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紅い死神の征魔戦争  作者: 雨色 A音
33/83

第33話 死神の逆襲宣言

ペースが落ち気味なのでこれから持ち直して行きたいです…


では33話をどうぞ!

ランク戦三日目。楔島の中心に存在する廃都市エリアには日が昇り間もないにも関わらず、多くの征魔士達が中心にあるビルの1階に集められていた。


「お前ら!よく集まってくれた!

第11小隊 隊長。金丸(かねまる) 当麻(とうま)だ!本日、君たちに集まってもらったのは他でもない‥」


整えられた金髪に青いメガネをかけ、拳をふりかざし雄弁に語る青年の名は金丸 当麻。普段は誰に対しても偉そうな態度を取る彼ではあるが今日は違った。昨日にその態度を覆す吉報が届いたからだ。


ーー数時間前ーー


「金丸隊長! 連絡です! 渓流エリアで橋に仕掛けた爆弾が起動。第31小隊に甚大な被害を与えたもようです!」


「そうかそうか‥‥くっくっくっ‥あいつらも良い奴だよなァ。まぁ、この世界、そんなヤツらが馬鹿を見るものですし? んであいつらは遊園地エリアに?」


「はい! そこで姿が途絶えていますが、あの怪我ではあのエリアの壁を越えるのは不可能でしょう」


「これで完璧だ。明日の朝4時に全員を集めろ。開始時間の9時に遊園地エリアを攻め落とす」


「了解! 全小隊に連絡を!」


金丸の口角は吊り上がり、どう抑えてもそのニヤケを止めることが出来なかった。

邪魔をする者が一切いない状態で、奥の手も使い切った手負いの叶夢を自分の手で殺れる。その理想的状況を作り上げた自分自身の采配に


「予定より早く終わっちまったな‥あ、まぁ早く帰れることに越したことはない」


金丸は戦鎚を背負うと、一人どこかに向けて歩き出す。金丸が廃都市エリアの中で中心のビルを拠点にしたのにはいくつかの理由がある。一つは中心にあるが故に展望台から全エリアの戦況を見ることが出来る点。そして二つ目の理由が、このビルの地下にあった。


「ここを拠点にして正解だったぜ。まさかここに地下都市エリアの入口があったなんてな」


偶然にもそこには地下都市エリアへ続く道があった。


「一日目はここの探索で潰しちまったが、そのかいはあった。なんせここ以外の出入り口が遊園地エリアにしか無いことを知れたんだがらな」


一階のフロントにある非常階段を下り、自分の火魔法で付けた灯りを頼りに螺旋状の非常階段を下っていく。そこに広がっていたのはドーム状に作られたコンクリートの空。また廃都市エリアの近代的なビルなどのとは対照的に中世ヨーロッパのようなレンガ造りの家や石畳の道。時間が止まった時計塔など、上の文明から切り離された非現実感が漂う場所となっている。


「少し(かび)臭いが‥‥まぁ明日にはあいつの血で少しはマシな匂いになるだろう」


金丸は暗い街を見渡すと満足そうに上に帰る。勝利宣言となる演説の原稿を考えながら


ーーーーーー


「今日をもって紅い死神を討つ! 作戦においては昨日のメール通りだ! 各自持ち場につけ!」


「「了解!」」


(全て完璧だ‥ここでこの全員が裏切ろうと… さ)


金丸は戦鎚を持つとどこかに姿を消したが、残った大軍は遊園地エリアに向けて進軍を始めた。


ーーーーーー


征魔士連合(ウィザーズ・チャリオッツ) 日本支部 〜



「ふん‥これで今年のランク戦も終わりか」


(むくろ)。失礼だよ」


「いや竜次。あれはもう詰みでしょ」


モニター室でその様子を見ていたのは、白銀(しらがね) 竜次(りゅうじ)と銀髪のオッドアイの少女。繰実沢(くるみざわ) (むくろ)だった。


「今回のランク戦はほぼ一方的だったが三日ももっただけいいものだろう。寧ろあの金丸相手に」


「どうだろうな」


白銀が骸の言葉を遮るように口を開く。


「というと?」


「今回の立ち回りを見てわかったよ。やっぱりあいつはまだ分からない。仮にもあの朔夜と同じチームにいた人があの程度で終わるとも思えないからさ」


「うーん‥‥竜次の気持ちもわからんでもないけど‥この状況を見るとな」


「おはようございます。二人とも随分とお早いですね」


「お、噂をすれば‥‥って珍しいな。桐原も一緒とは」


「おはよ〜二人とも‥‥隊長に起こされちゃってさ」


そんなことを話してるうちに朔夜がモニター室に入ってきた。しかしいつもと違ったのは後ろに黒髪に翡翠色の目を眠そうに半開きにしてる第一小隊副隊長 桐原 銃造(きりはらじゅうぞうがいたことだ。


