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第3話 ①学校の地下には地球がいる

俺、赤兎烈は今日、学園長室に呼び出されていた。何でも昨日の事で、学園長先生直々に話があるそうなんだけど……。

色々あった昨日は、まだ嘘なのではないかと思うほどだ。ただ、学園長室にいた兄ちゃんだけが、昨日の事を証明しているんだなと感じさせた。そういえば、ガイアはどうしているのだろう。

「朝から呼び出してすまなかったね」

「い、いえ。2年2組の赤兎烈です」

「知っているよ。よろしく」

学園長先生は、笑顔で答えてくれた。直接会ってみてわかった事だけど、学園長先生は、年の割に体がガッチリしているし、握手をすると、俺と同じ場所にマメがあった。

「よく練習しているね」

「あ、ありがとうございます!」

「私も昔から剣道をやっていてね。友人に2人、凄く強い奴がいるんだ。彼らとは、勝った負けたを繰り返してね。まだ決着が着いていない」

「は、はい……」

「長官、本題を」

兄ちゃんが言ってくれなければ、もっと長い話になっていた気がする。そういえば、全校集会の時も、話が長かったな……。

「あぁそうだったね。赤兎君、昨日の事なんだけど……」

「は、はい」

「昨日は、怖い思いをさせたね」

「え、い、いえ……」

兄ちゃんを見ると、兄ちゃんは笑顔で頷いてくれた。昨日の事、俺には口止めしといて、兄ちゃんはいいのかよ。すると学園長先生は、今度は俺の目線まで腰を下げて小さな声で言った。

「でも君のお陰で、ガイアが守られた。仲良くしていてくれてありがとう」

「な、なんでガイアの事まで知ってるんですか?」

驚きのあまり、少し声が大きかったかもしれない。また兄ちゃんの方を見ても、笑顔で頷いているだけだし……。

「今日はその事で君を呼んだんだ。ちなみに赤兎君、今日は友達との約束はあるかい?」

「いえ、ないです」

「ではすまないが、今日1日、時間をくれないか?もしかしたら1日では足りないかもしれないんだが、その時は追々説明しよう」

「は、はぁ……」

「よし、じゃあこっちに来てくれ!」

キョトンとした俺を尻目に、学園長先生は少し楽しそうに俺の手を引き、大きな机の近くに連れていった。

「青山君もいいかね?」

「えぇ。大丈夫ですよ」

「では行くよ赤兎君、少し揺れるから机を持っておきなさい」

俺は言われた通り机に手をついた瞬間、学園長先生の指が鳴った

パチンっ!

マジシャンがする指パッチンと同じくらい賑やかな音だったんだけど、そんな余裕はすぐになくなった。ガタンと床が急に下がり、ジェットコースターが落ちるときみたいな感覚がした。

どうやら俺達3人は、机と一緒に下に行っているようだ。

バチン!

「痛った!」

急に背中を叩かれた。犯人は1人だ。

「兄ちゃん痛い!」

「どうした、へっぴり腰じゃないか」

見ると、本当に間抜けな格好をしているから恥ずかしい。それを兄ちゃんに見られて少し悔しかった。そうだ。これは壁のないエレベーターなんだ。全然怖くない!

「そうだ、いつもの烈になった」

俺が背筋を伸ばすと、兄ちゃんが肩を組んでくれた。

「なんか今日のお前は変だなって思ってたんだよ!怒られるって思ってビビってたのか?」

「いきなり学園長室に呼ばれたら誰だって緊張するだろ……」

「まぁな!!」

がっはっはと笑う兄ちゃんの横で、学園長先生も笑っていた。

「話には聞いていたが、仲がいいんだね。確か小さい頃からの知り合いなんだって?」

「そうなんですよ。小さい頃は兄ちゃん兄ちゃんって、どこでも付いてきましてね」

「やめろよ兄ちゃん。小さい頃の話だろ!」

確かに、小さい頃は格好いい兄ちゃんに憧れて、どこにいくにも付いていっていた。

「そうかそうか。そういえば、赤兎君のお兄さんはうちの高等部にいたね」

「は、はい……」

本当の兄貴の事を言われると、ついつい不機嫌な反応をしてしまう。あぁーあ。兄ちゃんが本当の兄貴だったらなー。

「なんだ、翔と喧嘩したのか?」

「してないよ……」

「確か、今は留学中だったかな?」

「なんだ、ヤキモチか」

「違っ……!」ガタン!!

エレベーターが下に着いたようだ。

「さぁ着いたよ。ようこそ、アースベースへ!!」

目の前のドアがゆっくりと開いていく。地下とは思えないまぶしい光が溢れてきて、俺は一瞬顔を隠してしまった。理事長先生と兄ちゃんが先に降りていく。

「ちょっ、待って………!」

エレベーターを飛び出した俺は、慣れていく目をゆっくりと開けた。すると、目の前にはとても広い空間が広がっていた。

「すげぇ……」

まず目にはいったのは、真ん中にそびえ立つ透明で大きな筒だ。中には光る大きな塊が、ふわふわと浮いているだけなんだけど、なんだか不思議な力を感じた。その周りには机が円を描くようにびっしりあって、パソコンが何台置いてある。それを操作する人もいっぱいいて、みんな忙しそうに作業していた。

