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第8話①心の強さ

「改めまして、ガイア兄さんのすぐ下の弟のヘルメスです」

兄さんに連れられて僕がやって来たのは、龍神町の地下にあるアースベースっていうところ。この町で一番大きな会社の社長さんが、ここの長官らしくて、町の開発と一緒にここも作ってしまったみたい。すごいアクティブな社長さんだな。でもその人が兄さんを助けてくれてるんだから感謝しないとね。

僕がお邪魔すると、たくさんの人が賑やかに迎えてくれた。ちなみに、僕が乗ってきた飛行機も兄さんといっしょに収容してもらった。

出迎えてくれた人の中に、一際目立つ人がいた。真っ白な髪と髭がライオンみたいになってるおじい……さんよりは若い人。

「ヘルメス君、アースベースの長官をやらせてもらってる獅子神だ。よろしく」

「兄さんがお世話になってます。それと、これからお世話になります」

やっぱり。この人が、最初に兄さんを助けようと協力してくれた人ね。しわくちゃな顔だけど、真っ直ぐな目をしてる。そして優しそう。この人がまとめてるなら信用できそうだと僕は思った。

「それから、休みのものもいるが職員のみんなだ」

「みんな、これからよろしくね~!」

集まってくれたみんなも、優しそうでよかった。よかったね兄さん。こんな地球に戻ってくれて。

そして僕は、噂の兄さんのパートナーを探した。赤い髪の元気な子はっと……。いた!

「君が、兄さんのパートナーだね!」

「赤兎烈です。よろしくお願いします」

「よろしくね~」

兄さんから少し聞いてたけど、見た目的には僕のすぐ下の弟の方が合ってると思った。でも、兄さんと合うってことは、それ以上に凄い子なんだろう。

すると兄さんは、僕の飛行機から降りてきた相棒と手を繋いでやってきた。

「ヘルメス、この子は?」

「あ、兄さんその人はね……」

『私はメルクリウス。水星の守護者です』

「こ、この子……失礼しました。この方が水星の……」

仕方ない。初めて見たら誰だってそう言うよ。だって、僕の相棒、もとい水星の守護者は、子供位の背の高さで、男の子なのか女の子なのかわからない声をしていたからだ。

『君がアテナを救ってくれたロボットですか?』

「はい、ガイアと申します」

年齢はもちろん相棒のほうが大きいんだけど、背丈は兄さんのほうが大きいから少し笑えた。

「ガイア、すまないがそこに誰かいるのかい?私達には見えないんだが……」

「あ、そうでした。えっと、どうしたらいいですかね?」

『私に聞かないでください』

兄さんが柄にもなく慌てている。そうか、兄さんがブレイブさんからもらった力があるから僕らは見えているけど、普通の人間には当然見えないよね。

烈君。目を細めるとか、そういうんじゃないんだよ?

「そうだな~。何か使ってない機械とかありますか?」

見えなければ、形を作ってあげればいいと僕は思った。

すると、烈君によく似た白衣を着た男性が、そこらじゅうにあった段ボールの中を漁って、色々持ってきてくれた。これなら何とか出来そうだ。

「ありがとう!ちょっと待ってね~」

あぁ、材料があるってのは幸せだ。水星では、地中にある金属を太陽光で溶かして、型枠に流し込んで部品を創ってたから本当に便利。まあ光熱費はいらないんだけどね。

「はい、幸せの青い鳥の完成~!」

時間が勿体ないから、掌に乗るくらいの鳥を創ってみた。声も出せるし、飛べるものだ。まあまあの出来だな。

「……」

あれっ、と僕は周りを見渡した。周りの音が無くなって、みんなが帰ったのかと思ったからだ。でもみんないる。

「えっ、どうしたの?」

「い、今、どうやって創ったんですか?」

僕に材料を持ってきてくれた人が、信じられないものでも見るように、掌の上の鳥を見ていた。

「どうって……」

僕は余った材料を使って、もう一羽青い鳥を創った。

「こうだよ?」

もう一羽創ってみた。今度はみんながざわついている。ふと、悪いことでもしたかと兄さんを見たら、笑顔でみんなに言ってくれた。

「ヘルメスは、とても手先が特に器用なんです。すごいですよね?健太郎さん、たぶんヘルメスは博士と同じ位の技術の持ち主です。色々勉強になると思いますよ」

確かに僕は父さんに一番創る事の楽しさを教えてもらった気がする。でもそれは、兄さんがいつも父さんの近くにいて、兄さんが父さんの創る姿が好きだって言ってたからなんだけどね。

あれ、そういえば……。

「健太郎、さん?」

横にいる烈君によく似た人の名前を兄さんは呼んだんだよね?