「朔夜。今の叶夢達の状況はどう見ている?」


「どう見ているとは?」


「戦況が不利になってるけど、これはあいつにとって勝てる状況かってことよ。同じチームだったあんたならわかるでしょ?」


「随分と投げやりな聞き方ですね。さては骸先輩、あれ気に入りました?」


「朔夜! 言い方を考えろ!」


「おっと!」


骸の怒りに同調し後ろに置いてあった棺桶からマリオネットが朔夜目掛けて襲ってきた。

朔夜は後ろに下がりそれを軽く受け流した。


「うーん‥勝つかどうかはわかりませんけど」


「けど?」


「結果はどうあれ。ランク戦は今日で終わります」


「「は?」」


朔夜の発言が二人の空気を凍りつかせた。


ーーーーーー


〜同時刻・遊園地エリアにて〜


「うわぁ‥‥ほんとに来てる。 」


『だから言ったろ? 今日でトドメを刺しに来るって』


『ここまでは手筈てはず通りというわけか』


『にしてもやけに協力的だな紅葉(あかは)


『当然だ。天城と同じチームを今日限りで解消できるのだからな』


イヤホン型のインカムから紅葉と叶夢の会話を聞いていた白鳩はメリーゴーランドの屋根に乗り、紫以奈と共に双眼鏡を使って廃都市エリアの様子を注意深く観察していた。

正確には叶夢を倒すために遊園地エリアに進軍していた金丸達の軍を。


「数はおよそ30‥‥多分下の方が多いかも」


「それなら好都合です。多分連中は私達が地下都市エリアを見つけてない前提であれを進めてる見たいですし」


『どうだろうな。お、見えた見えた。こっちも団体様を確認。腐れ金髪もいやがる』


『さーてこっちも暴れるとすっかにゃ!』


「それじゃ、頼んだよ。地下都市エリアの制圧(・・・・・・・・・・)。」


『任せろ。今日で全部終わらせてやる』


叶夢は静かに白鳩にそう告げると、通信を切った。


「白鳩さん。敵の状況はどうなってます?」


「もう来てるよ。戦闘準備に入ってて」


「わかりました。それと‥‥叶夢何か言ってました?」


「え?‥うーん‥特に変なことは言ってなかったと思うよ。『今日で全部終わらせる』とか言ってたし」


「‥‥そうですか」


千夜はどうしても嫌な予感を拭えなかった。そのせいで叶夢の言動一つ一つに不安を覚えてしまっていた。


「よし遊園地エリア突入‥‥第31小隊。迎撃開始!」


最初の軍が遊園地エリアに一歩足をつけた瞬間。白鳩は狼煙にも似た弦音を響かせ、矢を放った。それと同時に三日目の戦いの火蓋が切って落とされた。


「上は始まってるみたいだな」


「こっちはいつになったら始まるんだにゃ?」


「慌てんなって豹助」


場所は変わり地下都市エリア。叶夢はとある家屋の中で張力強化をしながら身を潜めていた。


「よし近くまで来た‥‥豹助。聴力強化しとけ。あいつの指示を絶対に聞き逃すな」


「囁く声を強化してる時に出さないでほしいにゃ。耳がくすぐったい」


「うお‥‥本当だ」


「あれ。無言でここまで来ちゃってるみたいだけどにゃ‥‥」


叶夢が窓から下の道を見ると金丸を筆頭に、数十人の征魔士があたりを見回していた。


「‥‥作戦変更。強襲しろ」


「何も作戦変わってねえよ! じゃあ指定の地点まで金丸を分断するにゃ! 早くそっちに合流しろ!」


「おっけー! そんじゃ頼んだぞ!」


豹助はそう言うと、窓から飛び下り自らの姿を敵軍の前に晒した。叶夢は豹助を見送ると頭の中で昨日立案した作戦についてを整理し始めた。


ー12時間前 遊園地エリアにて ー


日も沈み切り、叶夢達第31小隊は遊園地エリアの中心にあるスタッフ用の建物に身を休めていた。


「それで、勝てる秘策っていうのは?」


「焦んなって。順を追って説明する」


昼に文字通り身体を燃やし尽くした叶夢は、頭や腕に包帯を巻いており、決して万全とは言えない状態にまで陥っていた。


