第60話 暗躍魔子
長らくお待たせしました‥
気がついたら2020も終わり‥来年は更新ペースあげるぞー!
それではお楽しみください!
「全員集まったな」
叶夢が携帯をいじっている間に、31小隊の全員がリビングに集まる。
「ったく‥急に集めて話って何だにゃ?」
「せっかくの休日だったのに‥はぁ最新モデルの銃を見に行く予定が‥」
「悪かったよ‥どうやらのんびり出来る休みが今日までになりそうなんだ」
「どういうことだにゃ?」
「まずはお前らにこの録音を聞いてほしい」
叶夢が流したのは、ついさっきまで自分が盗聴していた極秘の緊急会議の音声だった。ノイズ混じりではあるものの内容を理解するのには十分の情報量だった。
そして、数十分の音声を全て聞き終えた四人は唖然としていた。
「そんな‥翔真先輩が内通者だなんて‥」
「こんなの嘘ですよ‥あの人がそんなことするはずがありません!」
「‥‥翔真、なんで‥」
「翔真先輩‥そんなことしたら弟以上のゲスキャラになっちゃうにゃ‥元からちょっとミステリー系のキャラでやってたのに‥」
「豹助くんのツッコミどころそこ!?」
「てな感じで、これが会議の内容だ。今の現状はわかって貰えたか? では次に移る」
叶夢は四人を気にも止めず話を進める。
「え、つ、次? 次って何だにゃ?」
「この話の流れで分からないか? そんなことも分からないなら窓際行って思考れ」
「あぁ!?」
「それで、その次って?」
「決まってんだろ白鳩。本当の内通者を見つけ出す」
「本当の内通者‥ですか?」
「当たり前だろ。こんなの馬鹿でも分かる冤罪だ」
「お前マジで俺へのそのディスりいい加減にしろにゃ‥でも確かにそうだにゃ。第一、あの人が内通者だったとして、こんなわかりやすい事でバレるかにゃ?」
「バレる訳ない。多分あの人が内通者ならそもそもこんな証拠が存在するはずがない」
「確かに‥‥ちなみに叶夢は目星はついてるんですか? 誰が内通者か」
「これでついてたら苦労しねえよ。俺もこの連絡貰ったばっかだから、実際どう行動すりゃいいのか迷走中なのよ‥」
「つーかあの録音‥いや盗聴? どこから拾ってきたやつなんだにゃ?」
「アレックスに決まってんだろ。なんか連絡来たと思ったら、画面はゲームのまま音だけ聞いてろって‥‥くっそやりにくかったんだからなあの野郎‥」
「てなわけで一先ずはあいつらの出方次第だ。まぁ大方俺らに回ってくるだろう任務は‥」
叶夢が途中で言葉をやめ、入り口の方に目を向けると同時にそこからノックの音がした。
「来たな‥入って来いよ」
叶夢の了承の声から数秒経ち、リビングのドアが開く。
「おっじゃましまーす」
「邪魔する」
「よう、朔夜。アレックス」
リビングの入り口に居たのは、朔夜とアレックスの二人だった。
「31のみんな久々〜。ほぼ一ヶ月ぶりだね」
「お久しぶりですアレックスさん」
「叶夢、状況は理解してるな?」
「勿論だ。お前らは中で動く感じか?」
「あぁ、下手に外に出れば勘づかれる‥」
「どういうことだにゃ? てか勝手に二人で話進めないで欲しいにゃ」
「それもそうだな。朔夜、説明を頼む」
叶夢はそう言うと、アレックスの分の椅子と自分用の椅子を持ってテーブルに戻る。
「今回の件だが、表向きは翔真先輩が内通者として俺らの情報が流されていた。という認識になっている」
「まぁ表がありゃ、裏もある。だよにゃ?」
「その通り‥正直今回の会議だってそうだ。確かに翔真先輩を突き出すだけの証拠はあった」
「だがそれは最低限でしか無かった。『頑張って集められたのはこれだけでした』っていう感情を見せびらかしているように‥な」
「実際、謎も多く残ってる。それを処分が決まる前に全部解決しなきゃ行けないんだから、人手も多くいる」
「じゃあ何で白銀先輩とかそこら辺の人に頼まなかったんだにゃ?」
「はぁ‥それも一度は考えたし、先輩方からの協力させて欲しいって言葉も聞いた」
「なら‥」
朔夜は溜息を吐き、豹助に答える。
「だがそれはあまりにもリスクがデカすぎる。10小隊以上が動けば、内通者もなにかしら対策はとるはずだ。そのせいで冤罪内通者が増えてこっちの戦力が削られたらますますジリ貧になんだろ」
