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第2話②

俺は赤兎烈。龍神学園中等部に通う普通の2年生だ。昨日、俺は夢みたいな事を体験した。ガイアがロボットだったとか、知らない人が包丁を持って襲ってきたりだとか、解決したと思ったらガイアは動かなくなるし、兄ちゃんとも久しぶりに会って、ガイアを連れていくし……。

色々考えすぎて、全然眠れなかったけど、ただ、1つ思ったことがある。

俺は、ガイアの力になりたいってことだ。昨日のガイアを見て、あいつが面倒な事に巻き込まれてるのはわかった。俺は友達として、ガイアの力になりたい。いつも練習に付き合ってくれてるんだから、当然の事だと思う。

さぁて、起きようかな。いつもより一時間位早いけど、もう眠れる時間でもないし……。寝てない分は学校で寝ればいいかな。

ベットからゆっくりと起き上がって、伸びをした。あぁ、春だ!朝はやっぱり春が一番いいな。俺の部屋が寒くもないし暑くもない。

ていうのも、俺の家は龍魂寺っていう寺だ。大きな本堂の周りに、小さい建物がたくさんあるんだけど、その中の元々お客さんが泊まるところを俺の部屋にしてる。時々間違えて知らない人が入ってくるけど、もう気にしなくなった。

さてと、机に用意してくれている制服を持って、洗面所に向かう事にした。部屋の障子を開け、外の空気を感じながら縁を歩く。

箒の音がした。じいちゃんが日課の掃除をしているんだろう。いつもは俺が行くときには、すでに本堂でお経を読んでて、後ろ姿に行ってきますを言うだけだから、今日はちゃんと言えそうだ。

洗面所に行き顔を洗い、歯を磨く。髪?走ってたら直るからいいんだよ。

制服に着替えた俺は、みんながご飯を食べる居間にやって来た。畳じきの部屋に四角い大きな机とテレビ、隅には仏壇と箪笥。たぶん普通の和風の家はこんなもんだろうっていう感じだ。台所で母さんの背中が見える。俺の朝ごはんを作ってくれているようだ。

「~~~~~~♪」

鼻歌を歌っている。……少し恥ずかしい。

「おはよう」

「~~~~~♪」

あれ、聞こえてない?鼻歌のせいかな。

「おはよう!」

「え?………えっっっ?!れ、烈?!ど、どうしたの!!」

「いや、起きたんだけど?」

そんなに驚かなくても……。

「えっ!!もうそんな時間?!ドラマ始まってる?」

「まだ始まらないよ」

母さんは、俺がいった後に始まるドラマにハマっているらしい。学校から帰ると、いつもその話をしてきて、見てない俺でさえ、続きが気になっている。

「ドラマが始まらないのに、烈が起きてるの?えっ、私まだ夢の中なの?」

覚めろ覚めろと言いながら、自分の頬を叩く母さん。夢って……。俺だって早く起きるときくらい………。ない……こともない!たぶん。

「夢じゃないよ母さん。昨日寝れなくて、さっき起きただけ」

母さんは感情豊かな人だ。すぐ笑うし、すぐ泣くし、怒るときは鬼みたいだし、子供みたいに何でも楽しそうにする。さっきまで眉間に皺を寄せていた母さんだったが、俺の言葉ですぐに心配そうな顔になった。

「どうしたの烈?学校で何かあったの?」

目の前まで来て、じっと俺の目を見てくる。

「違うよ。学校は楽しいよ。実は……昨日さ……」

と言いかけて、俺は昨日約束したことを思い出した。

『誰にもこの事を話さないでほしい』

久しぶりに会った兄ちゃんに言われた事だ。理由は聞かなかったけど、そのうち説明してくれるらしい。

「昨日、何かあったの?」

「あ、いや。昨日……えっと。そう!!竹刀が折れちゃって!」

嘘は言ってない。襲われた時に尻餅をついて、その時に折れてしまったんだ。

「練習してたの?」

「そ、そうそう!テレビでよくあるじゃん!木に枝をぶら下げて、打ち込むやつ」

これも嘘じゃない。自分で作った装置で、昨日はそれもする予定だったから。これで誤魔化せたかな?

「本当に?」

「ホントだよ!」

「ふーん。怪我だけはないようにね。後、学校で何かあったらすぐ言うのよ」

母さんは心配性でもある。

「わかってるって。それより母さん、朝ごはん食べたい」

「あぁそうね。ちょっと座ってて」

軽く返事をした俺は、テレビをつけて待っていることにした。

そういえば、昨日の事ってニュースとかになってないのかな?警察っぽい人も昨日見た気がするし……。普段テレビ欄しか見ない新聞を開いてみる。新聞って字ばっかりだから嫌なんだよな……。捲っては探し、捲っては探し……。たぶんない。ニュースでも特にしてないし。

もしかして、あれは本当に夢だったのか……。

「何か、気になるニュースでもあったか?」

「あ、じいちゃん。おはよう」

「おはよう」

さっき言ってた挨拶ができた。じいちゃんはドスドスと入ってきて、自分の所に座った。

「あ、いや……。昨日この辺で何かなかったのかなぁって……」

じいちゃんは黙ってテレビを見ていた。普段はあんまり見ないのに……。

「健太郎に聞いてみろ」

「父さんに……?」

なんでここで父さんの名前が出たのかわからないけど、じいちゃんは何か知っているみたいだった。

「はい烈、朝ごはん」

ちょうど朝ごはんも出来たみたいで、母さんがお盆に乗せて運んできてくれた。ハムエッグだ!

