第41話 新たなる息吹
後書きに新キャラの説明を入れておきます!
それではどうぞ!
「以上で10小隊会議を終わる! 全員解散!」
神座 頼光の号令と共に会議が終わる。
ランク戦から1ヶ月。小隊編成が変わり昇格した小隊。下げられた小隊などがいる中、第10小隊〜第1小隊は面子に変わりなく、見慣れた顔が揃っていた。
「あーあ。今回は変わり無しか〜」
「また首の皮一枚繋がったな翔真」
「骸ちゃん酷いこと言うなぁ‥俺だって頑張ってんのにさ」
「確かに上半期の情報収集系の任務。ほとんど翔真の小隊の手柄だったもんな」
「ほら龍之介もこう言ってるし」
他愛ない会話をしていた金丸 翔真、司馬 龍之介、繰実沢 骸の3人を見ながら、第1小隊隊長である白髪の檸檬色の目をした青年、出雲 朔夜は副隊長である桐原 銃造と共に配られた資料に目を通していた。
「はぁ‥変わり無しっすか」
「まぁまぁ‥誰も死んでないってことでいいんじゃない?」
「新顔が来たら虐めてたのに」
「性格悪いな〜朔夜くん」
桐原は笑いながらも朔夜が読み終わった資料をまとめながら目を通していた。
「でも今回はある意味いなくて良かったかもね。ずっと調べてたやつの目立った情報が出てきたんだし」
「第九位魔族‥サクリファイスですか」
朔夜は手元の資料に書かれていた魔族の名を呟く。存在こそ確認はされているが詳細は不明。わかっているのは数年前から多くの名の知れた征魔士がそいつによって殺されたこと。慎重と思われる性格の為、手がかりが少なく征魔士の中でも恐れられている魔族。
「詳しいことは分からずか‥」
「ったく魔族風情が‥」
「朔夜くん。それ半分ブーメランだよ」
「言わないで下さいよ‥」
「おーーい。おつかれさまー」
聞き覚えのある声に朔夜は入り口の方に目を向ける。そこにいたのはボサボサの青髪にピンク色の眼鏡をかけた藍色の目の青年だった。
「アレックスか‥久々に顔を見たな」
「僕も久しぶりだよー。何ヶ月ぶり?」
朔夜は半ば驚きながらその青年の名を呼び、アレックスは気の抜けた声で朔夜に挨拶をした。
「二ヶ月ぶりだ。にしてもどうしたんだよ。お前が外に出るなんて珍しいな」
「普段は第5小隊の部屋にこもりっぱなしだからねー。他の隊員から外に出るがてら隊長を拾ってこいって」
「白銀先輩を? あ、まだいた」
朔夜がテーブルを見回すと、そこには机に突っ伏し安らかな顔で熟睡している白銀 竜次の姿があった。
「先輩、会議終わってますよ」
「すぅすぅ‥」
「駄目だこりゃ。ノンレムスリープだね」
「それじゃ僕がおぶって‥」
「待て、アレックスが運ぶと白銀先輩が無事で済まない。俺が運ぶ」
「おーい朔夜。今良いかー‥また寝てんのか‥」
片付けを終えた頼光が呆れながら竜次の元に近づいてきた。
「今回は?」
「三徹だと思いますよー。任務期間長かったですし」
「はぁ‥銃造。運んでおいてくれないか」
「了解っす‥重っ!」
桐原はそう言うと、竜次を背負ってフラフラと会議室の外に出ていった。
「あ、アレックスと朔夜は残ってくれ。少しお前らに話があるんだ」
「僕もですか?」
「少し長い話になる。支部長室に来てくれ」
朔夜とアレックスは目を合わせると、共通の話題であることを察し、神座について行った。
ーーーーー
支部長室についた朔夜とアレックスはテーブルを挟んで神座と向かい合うように座る。
「知ってると思うが叶夢の謹慎が解けた」
「もう一ヶ月立ったんすか‥」
「え!? 叶夢ここに入ってたんですか!?」
「「そっちかよ!?」」
朔夜と神座が全く同じ言葉を叫ぶ。
「‥白銀先輩から聞いてなかったのか?」
「いや全く。言ってたとしても多分僕本人の耳が受け流した」
「お前な‥」
「‥気にするな想定内だ」
「嘘つけ!」
「本題に戻るぞ」
神座がどうにかテンションを戻すと声を真面目なトーンに変える。
「謹慎が解けて、いきなり指名の任務が入った」
「それに同行しろって事でいいんすか」
「僕外出れませんよ?」
「いやアレックスにはデータをまとめてもらいたい」
「データですか? 一体何の?」
「叶夢のランク戦の時の映像は見てるか?」
「見てるわけないじゃないですか。サクリファイスの調査してたんですから」
「そういやそうだったな‥もう少し頼まれてくれるか?」
神座は申し訳なさそうに手を合わせアレックスに頭を下げる。アレックスはため息をしながら神座に目を合わせる。