「確かに‥だから俺たちって事かにゃ?」
「そう。目立った外部への調査はお前ら‥あと何人かに声を掛けてある」
「情報流出し過ぎだと思うにゃ‥」
「そういう訳だ。早速だがお前らに行ってもらいたいのはこのカメラの映像が取られた場所だ」
朔夜はモニターに映したマップで場所を示す。その場所はビル街の中心部分。ビルとビルの間にできた路地裏であった。
「よりによってここか‥」
「よりによって‥ってどういうことだにゃ? 白鳩」
「ここってあんまり治安が良くないことで有名な場所なんだ。まぁだからこそ情報屋が身を隠すには打って付けの場所でもあるんだけど‥」
「好都合だ。暴力しか能のない奴ほど、吐かせるのは簡単だからな」
「‥朔夜隊長が、どうしてここへの適任に叶夢を選んだのか。なんか分かった気がします」
千夜が怪訝そうな顔を朔夜に向ける。朔夜はそれを目にもとめず口を開く。
「悪いがこういう場所こそ叶夢は活きる。そうだろ?」
「あぁ、任せろ。それで他に声掛けた奴って?」
「主にランク戦でお前に絡んだ奴ら。22の天城。20の紅葉。そして‥金丸 当麻」
「「ッ‥」」
豹助と千夜が苦虫を噛み潰したような顔を浮かべる。
「そうか当麻もか‥どうする叶夢くん?」
「まぁ肉親がああなったら、あいつも動くだろうな‥まぁ利用はするさ」
「正気ですか叶夢!? あいつはランク戦で‥」
「俺を大多数でリンチしようとしたら二人相手で逆にボコられた。だろ?」
叶夢は憤った千夜に、笑った顔を返す。こんなもの脅威のうちに入らないという意味の悪意のこもった笑顔を。
「その調子なら大丈夫そうだな。俺たちはもう戻る」
「気取られるなよ二人とも」
「叶夢もね」
「時間が無い。午後にはそこに向かってくれ。それじゃ」
朔夜は叶夢にそう頼むと、アレックスと共に部屋を後にした。
「よしお前ら、残った時間で武器の調整済ませておけよ〜」
「もう使う前提なのかにゃ‥」
「当たり前だ。一般人なら大抵ステゴロでどうにかなるが」
「その一般人に暴力振る前提発想やめるにゃ!」
「僕ら一応人守る側だから!」
豹助と白鳩の大声のツッコミに、叶夢は鬱陶しそうに耳を指で塞ぐ。
「あ、千夜、紫以奈。今回早めに終わらせる予定だから終わったらショッピングでも何でも行っていいぞ〜」
「え、いいんですか!?」
「叶夢隊長に言われるまでもなくそうするつもりでしたよ」
「度々思うんだけど、紫以奈何かグレはじまってない?」
「安心しろ。それがあいつの素だにゃ」
「ええ‥」
叶夢は若干引き気味に言葉を返すと、武器を取りに部屋を後にした。
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「ったく、まさかあのまま認めちまうとはな‥もう少し食い下がるもんかと思ったが‥」
「‥‥」
埃のかぶった第二小隊の部屋。そこには机の前の椅子に座って考え込む司とその机の上に腰を預けた櫂の姿があった。
「おい司。これで良かったのか?」
「‥これで完璧に立証した。なんて私が言うと思います?」
「言わねえな。第一、さっきの推理なんざお前らしくもない言い掛かりに近いようなもんだったしよ」
「正直不安ですよ。万が一間違いでもあれば‥」
「その時は私が責任が取りますよ。ここを抜ける判断も受け入れるつもりです」
「ハッハハハ! お前らしいぜ司。そのクソみたいな責任の逃げ方!」
神妙な司の顔とは対照的に、櫂は乾いた笑い声を出す。司はそれを見て首を横に振ると、椅子を引き立ち上がる。
「お? 何だ?」
「少し用事が出来ました。貴方はここで待機してて下さい」
「あぁ? 俺に派手に動くなつっといて、それかよ」
「もう一度あのカメラの場所を探索してくるだけですよ。少々気になる事があるので」
「へーいへい。気をつけて行けよ〜」
司はそう言うと部屋を出ていく。櫂はその背中を見送ると、ぽつりと独り言をこぼした。
「さあて‥本当の裏切り者っていうのは誰になるのかね‥面白くなってきてるじゃねえの。クク‥」
薄暗い部屋に一人の乾いた笑い声が響いていた。