「あ、ごめんね。私は赤兎健太郎。烈の父親でアースベース技術課の課長だよ」

やっぱり烈君のお父さんだった。特に目が似てる。でも名前が同じだなんて、なんだか奇遇だなと思った。

「話しても大丈夫ですか?」

ぼぉっとしていると、掌の上の青い鳥から相棒の声が聞こえた。

「あ、ごめんごめん。いいよ~」

「では、私はメルクリウス。水星の守護者です。50億年前に突然やって来た地球のロボットに自分の星で散々濃き使われた挙げ句、地球の危機を救うために手伝えと言われやって来ました」

散々な言われようだけど、一先ずみんな笑ってくれたので良しとしよう。そして、青い鳥は獅子神さんの肩に飛んでいった。

「というのは冗談で、私も地球、そしてアテナを助けるためにやって来ました。ヘルメス共々、これからお世話になりますので、よろしくお願いします」

みんなが拍手をしてくれた。拍手が鳴る中、相棒は獅子神さんに耳打ちをしていた。そういえば少し話したいことがあると言っていたことだろうか?

話を聞いた獅子神さんは、拍手が鳴り終わるのを待って、話し出した。

「ではみんな、歓迎会はまた後日やるとして、仕事に戻ろう」

みんな忙しいだろうに、集まってくれてとっても嬉しかった。今日会えなかった人とも、これから仲良くしたいと思った。

「烈君もありがとう。今日はもう帰るといい」

「えっ、俺はまだ……」

相棒の話は、烈君にとっては、まだ難しいようだ。僕も烈君と話したかったけど、これからいっぱい話せるからいいよね。

「来週のテストは大丈夫かい?」

「か、帰って勉強します!!」

「よろしい」

そうして一旦解散となり、烈君も渋々帰っていくと、残ったのは僕と相棒、兄さん、獅子神さん、烈君のお父さん、あと技術課の緑川繁雄さんって人。場所を変えて、会議室のような所にみんなが集まった。

すると、その会議室にもう一人?一塊がやって来た。ふわふわと漂う、光の塊。もしかしてこれが。

「メルクリウスさん、ヘルメスさん。初めまして。私の名前はアース。地球の守護者代行をさせてもらってます」

兄さんの意思を半分こして生み出した人格。兄さんが自分だけの意見だけで地球を創り直さないようにと思って創ったものらしい。

「アース……さん!よろしくね~」

「初めましてアース。アテナの代わりによく、この星を見守っていますね。もうあなたに任せてもいいかもしれませんね」

「いえっ、そうはいきません……!」

僕の相棒の冗談への反応は、少し兄さんに似ていた。

「それで、話というのは何でしょう、メルクリウスさん」

さっきとは違って、獅子神さんは凄い真剣な顔をしていた。

「私が来た本当の理由についてです。それについて、聞いておきたい事があります」

あぁ、その事かと理解したと同時に、それなら心配ないとも僕は思った。

「どうぞ」

「あなた達は、これからの地球をどうするつもりですか?」

わざとトゲのあるような言い方で、僕の相棒は、今の人間たちに言った。

当然、その場にいた大人達もわかっているみたいで、獅子神さんが代表して口を開いた。

「私は……」

さて、どんな話が出るのか楽しみにしていたその時だった。

「はい、大丈夫です」

失礼でしょと言わんばかりの話の止め方に、せっかくの会議室の空気が台無しになった。まぁいいけどね。ちなみに言っておくと、僕の相棒は星の意思だから、人間位の思っている事なんて、すぐにわかってしまう。じゃあ烈君を帰さなくてよかったんじゃない?