「仕方ないですね。ランク戦だけなら今から取り組んで‥二時間ぐらいですね。それからしばらく休憩を貰えるんだったら」
「それでいい。というか二時間でも早すぎるんだが‥そして次は朔夜」
神座は任務の概要をまとめた書類を朔夜に手渡す。
「これは‥なるほど遠征任務ですか」
「期間は三週間。お前と叶夢には征魔士連合軍のアメリカ支部に行ってもらう」
「遠征ですか‥俺初めてなんすけど何か準備しておくものとかありますか?」
「そんな気にすんな。分からないことなら依頼主様が教えてくれる」
「なら‥‥ん?」
「どうした?」
朔夜の反応が突然固まる。
「いま何て言いました?」
「分からないことなら」
「その前です」
「アメリカ支部への遠征だが‥」
「‥あぁ、マジか‥」
朔夜は資料を手放すと、ソファの背もたれによりかかりながら、頭を抱え悩ましそうな表情を浮かべた。
「どれどれ‥」
アレックスは不思議がり朔夜の手放した資料に目を通す。するとアレックスは何かを察したかのように神座に向けて苦笑いをした。
「朔夜、アメリカになんか嫌な思い出でもあるのか?」
「いえ、朔夜くん自体にはそういったことは無いんですが‥会いたくない人物がいるんですよ」
「というかまさか依頼主って‥」
「そのまさかだよ。そのアメリカ支部総司令。リアム・アルカトラズだ」
ーーーーー
「で、なんでリアムさんが俺に?」
時間は進み、神座と朔夜とアレックスは話す場所を、第31小隊の部屋に移し、第31小隊に朔夜とアレックスと同じように任務を説明していた。
「この間のランク戦。お前刀折ったろ?」
「あぁ、確かに金丸にへし折られたけど」
「あれを見たリアムが是非とも武器を作りたいとか言っててな。謹慎明けを伝えたら即予約されたぞ」
「怖すぎだろ! ストーカーかよ!?」
「あいつは一度ああなると止まらんからな‥我が親友ながらその執念に恐れ入って任務を通した」
「てかなんで俺の復帰任務が朔夜と一緒なんだよ!?」
「いやそりゃ、昔馴染みとの方がやりやすいだろうと思ってな」
「いいじゃないですか叶夢。朔夜隊長ならある程度の無茶も許してくれますよ?」
「そういう問題じゃないんだよ千夜! 第一俺初任務でこいつに殺されかけてるんだぞ!?」
叶夢は立ち上がると向かい側に座っている朔夜を指さす。朔夜は無言で帽子を深く被り、顔を一切見せなかった。
「相変わらず仲悪いね二人は」
「全く‥俺がまともに話せるゼルリッチ時代の仲間なんざ、アルフレッドかお前ぐらいだよアレックス」
「あの、アレックスさんもゼルリッチの魔子なんですか?」
千夜は手をあげると、アレックスに疑問を投げかける。
「ううん違うよ。僕はサイコフュージョン施術を受けてないから魔子じゃない。確かにゼルリッチ・ファミリーにはいたけどね」
「元ゼルリッチ・ファミリーの凄腕ハッカー。アレックス。たった一人でゼルリッチ・ファミリーの情報統制や他組織のハッキングをやってのけた。まさにゼルリッチの頭脳」
「そんな大した事してないよ‥」
「ホントびっくりしたぜ。まさかお前までここにいるとはな」
「間抜けな経緯でね‥」
アレックスは頭を掻きながら、叶夢に苦笑いをすると、口を開き語り始めた。
「ゼルリッチ・ファミリーが解散になったあと、運良くまとまった金が手に入ってしばらく各地を転々として、FXとかしてお金を増やして地味に過ごしてたんだけどね」
「そんなある日。アルカトラズ社のサーバーに不正アクセスが入った。重要データが盗まれることは無かったんだが、リアムは逆探知をして犯人を探した。で、その犯人がアレックスだったわけだ」
「ほんの悪ふざけだったんですけどね。それで今に至る訳です」
「ほんの悪ふざけであの会社のサーバーにアクセスするんですか‥やっぱりゼルリッチに関わった人は叶夢含めてろくな人がいないです」
「そんな事言ったらゼルリッチの魔子なんて誰もまともじゃなくなるぞ‥いつ出発だ?」
「三日後だ。飛行機を使っての移動だ」
「うげ、飛行機かにゃ‥」
その単語に豹助が苦虫を噛み潰したような顔を浮かべる。
「あー豹ちゃん、飛行機乗るの苦手なんだっけ」
「え、豹助くんそうだったの?」
白鳩が意外そうな顔で豹助の方を見る。
「あの感覚だけはどうしても慣れないんだにゃ‥落ちた時のことも考えるのも怖いし」