「まず結論から言って、地下都市エリアは取らなくても勝てる」


「むしろ取らない方が勝率が上がったりするんだよにゃあ」


「どういうこと!?」


「よし。説明しながら準備に取り掛かる。行くぞ豹助」


「ほいほーい」


豹助は動けない叶夢を背負うと、全員を連れて下の階のダンボールが積まれた埃臭い部屋を訪れた。


「豹ちゃん。ここって物置?」


「そうだにゃ。でもここには不自然な箇所があるんだにゃ。それがあそこ」


豹助が指をさしたその箇所には、ダンボールが積まれていなかった。


「あそこ?‥‥床下の収納スペースの扉があるだけじゃないですか。それならあそこにダンボールが積まれてないのも不自然じゃないですよ」


「と思うだろ千夜? 豹助、開けてくれ」


「全く‥‥よっこいしょ」


「‥‥え? 豹ちゃんこれって!?」


豹助が扉を開けて現れたのはコンクリートの階段だった。暗く先の見えない今でも、この場にいる全員がどこに通じているのかは見当がついた。


「地下都市エリアの入り口じゃんか!」


「叶夢! 何サラッと見つけてるんですか!?」


「遊園地エリアにあることはだいたい察したからお前らに夜通しで捜索させようとしたんだが‥‥あっさり見つけちまった」


「さらっと小生らにえげつないことをさせようとしていた様に聞こえたのですが?」


「叶夢、そろそろ閉めていいかにゃ?」


「あぁ、もう開けるつもりは無いからな」


「「「は?」」」


豹助は四人の驚きを気にも止めず、地下都市エリアへの扉を閉じてしまった。


「いやいやいや! 叶夢くん!?」


「豹助。重りになりそうなやつを片っ端からその上に乗っけてくれ」


「さーいえっさー」


「叶夢! 私達の思考を置いてけぼりにしないでください!」


「仕方ねえなあ」


豹助が棚や家具などの重りになりそうなものを扉の上に置いて行くのを後ろに、叶夢は気だるそうに口を開いた。


「まず地下都市エリアの入り口を封鎖した理由について。単純だよ。危険だからだ」


「どういうことですか? 叶夢隊長」


「今の俺らの状況を整理してみろ。渓谷エリアの橋は落とされ、山岳エリアはバリケードによって封鎖。唯一移動可能な隣接エリアは廃都市エリアだけ。しかしそこは敵の総本山。更に頼みの地下都市エリアが通じる場所も同じだ。俺らは普通に詰んでる」


「そんな」


「悔しいが俺らは金丸に追い詰められて、もう敗北が目の前まで来てる。どう手を尽くしても勝算はゼロだ」


「‥‥」


言葉が出なかった。手の上で踊らされているのを知ってしまった以上、何をやっても無駄なんだという思考が頭を支配してしまったからだ。さらに敗北という言葉を1番場数を踏んだ叶夢が言ってしまった。


「何でそんなに沈んでんだにゃ?」


「ッ! 豹ちゃんは悔しくないの!?」


尽くせば負け(・・・・・・)なんだろ?だったら尽くさなきゃ(・・・・・・)いいにゃ。」


「何言ってるの!? それじゃ今より酷く負けるだけじゃん!」


「あー‥‥叶夢。こっからはお前が説明してくれにゃ」


「おっけ。ほら、お前らそんな湿気しけた顔すんなよ」


叶夢は手を叩き全員の顔を上げさせた。


「ここまでが負けるパターンだ。負けるとしたらこれが一番金丸的に理想的なパターンだろう。俺の作戦を読み切った上での完封勝利。故に彼奴は地下都市エリアに現れる」


「それがどうしたって言うんですか? 叶夢も地下都市エリアで迎え撃つとでも言うつもりですか? それだったら何でわざわざ入り口を塞いだりなんか」


「決まってる。そこから入らせないようにする為だ。仮にここが攻め落とされれば、否が応でもそこを開けられて挟み撃ちにされちまうだろう。だがそれさえ無ければ俺達は勝てる」