「あなたの考えている事はわかりました。私もそうなればいいと思います。そして、忠告です。アテナを2度と泣かせないでください。忠告を聞かない場合は、今度は太陽系が人類の敵になります」

「何言ってんの。兄さんが創り変えた世界だよ?昔みたいな事する人なんているわけないじゃん!」

父さんと同じように、アテナさんも今はないから、相棒の気持ちはよくわかる。だけど僕は、兄さんの思いが今の人間がちゃんと伝わっていることを信じている。

「わかりました。アースベース代表として、その言葉を胸に、これからの未来を創っていくと誓います」

「頼みましたよ」

それから僕たちは、今の地球について説明を受けた。そして、僕の乗ってきた飛行機の整備もお願いして話は終わった。兄さんがこの後、アースベースを案内してくれるらしい。

「兄さん、そういえば体、どうしたの?」

「空気に触れていると、不具合が起こってしまってな。今は健太郎さん達に治してもらっている」

「……いいの?」

「私の存在が、過去の世界でどういう存在だったかは、みんなわかっている。それを踏まえて、健太郎さんは私を治したいと言ってくれたんだ。大丈夫さ」

「そっか……。変わってくれたんだね」

「いつまでも、そうであってほしいと願っているよ」



ーーーーーーーー



俺は生まれ変わった。一度は機械人形に負けた俺だが、リガース様が俺を必要としてくれた。こんなに幸せな事はない。ドラッグがしやがった事も、少しは許せた。

「リガース様。参りマしタ」

俺は、黒曜石の椅子に座っているリガース様に向かい、膝をついて挨拶した。ほかの椅子にもドラッグ以外の仲間が座っている。

「座れ」

俺は今の自分には大きすぎる位の椅子に座った。

「……少し待て」

リガース様は、足をコツンと鳴らした。すると、俺の椅子が形を変え始め、丁度いい大きさになった。

「アりガとうごザいマす」

「不格好な私の部下はいらないからな。報告を聞こう」

それから俺は、町に行ったときの話、機械人形に遭遇したときの話、デカくなった機械人形の話、そして、俺が負けるまでの報告をした。

「ご苦労だった」

「リガース様、パワードの腕を破壊した力とは何なのでしょう?」

俺が一番気になったことを、アダムが言いやがった。

「パワード、どの様な力だ?」

「後で考えてみタのですガ、機械人形と話しているときと同じ気持ちになりマしタ」

すると、リガース様は少し考え、怒りに溢れる自らの力を押さえ込むように話始めた。

「機械人形の力か……」

「それハ、どういうことでしょう?」

「機械人形が人間を制御しているのだ」

俺たちは絶句した。

「で、ですが、私が人間を操ったときは……」

アダムが少し慌てながら言った。もしそれを報告していれば、俺の腕は無くならなかったし、機械人形にも勝ててたからだ。

「少し調査が足らなかったなアダム。……機械人形は、私達を封印した後に、生物に私達の力に反発する力を、今の人間につけたのだ」

絶対に許せねぇ事だと思った。あの時俺に言った救うという言葉は、奴隷になれといっているようなものだからだ。

「だがアダム、お前の力は人の内部から少しずつ侵食する力。力が弱かった事もあって、パワードのようにならなかったのかもしれない」

「申し訳ありません……」

「アの時の俺は、本気で人間を殺そうと思っていマしタ。腕にも力ガ入り、力ガ少し漏れてしマっていタカもしれマせん」

「パワードが身をもって調べてくれた情報だ。皆、有効に使え」

俺以外が返事をした。

「リガース様、ドラッグハ、今どこに……」

「どうした、復讐でもするのか?」

半分当たりだ。だがもう半分は、あいつの事だろうから、いつも通り半分笑いながら座っていると思ったからだ。

「あいつは、機械人形を倒すまで帰ってこない」

「と、言うと……?」

「私が与えた力に少し細工をした。奴は今、機械人形を倒す事だけに集中している。ここに帰ってくる余裕もない」

リガース様が少し笑った。だがそれは、俺達にとって恐怖以外の何物でもなかった。

「奴の力は、ここに居ては発揮できない力だ。もう数日もすれば、持っている薬も無くなる。そこからが、奴の本領発揮だ」

「ですガ、迂闊に人間を使えバ、俺のように……!」

「あいつの力はアダムと少し似ている。中途半端な脳味噌でもそれぐらいは考えられる筈だ」

「し、失礼しマしタ……!」

恐ろしい存在だと改めて実感した。この方に逆らってはいけない。この方を失望させてはいけない。俺は偶然生き残っただけなのだ。

だから次は、絶対に機械人形を壊す!

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