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紅い死神の征魔戦争  作者: 雨色 A音
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23/83

第23話 渡された戦局

少し遅めになってしまい申し訳ないです!

もう少しハイペースを意識しながら頑張っていきます!

「おはよー。って‥あれ、誰もいない」


目を擦り、眠りから覚めた叶夢はリビングに出て他の隊員に挨拶をした。しかし誰もいないリビングから返される挨拶は無かった。


「そうか‥‥俺以外神座に呼ばれてるんだった‥‥ん?」


ふとテーブルの上に置かれた書き置きに目が向く。


『今日は夜にみんなでゲームをするらしいので、夕飯の18時までには帰ってきて下さい!

帰ってこなかったら‥‥わかりますよね?』


「何する気だコイツ‥‥まぁすぐ終わるだろうし‥‥無視でいいだろ」


着替えと洗顔を済ませ、赤いフードを着込むと部屋に鍵をかけて出ていった。


「あぁー!面倒くさ!あの野郎…」


とある土曜の昼。叶夢は愚痴を零しながら食堂に向かっていた。昨日、朔夜にサルベージ頼んだランク戦関係の地形と過去の戦闘データを受け取る約束をしていた為だ。


「集合は正午だっけ‥‥今は、12時3分。まぁたかが3分ぐらいなら怒られないだろ」


中央舎への連絡通路を通り、エレベーターに乗って一階の食堂に着くと、叶夢は欠伸をしながら朔夜を探した。


「やっと来たか‥‥‥その様子じゃ時間ギリギリまで寝てたみたいだが」


肩を叩かれ後ろを振り向くと、そこには白色の髪をしたレモン色の瞳をした青年。出雲(いずも) 朔夜(さくや)の姿があった。


「俺がお前との約束を守ったことがあったか?あと俺、今日は18時までしかいられない」


「そこまで時間は取らないさ。席は取ってある。他に呼んだ人間が待ってるから飯持って早く来い」


叶夢は他の人間というワードに足を止めた。


「他の人間? お前の小隊の奴らか?」


「違う。ランク戦や過酷な任務を乗り越えた10小隊以上の隊長達‥‥つまりここでの俺らの先輩がだ」


「何でそんなのが俺を‥‥あぁ、ざるそば大盛りで」


叶夢に心覚えは無かった。喧嘩を売った訳でもない。問題を起こしたわけでもない。何で突然自分が目に止まったのか。それを考えるのに必死だった。


「別に悪いことをしたからじゃない。この間の任務でイフリートを。さらに金丸を降(ぬだ)した奴の顔が気になってるだけだ」


「あぁ、思ったより何かやってたな俺」


叶夢は昼食兼朝食のざるそばを受け取り、朔夜について行った。


「やっと来たね、お疲れ様。朔夜隊長」


「すいません。こいつは昔から時間にルーズで‥‥ほら自己紹介しろって」


「え、あ、はい。31小隊隊長の刀堂(とうどう) 叶夢(かむい)です」


朔夜に肩を叩かれ、叶夢は小さく礼をする。

朔夜が案内した席にいたのは長い髪を後ろで一つにまとめた和装の麗人と藍色混じりの頭髪のピアスをつけた細目の青年だった。


「俺は金丸(かねまる) 翔真(しょうま)。第6小隊の隊長さ。この前の任務では当麻(とうま)がお世話になりました」


「あぁ‥‥身内ですか?」


「二つ違いの弟だよ。君のおかげでかなり大人しくなっちゃったから」


「それ、皮肉込めて言ってます?」


「さぁどうだろうね」


最初に細目の青年、翔真が叶夢に話しかけた。もう一人の和装の麗人は叶夢を気にもとめず、ただ目の前に山積みされた肉まんをほうばっていた。


「というか司馬君も飯ばっか食ってないで叶夢君に自己紹介しなって、反応困ってるでしょ」


「‥‥‥第8小隊隊長。司馬(しば) 龍之介(りゅうのすけ)。よろしく」


「よ、よろしくです」


