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第6話②

僕が地上から帰ってくると、大きな机にはリガース様がいらっしゃり、ついでにドラッグもいた。

「よく戻った」

「リガース様、こちらでございます」

僕は手に持っていた小さな箱を渡すと、リガース様は「こんなものか」と言い、軽く投げて遊んだ。

「ドラッグ……」

「は、はいリガース様!」

「これが何だかわかるか?」

「い、いえ……」

小さな箱は事前にリガース様から、パワードが負けたら探してこいと言われたものだ。

「パワードが負けたな……」

「……はい」

「何故、最後にパワードの動きが止まったのだろうな?」

ドラッグは黙っていた。

「あれも機械人形の力だったのか?」

ドラッグは答えられなかった。

「あと少しで機械人形が倒せたのに、あの力は何だったのだろうな?」

ドラッグは俯き、脚を小刻みに震わせていた。

「私の邪魔をする者は、機械人形だけ、なのだろうか?」

「私は決して!!」

「何故、お前が動揺しているのだ?」

自業自得だ。私は少し離れて楽しむとしよう。

「これはパワードの核だ」

ドラッグの顔が驚きと恐怖に変わった。

「パワードは、戦争の時に体を改造されて送り出された兵士の魂を集めたものだ。だから体の半分以上は機械で、自分が傷ついても、強化することに喜びを感じていた。そんな奴等の行き着く果てがこれだ。こんなちっぽけな入れ物に意識だけをいれる。そうすることで、体は自由に改造できるし、自分という意識は保てる。馬鹿が頭を使って出した答えだが、今は誉めてやりたい。何せ、最後に動かなくなった理由を答えてくれるんだからな」

リガース様の手に力が宿った。

「さぁ、教えてくれパワード。最後に誰が邪魔をしたのかを……!!」

その瞬間、ドラッグが胸元に手を入れたのを、僕は見逃さなかった。

「離せアダム!!」

「リガース様の前で見苦しい真似はやめろ」

「ドラッグ」

名前を呼ばれた瞬間、ドラッグは床に倒れるように手をつき、創造主のもとへと這っていった。

「リガース様ぁ!!お許しを!!お許しを!!」

無様な姿を晒すドラッグに、リガース様は優しい微笑みを向けていた。

「ドラッグ、知恵を貸せ。次は誰が機械人形を、殺しにいくのかを」

「私が!私が行きます!行かせてください!!」

「よし、ではお前にも力をやろう。存分に使うがいい」

「あり、ありがとうございます!!!このドラッグ、必ずやリガース様の前に機械人形の首を持って帰ってきます!」

そう言うと、ドラッグは直ぐ様闇の中に消えてしまった。

「リガース様、よろしいのですか?」

「もう、逆らう者はいないな?」

「やる気のない奴を除けば、居よう筈がありません」

「ファットか……。あいつは別に使い道がある。いずれな」

これがリガース様の思い描いたシナリオ。素晴らしい。流石は僕達の父親だと素直に思った。

「さて、パワードを戻さなければ」

リガース様は改めて力を込めると、まるでゴミでも捨てるように後ろに放り投げた。闇の中から鼓動が聞こえる。床、いや島全体が少し引っ張られ、ぐちゅぐちゅと何かが生まれる音がした。

「リガース様、アりガとうごザいマす」

「ご苦労だった」

「いえ、期待に応えラれず、申し訳アりマせん」

パワードとは思えないほど改まった声に、顔には出さなかったが正直、驚いていた。

「ドラッグはもういいな?」

「リガース様のお手を煩ワせてしマいマしタ」

「いや、構わない。パワード、その体、もう代えはないぞ」

「2度と負けマせん!」

「いい意気だ。下がれ、力を戻せ」

「ハっ!!……アダム、すマナカっタ」

そうしてパワードも闇の中に消えていった。

「アダム、ドラッグは勝てると思うか?」

「今の機械人形であれば必ず勝てます。しかし……」

「ほかの機械人形か?」

「はい、確か機械人形は他にも5体いたはずです。全て揃ったときが厄介かと」

「そうだな。流石はアダムだ」

リガース様に褒められた事が、とても嬉しかった。




ーーーーーーーーー



ここは、太陽系第一惑星「水星」。

僕の住む星は、お水がこんこんと湧くスーパーウォータープラネット。だと思っていた。

みんな知ってる?水星っていうのは太陽から一番近くにある星なんだけど、それってものすごい過酷だってことなんだ。

まず気温ね。太陽の直射日光バリバリで、めっちゃ暑いくせに、空気がないから、日光当たってないところはめっちゃ寒い。暑さはなんていうか……。溶ける……熔ける……融ける。うん融ける。

寒さだって凍るっていうか……動きたくても、動けない感じ。だから今は、半分熱くて、半分冷たいところで過ごしています。

あと地面ね。クレーターがいっぱいで凸凹。穴掘ろうと思ったけど地面が硬くてね。まぁ星だからしょうがないよね。だから今は、クレーターの壁に穴を掘って生活してるんだ。

えっ?何でいるのかって?