まるで、秘密基地みたいだった。

「烈、こっちだ」

兄ちゃんが手招きをしている。急いでいくと、ある部屋の前に着いたんだけど、ドアの横には、「技術課」と書かれていた。

「ここだ」

兄ちゃんがドアを開けると、そこは小さな部屋で、机を囲んで、たくさんの人が話し合っていた。

「赤兎さん!」

一瞬俺が呼ばれたのかと思ったけど、理事長先生は別の方向を見ていた。

「はーい!」

あれ、聞き覚えのある声がする。

「と、父さん?!」

「ん……?やぁ烈、いらっしゃい!!」

会議の中心にいたのは、俺の父さんだった。

「えっ、何で、会社は?!」

「今まで言えなかったけど、ここが父さんの職場なんだ!!」

そういえば、父さんの仕事はあんまり聞いたことがなかった。機械の設計士だっていうのは母さんから聞いたことがあるけど。

「赤兎さん。息子さんが来てくれたよ」

「朝はいつも会えないので、変な感じがしますね」

「それは、こいつの寝坊のせいでしょ?」

「青山さん酷いなぁ。まあその通りかもしれないね」

父さんは、兄ちゃんや理事長先生と仲良く話している。

「父さん」

「あ、ごめんごめん。ガイアなら向こうにいるよ」

父さんが指差した方には、もうひとつドアがあった。

「父さんも後で行くから。長官、すいませんがよろしくお願いします」

学園長先生は軽く手を挙げると、父さんが指差したドアに向かっていった。俺も兄ちゃんに連れられていくのだが、仕事をする父さんが新鮮すぎて、なんだか見入ってしまった。

ガチャリと奥の部屋に入ると、また驚いてしまった。さっきの部屋とは全然違い、今度は大きなかまぼこみたいな広い部屋だったからだ。

そこには積まれたままの大きな荷物や、よくわからない大きな機械。車を運ぶキャリアカーまである。

「烈っ!」

「ガイアっ!」

その間に見えた小さく見えた姿が俺を呼ぶと、思わず叫び返してしまった。

車椅子に乗ったガイアが一生懸命タイヤを回し、近付いてくる。俺が走っていたほうが早いじゃないか!

駆け寄る俺に、ガイアも笑顔になった。

「昨日ぶりだな烈」

「体は大丈夫なのか?」

「長年動いてなかったから、ガタがきただけだ。手入れすれば、まだ動ける」

「なんだよ、おじいさんみたいじゃん!」

「そうだな。50億年は少し長かったかもしれない……」

……聞き間違いじゃないよな?

「ガイア、もういいのかい?」

「ありがとうございます獅子神長官。だいぶ動けるようになりました」

「よかった。では赤兎君も合わせて、これからの話をしよう。赤兎君、こっちへ」

学園長先生に呼ばれ、俺は部屋の隅にあるテーブルに呼ばれた。

みんなが席について、一息いれていると、カチャカチャと音が聞こえてきた。

「落とさないように……。落とさないように……」

今にも落としそなお盆の上にはカップが4つとボトルが1つ。俺より少し年上そうな女の人が運んできた。

「お茶お持ちしました……」

「俺、持ちます!」

「ありがとう、れっくん!」

俺がお盆ごと持ってあげると、女の人はとても喜んでいた。でもそんな事より……。

「れっくん……?」

輝ちゃんにしか呼ばれたことのないあだ名で呼ばれたことに、俺は驚いた。

「あの……」

「緑川さーーーん、ちょっといいーー!」

「はーーい、今いきます!じゃあれっくん、後は頼んだよ。じゃあね!」

何だったんだろう?緑川さんって言ってたな……。会ったことないはずなのに。

「烈、どうしたんだ?」

ぼぉっとしている俺を見て、ガイアが声を掛けてくれた。

「ん?あぁなんでもない。お茶です」

「すまないね。みんな、ここ最近忙しくてね」

「まぁ仕方ないですよ長官。まだ慣れてませんし」

「またみんなでパーティーがしたいね」

「そうですね」

「さっ、赤兎君もどうぞ」

俺はお盆を持ったまま座り、目の前のカップを持った。

「それはな、俺がアフリカで育てたコーヒーなんだ。味は保証する」

確かアフリカから送ってきていた手紙に書いていた気がする。飲むと、あんまり苦くなくて、本当においしかった。

「どうだ、美味しいだろ!」

「うん、おいしい」

「よし、これでコーヒーの実飲調査完了!ガイア、その燃料はどうだ!」

「うん、純度が高くて、いい感じだ。サトウキビの甘味がよく出ている」

「よし、サトウキビ燃料もオッケー!両方とも商品化待ったなしだ。ガッハッハッハ!!」

兄ちゃんは何をやっている人なんだ?

「さて、話をしたいんだが……」

「すいません。遅れました!!」

向こうから父さんが走ってやってきて、俺の横に座った。

「一段落着いたかい?」

「はい、例の計画も順調です」

「それはよかった。さて、後は……」

「皆さん、お揃いですか?」

今度は上から声が聞こえた。見ると、さっきの広い部屋の透明な筒の中にいた光る大きな玉が浮いていた。

「アース、君が最後だよ」

「おっと、これは失礼。赤兎烈君、初めまして。私はアース。この星の守護者です」

「守護者?」

「簡単に言うと、この星そのものです」

「は、初めまして」

みんなが上を向いていたので、この声は光る玉からしているようだ。

「さぁ、これからの話をしようかな」

ティーカップを置いた学園長先生は、一旦咳払いをしたあとに、ネクタイを少し直した。

「赤兎烈君、私たちと一緒に、この地球を救ってくれないか?」

俺の日常は、まだまだ変化していく。

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