「あのな豹助、この現代飛行機の安全性は上がってるんだ。落ちる確率だって車の事故より少ないんだぞ?」
「そりゃわかってるんですけどにゃ‥やっぱテレビとかでそういうの昔から見てるとどうしても不安になるんだにゃ」
「まぁ確かに飛行機はいろんな事故があるからな。ハイジャックにエンジントラブル、バードストライクに落雷も‥」
「ちょっと叶夢、やめてあげてくださいよ」
豹助の不安を煽るように、叶夢が飛行機トラブルの例を多く上げた。しかしさすがに可哀想だと思った千夜が止めに入る。
「そうだ。落ちた時の予行演習ついでに飛行機事故の映画でも」
「叶夢」
ずっと黙り込んでいた朔夜が、叶夢の言葉を遮るように叶夢の名前を呼ぶ。
「何だよ朔夜。起きてたのか」
「最初っから寝てねえよ」
朔夜は帽子を浅く被り直すと、気だるげな眼でテーブルの仲間に目を合わせる。
「お前が豹助相手にマウント取って煽ってるのが見過ごせなかった」
「何だよ突然‥」
「ので俺が現在進行形でテンションが低い理由を暴露する」
「ホントどうしたんだよお前」
叶夢の困惑を無視し、朔夜は口を開いた。
「アメリカ支部に『ベロニカ』がいる」
「‥‥嘘だろ?」
「嘘でこんなこと話さねえよ」
「?」
朔夜の口から出た人名に叶夢以外の31小隊メンバーがクエスチョンマークを頭上に浮かべる。
「あの誰ですか? ベロニカさんって」
「あぁ千夜さんは知らないんだっけ‥元ゼルリッチの魔子のメンバーだ。それで」
「別ベクトルでトップクラスでイカれてる野郎だよ‥もう嫌なんでよりによってあいつなの?」
「じゃあ叶夢くんはアルフレッドかゼノンの方が良かったの?」
「そういう事じゃねえよアレックス‥まぁ消去法でも‥いや無理だ。その二人の方がマシだ」
「そんなにヤバめの人なんですか?」
「まぁ会ってからの楽しみだな‥」
「それじゃ僕は叶夢くんのランク戦のデータまとめる作業に入るから、二人とも任務がんばー」
そう言うとアレックスは軽い足取りで部屋を出ていった。
「それじゃ俺もリアムに連絡しておくぜ。各自任務に向けて体調管理しっかりしとけよー」
「神座‥俺と朔夜が既に鬱なんだが」
「そうか。じゃ」
「あ、てめえ! 待ちやがれ!」
神座はアレックスと対象的に足早に部屋から出ていった。
ーーーーー
「はーいもしもし。どうかした頼光?」
『例の任務の件。叶夢が了承したぞ』
電話の主は黒いパーカーを羽織り、そこから雪のような白髪に負けずと劣らず白い肌を覗かせた水色の目の男性、リアム・アルカトラズだった。
「おお! なら良かった! 朝早く何事かと思ったけど‥そっかそっち昼か」
「そもそもこっちの昼の電話にすぐ取れる状態とか、お前夜遅くまで何やってんだよ‥」
「あはは、少し野暮用をね。今から寝るところさ」
そう言うとリアムは机の上に置いてあった赤く光る鉱石を手に取る。
「ったく‥こっちの日付で三日後に向かう」
「はーい了解しましたー。流石に神座は来れないんだろ?」
「当たり前だ。これから仕事が立て込みそうだからな」
「それじゃ俺は寝るとするよ‥おやすみ‥」
リアムはねむたげな声で電話を切る。それと同時にリアムの部屋のドアを誰かがノックした。
「誰だい?」
「私です。日本支部との合同任務の最終確認に参りました」
「すっかり忘れてた‥ごめんそれ二時間後にしてもらえる? 仮眠とる」
「はぁ‥わかりましたよ」
ドア越しに少女はため息をこぼすと、部屋の前から去る。
(にしても驚いたわ。朔夜だけならまだしも、叶夢までここに来るなんてね‥今回の任務はだいぶ面白くなりそうね)
「ふふっ」
薄暗い廊下を鼻歌を歌いながらステップを踏み駆けていく影が一つ。
その少女の名は
ベロニカ・クライムエッジ
アレックス
158cm/50kg
誕生日 9/15
第5小隊参謀。年齢は叶夢達と同じ16歳。手入れされずボサボサになった青色の髪にピンクの眼鏡をしている青年。征魔士ではあるが魔力回路の多さが一般人より少し多めであるため、戦闘能力は皆無で、「一般的な高校生とステゴロ喧嘩しても負ける自信しかない」と自ら自虐するほど。普段は第5小隊専属のブレインとして地下室でモニター機器をいじっている。姓は名乗っておらず不明。ゼルリッチ・ファミリーの元ハッカーで電子機器の扱いや、纏めた情報から朔夜以上に作戦立案に長けている。




