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紅い死神の征魔戦争  作者: 雨色 A音
28/83

第28話 時を賭ける野良猫

今回はタイトル通り、豹助が頑張ります!

ではお楽しみください!

ような木々が生い茂った森の中に細い道が通っており、標高が高くなるにつれ、岩肌が目立つ荒れた道になっていくために下と上で戦い方を順応に変えなければならない。

しかし叶夢がいた廃村エリアから山岳エリアに向かうには、叶夢が爆竹を鳴らしたせいで警戒レベルが引き上げられている森林エリアを抜けなければならない。


「逃げる時に爆竹なんて放り込むんじゃなかったな」


「お陰様でこんなコソコソしたルートで行くしか無くなったにゃ」


「挙句、紅葉隊長には見つかってますからね。ほんと何のために爆竹使ったんですか?結果的に自分の首を絞めてますよ」


「結果的に撃退したからノーカンノーカン」


叶夢が追っ手を振り切る際に使った爆竹の音により、叶夢が周辺にいるという事実が知れ渡ってしまい、森林エリアを中心に周辺のエリアすらも警戒レベルが上がっている。


「んじゃあのマラソンで‥」


「ここは蜘蛛の子を散らすようにみんなバラバラに行った方がいいにゃ。紫以奈は一応俺も同行で」


「豹ちゃんと‥森で‥二人きり‥」


「何も起きないはずが無く‥‥って紫以奈。変な想像はやめてくれにゃ」


紫以奈が赤らめた頬を手で隠すと、豹助が悪寒を覚えながら紫以奈を見つめる。叶夢は呆れ、そんな二人を無視し話を進めた。


「私は一度隊員に連絡をつけて、合流してから向かう。千夜、着いてきてくれるか?」


「了解です」


「んじゃ俺と叶夢くんってことか。」


「よろしくな白鳩。んじゃお前ら。散れ!」


「「「了解!」」」


六人は廃村エリアからそれぞれ別々の方向に逃げ、紫以奈と豹助は森林エリアの中心部分。紅葉と千夜は20小隊と合流する為に、一度渓流エリアに戻ってから山岳エリアに向かうため、かなり遅れる。そして叶夢と白鳩は森林エリアの中でも荒れ果てた東側を通ることにした。


「豹ちゃん。一応、暗視は使っておくけど、豹ちゃんもちゃんと周りにも目を配っておいてね」


「分かってるにゃ。にしても人の気配が無いにゃ‥‥ホントに警戒レベル引き上げられているのかにゃ?」


「デマであって欲しいけど」


森林エリアの中心は背の高い木々が密集しており、昼間とはいえ陽の光が殆ど当たらず薄暗い。つまり人が隠れるには絶好の場所だ。


(ここまで光が少ないと‥‥)


