姿をした遺体に千夜は目を逸らした。


「ひとまず報告ですか‥」


「あぁ、頼ん‥」


叶夢が千夜の方に目を戻した時、すぐ上にもう一つの巣が発生しているのが見えた。


(冗談だろ!? 誰も気付いてない‥いや気付いてても全員ヒートアウトしてる魔力回路で巣の封印なんざ出来たもんじゃない!)


「全員!上に巣が発生した!直ちに臨戦体勢!」


叶夢の号令に四人が直ぐに上を向き、仕舞った武器を直ぐに持ち直した。


(間に合うか‥魔力‥)


叶夢は自らの手に魔力を貯めている間、視点は一切動かさなかった。そしてその目は同時に巣の上空、囲むビルの屋上からから落下して始めたあるものを捉えていた。


(なんだあれ‥人影?)


その人影が落ちていくにつれて、姿があらわになる。腰には数本のナイフ、右手には日本刀を持ち、首からぶら下げた十字架のネックレスが重力に逆らい顔の隣を漂っていた。


「あれって‥まさか」


聖別光波ライトレイ・サンクチュアリ


空から落ちてきた人影はそう呟き、腰の短剣を巣に向けて投擲する。巣に刺さった短剣は眩い光を放ち巣を一瞬で塵にした。


「マジかにゃ‥」


「相変わらずだね‥司」


その青年は落ちてきた短剣を掴み腰の鞘に納めると、少し呼吸を整えて五人に目を向けた。


「ふぅ‥‥皆さん無事ですか‥ってあれ、白鳩じゃないですか! 久しぶりですね!」


「久しぶり、司」


白鳩と司は互いに近寄ると、ハイタッチを交わす。


「どうしてここに?」


「巣の反応があったので。白鳩は何故?」


「あーちょっと野暮用でね‥」


「野暮用ですか?」


話している二人を豹助は不思議そうに遠目で見る。


「なぁ紫以奈。あの人って誰だにゃ?」


「冗談だよね豹ちゃん?」


「いやマジでわからないんだにゃ」


「第二小隊隊長。神宮寺 司。白鳩さんの同期で、光魔法のエキスパートだよ」


「なるほどにゃ‥あんま見たことないから分からなかったにゃ」


「豹助さんが知らないのも無理ないですよ。遠征でここにいる時の方が少なかったですし」


「そうだけども‥」


紫以奈の呆れに千夜がフォローを入れていると、ある程度話し終えた司が三人に目を向ける。


「あなた方が白鳩の新しい仲間ですね?」


「は、はい! 第31小隊所属 矢岬やみさき 紫以奈しいなです!」


「同じく村雨(むらさめ) 千夜(ちや)です」


「副隊長の裏代(うらかわ) 豹助(ひょうすけ)だにゃ。んであっちにいんのが隊長の刀堂(とうどう) 叶夢(かむい)だにゃ」


豹助は一人離れた場所にいた叶夢を指差す。叶夢はそれに気づき軽く会釈を返した。


「どもっす」


「初めまして、第2小隊隊長の神宮寺 司です。これからよろしくお願いしますね」


司は駆け寄って挨拶と握手の手を差し出す。


「うす」


叶夢は手を返して握手に応じる。


「挨拶済んだんで本題移っていいすか?」


「本題?」


「あれのことっすよ」


「あれ?‥‥ッ!?」


叶夢が指さした方向に目を向けた司はその目を開き絶句した。


「これは‥いったい?」


「見りゃ分かると思いますけど人の死体ですね。壁ぶっ壊したら出てきました」


「そんな‥」


司は震えを抑えると、その手のひらを合わせて死体に向けて祈りを捧げた。叶夢は不思議そうにその姿を見続ける。


「何か、ご存知ですか?」


「ちょっと叶夢。言い方考えてください!」


淡々と話した叶夢に千夜がイラつき気味に駆け寄った。


「いいえ全く‥‥心当たりが無いと言えば嘘にはなりますが。ひとまず先に報告の電話を入れてから事情をお話します」


「わかりました」


司が携帯を開き、支部と連絡と取っている横で叶夢の携帯が震える。画面を確認するとそこにあったのは白鳩からのメッセージだった。


『妙に疑ってたね』


叶夢は白鳩を一瞥いちべつすると表情を変えずに、再び携帯の画面に視線を落とす。


『まだ確証がない。あと俺は初見野郎をすぐ信用するほどオープンな性格してないだけだ』


『まぁだろうね』


「すいませんお待たせしました」


司が叶夢に駆け寄ると、他の四人も集まる。


「では私が話せる事情を喋らせてもらいますね」


司は一連の出来事を話し始めた。


ーーーーー


「以上が私が今扱っている案件の内容。この遺体との関係です。何か質問はありますか?」


「‥‥」


四人は目を伏せて、ただ話を聞いていた。内容は事前に朔夜に聞いていたものと同じだった為、話の内容はあっさり飲み込まれていった。


「特に無いっすよ」


「飲み込みが早くて助かります‥‥丁度警察の方も到着したようですね」


司が目を向けた先に数人の警官と、むくろ達第9小隊の姿があった。


「待たせたな」


「いいえ大丈夫ですよ。彼らと話も出来ましたし」


「一応極秘なんだけどな‥叶夢、わかってると思うがお前もあまり言いふらすなよ」


「当たり前っすよ骸先輩。それじゃ後始末お願いしまーす」


叶夢は軽口でそう告げて、その場を去る。四人もそれに着いていく形で路地へと足を進めていった。白鳩が骸にすれ違う瞬間、骸の背負った棺桶からわずかに電子音にも似た声が聞こえた。


(動き次第すぐに伝える。帰り道に気をつけろ)


「!‥‥ありがと」


白鳩は小さな声で返事をして、足早に叶夢の元へ走り去った。


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