「お義父さん。お茶でいいですか?」

「あぁ。ありがとう」

頼み終わると、じいちゃんはおもむろに立ち上がった。

「烈、やるとなったら、最後までやりきるんだぞ……」

「えっ、あ、うん。じいちゃん……!」

「烈、早く食べないと、早起きしたのに遅刻しちゃうわよ!」

時計を見ると、いつの間にか、寝過ごした時と同じ時間だ。

「いただきまーーす!!」

結局いつも通り朝ごはんを掻き込み、部屋に戻って鞄を取って家を出た。

俺が通う龍神学園は、家から徒歩10分、走れば5分の所にある私立の中高一貫校だ。なんでも俺が住んでる龍神町で、古くからある会社が運営してるらしくて、町の真ん中にある学校は、町のシンボルって言っていい。

敷地も広くて、中学校と高校の校舎があって、運動場と体育館が2ヶ所ずつ、畑、田んぼ、牛や豚を飼うところ、コンサート用のホール、森、公園、学食がえっと、6ヶ所?だっけ。とにかく広くて、1日では回れない広さだけど、中学校の校舎が校門の近くにあるから、俺はすごい助かってる。

さぁ着いた。靴箱に靴を入れて、2階に駆け登って、3つ並んだ教室の真ん中に入ろう……とした。

「赤兎君!」

聞き慣れた声が、教室に入ろうとする俺を呼び止めた。

「あ、輝ちゃん」

「こらっ!先生って言ってるでしょ!」

青山輝子先生、通称輝ちゃん。俺の担任の先生。じいちゃんの友達の孫で、小さい頃からよく知ってる人だ。

「もう少し余裕をもって行動しなさいっていつも言ってるでしょ!」

「今日は早く起きたんだよ!」

まるで母さんみたいな輝ちゃんだけど、まだ先生になって2年目。俺が中学に入ったのと同じ年に先生になったから、考えようによれば同級生だ。

「遅刻してないからいいけど……」

「それは大丈夫。俺は自分の足を信じてる!」

「そういうことじゃないの!」

おっと、チャイムが鳴ったぞ!

「輝ちゃん、授業始まるよ!」

「だから先生って……。じゃなくて赤兎君、ちょっと一緒に来てほしいの」

「えっ?」

輝ちゃんはドアから顔を入れ、委員長を呼ぶと、朝のホームルームを任せた。教室の中で、親友が心配そうに見ていたが、思い当たる事もないので、笑顔で手を振った。

「じゃあ行きましょう赤兎君」

そう言って輝ちゃんは、長い髪を靡かせて歩きだした。

輝ちゃんは、ちょこちょこ歩く。俺と同じくらいの大きさの癖に、大人ぶってヒールを履いているせいだ。俺が小さくみえるじゃんか。

「れっくん」

「学校でその呼び方はしないんじゃなかったっけ?」

輝ちゃんが学校以外で俺の事を呼ぶときに使うあだ名。まだ、俺のこと子供扱いして……。

「昨日の事、兄さんから聞いたわ……」

「えっ、輝ちゃんも会ったの?」

「会ったわよ……。もぅ、心配ばかりさせるんだから」

俺が昨日会った兄ちゃんというのは、輝ちゃんのお兄さんの政弘兄ちゃんの事だ。小さい頃からよく遊んでもらって、俺にとっては、本当の兄ちゃんみたいな存在だ。俺が小学校三年生の頃だったかな?突然、「世界を見たい!」って言って居なくなっちゃったんだ。みんなが心配してたけど、輝ちゃんによると、いつも笑顔でVサインをしている写真が送られてきていたそうだから何とかみんな待ててたって言ってた。

「れっくん。実は今日は、昨日の事で兄さんと学園長先生から話があるの」

「学園長先生も?!どういう事?」

「詳しくは、行けばわかると思う」

珍しく真面目な顔をしていた輝ちゃんを見ていると、急に輝ちゃんが止まって、俺の目をじっとみてきた。

「れっくん。大変だと思うけど、気持ちを強くもってね。もし不安な時は、私も力になるから!」

そんなこんなで、学園長室の前まで来た俺だが、ますます何で呼ばれたかわからなくなった

横の輝ちゃんを見たけど、頷くだけだし。

とりあえず、ノックをした。

「どうぞ」

低い声が聞こえた。

「失礼しまーーす……痛てっ!」

妙に重たいドアを開け、中を覗き混むと、輝ちゃんに背中を叩かれて、カッコ悪く入ることになった。学園長室は、見慣れない豪華な部屋だった。大きい机が奥にどぉんと置いてあって、手前には長い机がどぉんとあって、豪華な椅子がどぉんとある。

そして、奥の机で何かを書いている人と、政弘あんちゃんがいた。

机で何か書いてる人は、全校集会の時なんかしか見ないけど、それでも顔は覚えてる。真っ白な髭と真っ白な髪のじいちゃんくらいの人。確か名前は、獅子神だったかな?

見た目はほとんどライオンで、今見たら目付きもライオンだった。

「あっ……!」

「少し待ってくれたまえ……」

政弘兄ちゃんも笑顔で口の前に人差し指を立てていた。

「は、はいっ」

待つこと5分……。ようやく学園長先生の手が止まった。この間、俺には30分くらいに感じた。学園長先生は大きく伸びをすると、ようやく俺と目を合わせてくれた。

「あの……」

ガタッ!!

学園長先生が突然立ち上がるもんだから、俺は心臓が飛び出るかと思った。

驚く間もなく、学園長先生が早歩きで近づいてくる!

お、俺は、どうなってしまうんだろう……。

「君が赤兎君だね」

学園長先生は意外と大きいんだな……。顔も相まって妙に迫力がある。

「は、はい……!!」

俺はどうなってしまうんだろう。大事なことなので2回言ってしまった。


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