「仮にライフルで狙われたとしても、反射光が少ない分、事前に察知しずらいよね。

やっぱり一度撃たれてから、音の方向で判断するしか」


「‥‥さらっと心読むのをやめてくれないかにゃ?」


「この状況で豹ちゃんが考えてる事なんてすぐに分かるよ」


「じゃあ俺も紫以奈の考えてることを当ててやるにゃ」


豹助は紫以奈の手を掴み、目を見開く。それと同時に二人の口が全く同じ言葉を放つ。


「「避けろ (て)!」」


時を同じくして、森林地帯の東エリア。

ここには身体強化を使って全速力で荒れた道を駆ける二人の姿があった。紅いフードを深く被った叶夢と白いコートを着て、弓を片手に携えた白鳩である。


「なぁなぁ叶夢くん。ほんとにこの道行くの?」


「当たり前だろ白鳩。それに、逆にここなら相手も俺を殺りやすいだろうし」


森林エリアの東側。中心とは対照的に枯れ葉が足場に敷き詰められ、木も生い茂ってるという面はなく、枯れ木によって見通しのいい森になっていた。


「このエリアの怖さを分かった上で言っているんだよね?」


「‥‥先輩。ここってどんな人が陣取るの?」


「安心しなよ後輩。もう僕が説明するまでもないだろうし」


叶夢が声を震わせながら、辺りに目を散らす。視界良好だった筈の東エリアの森には濃い霧が掛かり始めていた。


「やらかしたか‥警戒レベルが引き上げられているのは本当だったみたいだし‥‥叶夢くん?」


「あいつらに連絡する‥‥千夜か?」


『どうかしましたか? 叶夢?』


通信機の向こうで呆けた声が聞こえる。あちらはまだ襲撃を受けてないようだ。


「いいか千夜。落ち着いて聞け。いつでも魔法を打てる状態に‥」


『何だと、分かった! すぐに向かう!』


『紅葉さん? さっきの通信って‥』


『20小隊が急襲された! スピードを早める!』


『だそうです! 一旦通信を切ります!』


叶夢は静かに通信端末をポケットにしまうと、目の色を変えて前を見据えた。


「多分豹助も襲われてる頃だ。なら誰がいちばん先に着けるかの競争だな」


「叶夢くん、あまり強がる態度は良くないんじゃない?」


「‥‥だな。んじゃ白鳩! 構えとけ!」


「あいよ!」


場所は戻り森林地帯の中央エリア。

豹助が紫以奈の手を引き、自分の胸に引き寄せると同時に豹助の後ろ。すなわち道の前方から数発の弾丸が二人に向けて放たれていた。その弾丸の一部は紫以奈を庇った豹助の肩を掠り、ふくらはぎを抉った。


「豹ちゃん!」


「ぐっ‥‥大丈夫大丈夫‥これぐらいすぐに回復魔法かければ‥それより」


豹助が木に寄りかかり、弾丸が放たれた方向に目を向ける。向こうに狙撃手の姿はなかったものの、草むらをかき分け移動をするざわめきが多方向から聞こえた。


「どうやら狙撃手は沢山いるみたいだにゃ」


「豹ちゃん‥‥時空凍結(フリーズワールド)の残り時間は?」


「あと1分30秒だから‥‥えーと90÷15だから‥‥6!」


豹助の言葉が言い終わると同時にあらゆる方向から銃声が鳴り響く。本来であればこの時点で蜂の巣であるが迫る弾丸を豹助は嘲笑した。


時空凍結(フリーズワールド)!」


瞬間、背景の色が消える。豹助は紫以奈を抱えると、景色に固定された銃弾を避けながら全力で道を駆け抜ける。

残り7秒。今の調子なら1分もあれば行ける。


「あれ? こういうのってフラグって言うんだっけにゃ?‥‥まぁいっか!」


残り3秒。神具を展開し流れ弾の消費に入る。ふくらはぎの部分が少し痛むが、このスピードを保つ事に支障はない。


「さぁ時間だにゃ‥‥」


背景に色が付き始める。ゆっくりと時間は動き出し、豹助は周りの動き出した事象への対処を始めた。まず後ろから来た数発の流れ弾を一本の聖剣でいなす。そして前からの弾丸も二本の聖剣で半分に斬り裂いた瞬間。