「つまりどういうことですか? 叶夢隊長の作戦とやらがまだ伝わってきません」


「わかった。一旦上に行こう。蝋花達と通信をつなげて作戦内容を話す」


準備などがかさばり数分後。通信も繋げ、叶夢による最後の作戦会議が始まった。


「よし。まずは作戦の概要について話す。

まず俺と豹助で先行して地下都市エリアで待ち伏せ。挟み撃ち用の部隊を殲滅。その間の遊園地エリアへ向かってる本隊を白鳩・千夜・紫以奈と第22小隊を含めた部隊で防衛してもらう」


「叶夢隊長。さっきの扉の件は」


「あぁそうだった。地下都市エリアへの侵入の件だが、入口は見つかった」


『なに!? 本当か!』


「うお!びっくりした‥‥やけに興奮気味だな紅葉(あかは)‥見つけはしたがこいつは使わない。」


『‥‥お前馬鹿か?』


「言われ過ぎて反応できなくなっちまったよ。その件は今から写真を送る」


叶夢は端末を取り出し、数枚の写真を全員に送信した。


『これは‥‥渓谷エリアか? 橋がすべて落ちてるでは無いか?』


『これじゃ逃げ場がないですね‥‥けど叶夢隊長や豹ちゃんの言う通り侵入も出来ない』


「あぁ、ここからの急襲を恐ることはないって証明。問題は次の写真だ」


全員が二枚目目の写真を見る。その写真は橋が落ちる前に漁村エリア側から遊園地エリア側を撮った写真であった。


「これがどうかしたの?」


「右下を見てくれ」


「右下ですか?‥‥えーと」


「‥‥排水口。で合ってますか?」


敷波の指摘した黄土色の岩肌の中で一つだけ黒く錆びた排水口に全員の目が止まった。


「そう。そこ地下都市エリアに繋がってるからそっから向かう」


「なるほど‥‥ってえええ!?」


「この間、白銀先輩に聞いたんだよ。『地下都市エリアは2つのエリアを跨いで、地下に溜まった水を排出する為に幾つか排水口が繋がってる。』ってな」


「竜次から!? え、いつ聞いてきたんだよ!?」


「お前らがゲームするとか言って俺だけ遅くなったとき」


「あはは‥‥アイツらしい‥てかあの時あいつあそこから侵入してたのね」


白鳩は呆れた顔を手で隠しながら、椅子の背もたれに大きく寄りかかっていた。そんな白鳩を横目に叶夢は話を続けた。


「挟み撃ち用の部隊を叩いてる間に、紅葉(あかは)達には廃都市エリアを通って遊園地エリアに向かってきて欲しい。これなら地上部隊も全滅できる。以上が俺の立てた作戦だ。何か異論のあるやつは? なんでもいいぞ?」


「はいはーい。地下都市エリアが突破された場合は?」


「いい質問だな千夜。仮に俺らを倒したとしても、アイツらは確実に回り道をすることになる。地下都市エリアの壁は魔法を通さないから破壊されることもない。天城の水銀でドアを埋めれば完璧に封鎖完了。未来の後輩に対する嫌がらせにもなる」


「うっわひっで。自分と同じ手を使わせないという明確な意思が出てたにゃ」


「ヒヒ! 言葉の裏の悪意が滲んで出てましたね!」


(これが叶夢隊長の作戦‥‥すごい。これほどの作戦を即座に考えつく発想力‥しかも今日の損害が無ければこの作戦は成立しない。勝てるっていう明確なビジョンが見える)


紫以奈は黙り込み、今一度叶夢の恐ろしさを知った。敗北が生み出した勝利への道筋。焦燥していた自分を含めたほかの隊員にもそれを見せた。


「しっかし恐ろしいですね。小生もこれは感服せざるを得ない」


「天城隊長‥‥怪我の方は?」


「ご心配どうも矢岬さん。万全とは言えませんよ。まだ魔力回路が熱いです。ですがドアを埋めるほどの魔力ならありますよ」


「だから‥ですか」


「?」


「いえ、疑問だったんです。地下都市エリアのドアを開けられないようにするために何故わざわざ渓谷エリアから侵入するような形にしたのか。ただ扉を開けられないようにするだけなら叶夢隊長を入れてから埋めても良いだろうと」