「ごめんね。こいつとにかく口に何か入れてないと落ち着かないみたいで」


「は、はぁ‥‥」


叶夢は朔夜の隣の席につくと、つゆに薬味を入れて蕎麦を啜(すす)り始めた。


「そういえば白銀(しらがね)先輩は来てないんですね。」


「昨日は行くかもって言ってたんだけどね」


「‥‥あの人がそう言って来たことあったっけ」


「龍之介‥‥それは思ってても言っちゃあかん」


『白銀』という言葉が叶夢の心に引っかかる。聞き覚えがあった単語だったからだ。


「白銀って‥‥あの銀竜ですか?」


「よく知ってるね。白銀(しらがね) 王竜(おうりゅう)さんのこと」


白銀 王竜。昔、叶夢がゼルリッチの魔子にいた頃に何度か聞いた名前だった。戦ったことは無いが、戦った知り合いは口を揃えて


『奴は征魔士の強さでは収まってない。もはや竜と退治してる気分だった』


と言っていた。


「まさかいるんですか‥‥銀竜が‥‥」


「あぁ、いるよ。‥‥いて」


「変な事を吹き込まないで下さい。翔真先輩

」


「テヘッ」


翔真の出任せの言葉に、朔夜は突っ込みをいれた。


「いるのは息子の方だ」


「なんだ‥‥え、あいつ息子いたの!?」


「まぁ驚くのも無理はない。俺もつい最近知ったからな」


「‥‥会話の内容だけ聞いたら、中学の同窓会か何かと勘違いしそうだ」


「全くだよ‥‥」


他愛も無い会話を続けていた四人は、昼食を済ませると本題に入った。


「さて、叶夢。例のランク戦のデータだが‥‥」


「あぁ、朔夜くんが夜遅くまでサルベージ作業してた奴ってランク戦のやつだったの?」


翔真の発言に叶夢は朔夜の顔を見直す。

確かに朔夜の顔にはクマがあった。


「わざわざ俺の為にか?」


「暇だっただけだ。それに、この俺がここまでやってやったんだから絶対に勝てよ?」


「朔夜くん‥‥いつからそんなツンデレ属性を持ってたんだよ‥‥」


「翔真先輩‥‥頼みますから話をぼかすのはやめて下さい。話を戻すぞ」


翔真は笑い混じりに「はいはい」と言った。


「この島。どうやらタダの人工島じゃ無いみたいなんだ」


「ただの人工島じゃない? どういう事だ?」


朔夜はバッグからノートパソコンを立ち上げると、持ってきたUSBを差し込み、中のデータを見せた。


「これって‥‥島の全体図か」


「これだけじゃ説明不足か‥‥なら」


朔夜は画像のズームを解くと、島の全体図だけでなく周りの海域についてのデータを表した。


「なんだよ‥‥この海域」


「あぁ、この位置って」


「なるほど‥‥」


「龍之介先輩、翔真先輩が分かってくれたのはいいのですが、そこの後輩一人が理解してません」


朔夜は置いてけぼりになった叶夢に対するフォローをし、呆れながらも朔夜は別のデータを取り出した。その周辺であった戦闘のデータを見ていると、叶夢もやっと理解が追いついた。


「やけに多いな‥‥戦闘記録‥巣の発生率が妙に多い」


平均以上に戦闘の記録が多く、しかも殆どが大規模な戦闘であった。


「そうだ。ここは元から魔力の流れが複雑に絡み合ってるせいで巣が発生しやすい場所なんだ」


「何でそんな場所に島なんか‥‥」


「逆だよ叶夢くん。その場所に島を立てる理由があったんだ」


「え?」


翔真はニヤけて呟いた。朔夜は翔真にノートパソコンを渡すと、今度は島の内部についてのデータを開かせて叶夢に切り替えた画面を向けた。


「この島の地下900mにあるのは、半永久的に魔力の流れを抑制させる術式が施された『アリアドネ封魔石』の原石だよ」


「それって金丸(かねまる) 当麻(とうま)が使ってた」


アリアドネ封魔石とは、魔力を記憶する性質を持った石の事である。例えばアリアドネに直接触れて回復魔法などを放つと、それを記憶して魔力が供給され続ける限りアリアドネの周辺には回復魔法が放たれ続ける。