「!?」


「豹ちゃん!」


聖剣に触れ、中身が外に漏れだした弾丸から、さらに細かい弾が拡散され、油断しきった豹助の背中にめり込んだ。


「紫以奈、俺の身体に絶えず治癒魔法を掛けておいてくれにゃ」


「そんな事しなくても私が降りて自分で走れば‥‥」


「時間止めて逃げ切る前提の俺に追いつけるわけがないにゃ。それに今は変なテンションになっちゃっててね」


豹助は紫以奈の治癒魔法に身を委ねながら、その足を速めた。

ーそうだ。どこからともなく襲い来る弾丸なんて怖くはない。ー


「豹ちゃん?何言って」


ー確かにその弾丸はオレを狙っている。それ一つ一つはオレの身体を抉り、オレの命を造作もなく狩るモノだ。ー


「悪いしーちゃん。少し黙ってて」


「う、うん‥‥」


ーこんなところで本気は出したくなかった。こういうのは溜め込んで一気に出した方がカッコいいのにな。ー


「豹ちゃん! 第二波来るよ!」


「了解ッ!」


ー時間を止めるだけじゃ足りないなら。その時間を捨ててやる。ー


時間棄却(トラッシュ・ワールド)!」


再び時が止まる。しかし既に狙撃手は弾丸を放ったあとだった。また剣を使えば散弾を踏む。しかし無視すればそれは二人の生命を殺めるモノとなる。


「撃て!」


豹助の魔法を待たずして、第三波の弾丸が襲いかかる。今回の弾丸は全てが全く別の方向に撃たれたものだった。しかし不規則に撃たれたものではなく、豹助が15秒以内で抜けることの出来ない方向や進路に弾丸が放たれていた。


「ダメだよ豹ちゃん、逃げ切れないよ!」


「‥‥!‥ぜぇぜぇ」


ほんの一瞬の事だった。無表情だった豹助の顔には息が上がり大量の汗が吹き出していた。


「豹ちゃん?」


「成功‥‥だにゃ!」


「え? 成功って‥‥ええ!?」


紫以奈は豹助の言葉に疑問を持ちながら、視点を豹助の顔のすぐ後ろに合わせた。木々が生い茂り暗めの緑色だった空が、澄んだ青の見慣れた空に変わっていた。


「これ‥どうやって?」


「悪い‥疲れたからそろそろ降ろすにゃ」


「え、うん‥」


豹助は紫以奈を下ろすと、近くにあった屋根のついた小屋の中に倒れ込んだ。紫以奈が小屋に駆け込み、豹助に触れるとその身体が異常に熱いことに気が付いた。その身体の熱は運動だけの熱ではなく、魔力回路のヒートアウトも含まれていた


「何やれば一瞬でヒートアウトなんて‥」


時間棄却(トラッシュ・ワールド)っていう時間魔法の一つだにゃ」


「時間‥棄却?」


「あぁ、これは普通の時間凍結と違って、15秒の時間停止を数回行ってわざと残像を残すんだにゃ。言わば空間に自分の姿を写真として固定するんだにゃ」


「でも確か時間魔法は、魔力回路の負担が大き過ぎて、連続使用は3回しか無いんじゃ‥‥45秒で抜けられたの?」


「45秒で足りる訳ねえだろ。残りのストックの1分15秒使って一気に森の外まで駆け抜けたんだにゃ。勿論敵を混乱させる為に別々の場所に残像を固定した分、ギリギリだったけどにゃ」


「じゃあ‥ここは」


「森林エリアを抜けた先‥‥山岳エリアの入り口で森林エリアとの境目の部分だにゃ。証拠にそこの崖の下を見ればさっきまで俺らがいた森林エリアが広がってるはずだにゃ」


紫以奈が崖の下を見てみると、確かにそこには自分達がいた森が見えた。よく耳を澄ますと、聞こえてきたのは狙撃隊の支持や罵声。恐らく血眼になって探しているのだろう。


「豹ちゃん、歩ける?」


「今は無理ぽ。数十分待ってもらえれば動けるにゃ」


豹助は掠れた声で答えを吐く。紫以奈は銃を下ろして豹助に寄り添うように、隣に座り込んだ。


「そもそも、10分も持つの?」


「あぁ、あの幻影は5分持つ。そもそも気付くのにも時間がかかるからにゃ。後はのんびり他の人を待とうにゃ」


「大丈夫かな‥みんな」


「さっき‥‥森林エリアの中央が霧に包まれてた。多分叶夢くん達が頑張ってるんだにゃ。んじゃ彼奴が頑張ってる間に俺はここでふんぞり返っておくにゃ」


二人は知らない。豹助がその身を削ったように、あの霧の向こうで叶夢がどんな行動をしていたのか。

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