「確かにそれの方が良いのですが、それには大きな問題がある。恐らく直前に潜ってでは水銀が固まる時間が足りないのでしょう。かと言って夜の間に張り込むのはランク戦のルール以前に彼自身が許さないでしょう」


「許さない‥‥ですか?」


紫以奈は叶夢を見る。叶夢は豹助と明日の打ち合わせをしており、会話の一部が紫以奈の耳に入ってきた。


「つーか夜の間に張り込むのがいいじゃないかにゃ?」


「は!? やだよ! 何であんな場所で一夜明かさないといけないんだよ!? あんな肥溜め並みに汚ねえ場所で安眠できるのはノミと魔族ぐらいだぞ!?」


「肥溜め並みに汚ねえ場所とか言うなよ! 俺らそこに行くんだぞ!? つかそんな理由!? ただのお前の意思による手抜きじゃねえかにゃ!」


「当たり前だろ!? 最善尽くして勝てるほど戦争は甘くねえんだよ! 24時間職場に貼りこみとかブラック以外の何ものでもねえぞ!」


「てめえそれで絶対負けるなよ‥‥こっちが恥ずかしいだけだからにゃ」


「‥‥くすっ」


どこかにいつものように怒鳴り合ってる姿を見て紫以奈からは笑みがこぼれた。


「さぁさぁ明日は早いんだからさっさと寝た寝た」


『了解です! 叶夢隊長も疲れを残さないようにごゆっくりなさってください』


「ありがとう蝋花‥‥お言葉に甘えさせてもらうわ。おやすみー」


叶夢が部屋を出たのを見送ると、蝋花と紅葉も通信を切った。


「それじゃ俺らも寝ようか‥」


「すいません。私はちょっと用事がありますので‥‥」


「用事? なんか仕事あったかにゃ?」


「いえいえ大したことない私事(わたくしごと)ですよ‥‥皆さんは先に戻っていてください」


「あぁそう? なら先に戻ってるね。村雨ちゃんもはやく寝るんだよー?」


「はーいおやすみなさい。」


千夜は三人が部屋から出るのを見送ると、ふと部屋の中を見渡し誰もいないのを確認し、携帯端末を取り出す。


「‥‥もしもし」


ーーーーー


「いたぞ豹助だ!」


「お前ら豹助を追え!」


「「「了解!」」」


叶夢は相手の指示を盗み聞き、窓から顔を覗かせる。地下都市エリア内の縦横無尽に駆け巡る豹助を数十人で追い回しているのが見えた。しかしその中に金丸の姿は無く、追っている人間達もどこか不自然な動きを見せていた。


「他の奴らは遊園地エリアの方から侵入するつもりみたいだが‥‥豹助、上手くやってくれよ? さぁ、俺も出るか!」


身体強化を脚部に施し、準備完了。あとは直進している1つの足音が限界まで近づくのを待つ。


(10m‥‥5m‥3m‥今だ!)


叶夢は窓から身を乗り出しその姿を、金丸の正面に晒した。


「いたか‥‥」


金丸も叶夢を視認したが、時は既に遅かった。先に位置を知っていた叶夢は刀を構え金丸に向けて跳躍し、猛スピードで迫っていた。


「馬鹿が‥‥撃ち落としてやるよ!」


「‥」


金丸は背中の戦鎚を構え、振り下ろす形で叶夢に向かった。そして間合いに入った瞬間に金丸は戦鎚を迫った叶夢に向けて振り下ろす。


「判断が‥‥早すぎなんだよ!」


「な…‥‥にぃ!?」


金丸は反射的に戦鎚を振り下ろさずに自分の前に盾替わりにして構えた。その動作の直前の叶夢が刀から手を離し、足を突き出す形で金丸に向かっていたからだ。

刹那、叶夢の蹴りは金丸の肋骨を砕く寸前で戦鎚の柄によって防がれた。


「へぇ‥‥前よりやるじゃん?」


「まさか旅館が本気とでも?」


「知ってたさ。今日で本気のお前を潰せることが楽しみで先走っちまっただけだよ!」


「そうか‥なら今日はお前にとってもいい日になるぜ?『死神の落日』としてなぁ!」


二人の決戦の始まりを狼煙として、全面戦争が始まりを告げた。

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