「そう。弟が戦鎚に仕込んでるのもそれだ」


「つまり、この人工島‥‥正式名称は楔島(くさびのしま)って言うんだが、楔島は元々その名の通りに魔族の巣を鎮める楔としての役割を果たしているって事なんだ」


「な、なるほど」


必要最低限の言葉しか発していなかった司馬が、補足説明でペラペラと雄弁に語った事に叶夢は驚いた。


「でもそれって、地上で使った魔法にも影響出ないのか?」


叶夢がふと頭に浮かんだ疑問に気づく。


「普通に考えて、そんな広範囲でアリアドネ封魔石なんか使ったら例え魔法が使えたとしても威力は確実に下がる」


「それでいいんだよ」


翔真はデータに目を通しながら答えた。


「あまり威力を出し過ぎて、人を殺しちゃったら元もこうもない無いからね」


「あぁ、それなら納得です‥‥」


「翔真先輩。あとは地形のデータを開いてください」


「はいはーい‥‥というかよくここまで正確にサルベージ出来たもんだね‥」


翔真はデータを地形についてのデータに変えると、朔夜にノートパソコンを返した。

朔夜もノートパソコンを受け取ると、写真と共に地形のデータを叶夢に見せた。

見せられた写真には深く生い茂った森や吊り橋のかかった渓谷。荒れ果てた廃都市などの統一感のないステージが写っていた。


「なるほど‥‥何も無い無人島ってわけじゃないんだな」


「俺も、予想以上にオブジェクトが多くてびっくりした。実践訓練の場所としてはほんとによく出来てる‥」


「びっくりしたって‥‥朔夜はランク戦やってないのか?」


「そりゃな。俺はお前が来る一週間前に丁度人数が足りてなかった第1小隊に配属されたから」


「お前それ先輩達に土下座して謝れよ」


「「プッ‥」」


叶夢は冷たく張り詰めた声で言い放つ。

翔真と龍之介はそのやりとりを見て笑いをこらえきれずに吹き出してしまった。


「朔夜君‥‥だから言ったんだよ‥そういう事はあんまり言いふらさない方がいいって」


「駄目だ‥‥分かりきってた事だけど‥お前の経緯は呆れるを通り越して笑いが止まらない」


本当に馬鹿げた話である。最下層のスタートの叶夢とは対照的に、朔夜はみんなにとってのゴール地点からスタートを切った。

最初に神座から、それを聞かされた司馬と翔真も最初は反発したが、たった数週間の朔夜の活躍を見ただけでその理由を飲み込んだ。


「まぁ、実際朔夜君が第1小隊隊長なのは納得が行くけど」


「廊下で聞いた反応‥‥一部じゃお前『脳筋ブレイン』や『血色悪い丸』とまで呼ばれてるからな?」


「そういやその変な名前を広めたやつを探してるんですが、何処の叶夢君か知りませんか?」


叶夢に対して敵意の目を向ける。

しかし目を向けられた叶夢は頭の上にクエスチョンマークを浮かべた。


「‥‥俺か!?」


「お前以外誰がいる」


「いやいや待て待て。俺はそんなことやるほど暇じゃ‥‥‥暇だな」


「よしコロシアム来い。今度は容赦しねえぞ」


殺気を放った朔夜が机を立ち、後ろを指さす。呆れの表情を隠せない龍之介と困惑している叶夢の目は笑いながら机を叩き続ける翔真に向いていた。


「出雲隊長。そちらの新人よりもこっちの翔真の方が怪しいんだが」


「あははは‥‥え? なんだって?」


「‥翔真先輩‥」


困惑の中から戻ってきた叶夢に笑みが戻る。

同時に朔夜の殺意はぴくりと止まる。


「いや‥‥まさかこうもあっさり叶夢くんと信じるとは‥よっぽど嫌ってるのか‥もしくは逆?」


「朔夜‥‥お前ここでもいじられキャラになってるんだな‥ぷっ‥あははははは!」


「‥‥」


翔真と叶夢は腹を抱えて過呼吸になるまで笑い声をあげた。

色白肌の朔夜の顔が照れで耳まで赤くなっていくのを見て、龍之介は静かに朔夜の肩を叩く。


「‥‥なぁ出雲。お前昔はどんな扱いだったんだ?」


「はぁ‥‥騙されやすい性格でいじられてました」


「以外だな」


「いや自覚はしてるんですけど‥‥性格上、人の意見を殆ど頭に入れてないお陰で、気が付いたらハメられるって言うのが多くて」


「なら周りにも気を配ればいいだろ?」


「そうなると自分の思考が疎かになるので」


「なるほど‥‥その狂気的な策略はその考え方から生まれるのか」


ー他人の意見を入れるな。自分の完璧にほころびが生まれる。ー

朔夜の頭の根底に打ち込まれているのはたった一つの簡単の思考。それは朔夜の天才的な思考を支える柱であり、自分に向けて撃った杭でもあった。


「そうでもなきゃ俺は追いつけないんですよ」


「追いつく? 誰に? 第1小隊の隊長の目の前を誰が走ってるっていうんだ?」


「決まってますよ。この叶夢(バカ)を含めたゼルリッチの魔子の奴らだ」


龍之介は理解した。朔夜は確かに流れに身を任せる性格上、騙されやすい。だがそれは自分の中身が空だからなのではなく、その逆。

彼はたとえ激流の中にいてもそれをものともせずに、ただ無心に一つの目的に依存する。


「なるほどな‥‥ただ、もう少し目は配ろうな」


「分かってますよ。それぐらい。つかお前らいつまで笑ってんだよ! ったく‥‥‥ブッ!」


呆れた朔夜は自分の昼食の蕎麦に手を伸ばしすすり始めた。しかしそれにも二人の魔の手が侵食していた。


「あはははははははははは! ザマァ! ねぇ今どんな気持ち!? あはははははははははは!」


「朔夜くんが自分語りしてる内に‥‥叶夢くんが‥‥ふふ‥」


朔夜のそばつゆの中には蕎麦に付いていきた薬味のわさびだけでなく叶夢の蕎麦に付いていたわさびも放り込まれていた。独特の辛味と共に、再び叶夢に対する憎悪が広がっていった。


「おい。叶夢」


「なんだよ?」


「実戦訓練だ。しつけてやるから地下コロシアム来い」


その態度は戻りかけた絆を一瞬で崩されたのを示すように、長野の時の裏切り者を処罰する目になっていた。


「いいぜ‥‥丁度肩慣らししておきたい所だったからな」


「決まりだな‥‥」


叶夢と朔夜は目の前のそばをものの数分で平らげ、急ぎ足で食器を戻すと食堂をあとにした。その光景に目を奪われていた翔真と龍之介を置いてけぼりに。


「俺らも行こっか。というか都合よくコロシアムが空いてるかな」


「それなら出雲が昨日の時点で予約済みだ。もとから実戦はやるつもりだったみたいだがな」


二人は急ぐこと無く自分たちの食器を戻すと、食堂を出て地下にあるコロシアムに向かうためにエレベーターに乗った。予め止まっていたエレベーターを見て龍之介は二人が階段を使っていったのを察した。


「あいつら階段使って行ったな」


「そういえば白銀くんに連絡入れとかないとね。場所コロシアムに移動してるって」


翔真は慣れた手つきでスマホで連絡を入れながら、残った右手でエレベーターのB4のボタンと共に閉まるボタンを押し、エレベーターを起動させた。役目を終えた右手がむず痒くなったのか、翔真は懐からナイフを取り出してペン回しのようにクルクルと回し始めた。ここまでに翔真はスマホから目を一度もずらしてはいなかった。


「相変わらず器用だな。左右の手で別々の作業とは‥」


「そう? 手が落ち着かないからやってただけで」


「普通の人間はそれをやるには何回も目で確認するんだぞ?」


「あっそ‥‥もう着いた見たいだよ」



エレベーターが地下四階に着いたのを知らせるベルを鳴らすと、エレベーターのドアが開く。翔真はスマホとナイフをそれぞれポケットにしまうとエレベーターを出た。


「第五コロシアムだったっけ」


「隣だ」


司馬は隣の『VI』と書かれたドアが自動で開くと、部屋の中に入って行き翔真もそれについていった。

中はコロシアムと言うよりは体育館に似たものであり、入ると右手に客席に繋がっている階段があった。真っ直ぐの道の先には既に鉄と鉄がぶつかり合う音が聞こえていた。


「もうやってるのか‥‥早いな」


「あはは‥‥積極的な後輩は嫌いじゃないよー」


階段を登ると、席が横12個縦6個の順に並んでいたが人は一人もおらず、翔真と司馬は最前列に座り魔子二人の戦いを見始めた。


「おらぁ!」


「ぐっ‥‥おりゃ!」


勝負の状況としては、ほぼ互角だった。どちらかがペースを掴むと一方が差を巻き返してペースを奪い取る。どちらも引くことなく攻撃を仕掛け続けていた。


「あれが叶夢の太刀か‥‥ふむ。なるほど。あれ程の力なら当麻を鎮めたのも納得が行くな」


「冷静な分析の中悪いけど調子に乗った僕の弟は弱過ぎて戦ってる相手がドン引くレベルだから‥‥まぁ病室のあの顔を見れば調子には乗ってなかった見たいだけどね」


ふと脳に浮かんだのは、三日前。病室のベッドで身体中に包帯を巻き、ボロボロにされて任務から帰ってきた金丸 当麻の姿だった。

翔真は半ば笑うつもりで御見舞の品を持って当麻の病室を訪れていた。


「随分と派手にやられたみたいじゃないか。ましてや31小隊ごときに」


「俺も油断したよ。まさか本気を出す前に俺がやられるなんて」


「まぁまぁ。何があったのかお兄ちゃんに言ってみなさい」


当麻は身体を起こし、翔真が剥いた林檎を食べながら話した。旅館での戦いを。刀堂 叶夢。及び紅い死神を相手にした事を。

翔真は笑うでもなく怒るでもなく真剣に話を聞いていた。


「ていう理由。あんなの、あの年の征魔士が出していい力じゃない。しかもあんな禍々しい魔力‥‥もはや魔族だ」


「ふーん‥‥」


普段は自己顕示欲に満ちた顔しか見せない当麻からは想像もつかない絶望し切った表情。超えられない壁に当たった顔。数日経った今でも鮮明に浮かんでいた。


「なるほど。当麻が言った事はあらかた間違ってないかもね」


「何がだ?」


「見てみなよ、朔夜君の動き」


司馬は言われるままに朔夜の動きを見た。

朔夜は叶夢の刀を右、左に避けつつ牽制のチャンスを伺っていた。すると叶夢が刀を降るペースをワンテンポ遅らせた。それを見逃さなかった朔夜はすかさず自らの槍を突き出す。だが叶夢は突き出された槍を掴むと、それを引っ張り引き寄せられた朔夜の身体を思いっきり殴った。

一連の動きを見ていて二人は気づく。


「今の見えたでしょ?」


「あの朔夜の動き‥‥明らかにやられに行ってた」


「あれが当麻の言ってた反転する眼(リバーサル・アイ)‥‥観察眼で意のままに操るとは聞いたけど‥‥ほんとにあれって観察眼なのかな?」


「と言うと?」


「あの動き方‥‥観察眼で説明がつかないんだよ。どちらかと言えば人の意識に入り込んでる感じ」


翔真が伝えようとしたことは龍之介にはイマイチ伝わらなかった。比喩が悪かったという訳では無い。翔真が叶夢の反転する眼を表現出来る言葉を持ち合わせていなかった。


「まぁ、やばいものだってのは伝わった」


「良かった。戦闘も終わったみたいだし」


二人が思考を巡らせてる間に、下の叶夢と朔夜の戦闘は終わった。戦いをやめた二人は息を荒あげながら上の観客席に上がってきた。


「おかえり。朔夜くん。叶夢くん」


「「疲れた‥‥」」


二人は客席に寝転び、端末を確認した。


「まだ10分しかやってねえのか」


「それで疲れてんのか? 叶夢、体力落ちたな」


「十分だと思うけど‥‥お」


唐突に後ろのドアのベルが鳴った。客人が来た合図だった。


「来た見たいだな」


龍之介は下まで降りると、ドアの前の二人をコロシアムに迎え入れた。


10小隊以上の紹介は次に回しますので

ご既読ありがとうございました!

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