それはね、僕がここに来たのがえっと……50億年前くらい。兄さん……、えっと、僕は6人兄弟なんだけど、僕は次男でね。僕の兄さんっていうと、僕たち兄弟の一番上のお兄ちゃんってことになるんだけどね。

その兄さんがね。すごいんだよ。その時ピンチだった地球を救うために、地球を創り変えるって言いだしてね。

本当にやっちゃうんだからすごいよね。兄さんはいつもかっこよかったけど、その何倍も何倍もかっこよく見えた。

で、その力に巻き込まれちゃいけないから、僕たちも少し力をもらってそれぞれ自分の名前に関連する星に向かったんだ。

その後も少し連絡はとっていたんだけど、今はこの星で悠々自適なサバイバル生活。お父さんが帰ってくるまでのね。

さぁて。今日は何が起こるかな?大抵のことは対応出来るようになったんだよね。

「ねぇ……」

ピピピピ!!

「わぁっ!!」

原始人が初めて目覚まし時計を聞いた気持ちがよくわかった……。

「びっくりしたな、もうっ!!」

この音は、僕たち兄弟が連絡するときに鳴る呼び出し音。最近ほとんど使ってなかったから余計驚いたよ。ちなみに、僕がハブ……ヘビじゃないよ。僕が端末を仕切ってるから、誰かと話したいときには、僕が繋いであげてるんだ。

さって、誰からだろう?

「兄さんからだ。もしもーーし」

「ヘルメス、今大丈夫か?」

何だが兄さんの声が疲れてる。何かあったのかな?

「大丈夫だよ。どうしたの?」

「頼みたいことがあるんだ」

「僕らが兄さんの頼みなら、何でも聞っきましょう!!」

「あぁ、実は……」

ここからが兄さんが地球を創り変えた後の話。創り変えた時に浄化できなかった魂があったのは聞いた。その後、何もなかったらいいね。と言ったのも覚えてる。

今兄さんは、その浄化できなかった魂と戦っている。昨日戦ったやつなんか、すごく強くて、今兄さんはボロボロだって言うじゃないか。

「大丈夫なの!?」

「協力してくれている人達に今、治してもらってるから大丈夫だ」

兄さんは正しい事をしたんだ。それが今の人間に伝わってよかった。ていうか今、兄さんは動けないとなると……。

「じゃあ頼みたいことって……」

「地球に来て欲しいん……」

「了解っ!!」

嬉し過ぎて食いぎみになっちゃったよ。待ってました!兄さんは僕達に心配かけないように、いつも大丈夫って、来なくていいって言ってたのに。

「き、来てくれるのか?」

「もちろんだよ!!みんな呼べばいい?」

「そうして欲しいんだが、みんな来てくれるだろうか?」

「みんな会いたいに決まってるでしょ!連絡したら僕はすぐ出るよ。いつでも帰れるように準備してたし」

「準備もしてくれてたのか。ありがとう」

「へへへ~♪」

僕は兄さんに追い付くために、この星で頑張ってたんだよ。いつか兄さんが僕に頼ってくれるように。兄さんを助けたかったんだ。

「ごめん、こんな事で通信してしまって」

「何で謝るの?じゃあすぐ行くからね。つのる話はその時にね!」

「……ありがとう」

通信を切った僕はウキウキで弟達に連絡をとった。まず僕のすぐ下の弟。

「もしもーーし。えっ?何って?兄さんがピンチだから地球に集合!なに、えぇ?!準備してないの?もぉ、何してたんだよぉ。一番近いんだからさぁ。準備しておかないと!はいはい。じゃあよろしくね」

怒りっぽいのは相変わらずだな。次にその下の双子。

「もしもーーし。二人ともいる?えっ?なんで?ふんふん。で、なんで喧嘩したの?ふんふん。いや、兄さんから貰った力で何やってるんだよ……。ちょうどいいや。兄さんが呼んでるから地球においで。話聞くから。兄ちゃん先に行くからね。来るときに喧嘩して何か壊さないようにね。はーい」

なんであんなに仲が良かったのに喧嘩してるんだ?それに喧嘩がパワフルすぎるよ……。

よし、最後に末の弟。大丈夫かなあの子は?それに冥王星だから通信繋がりにくいんだよな。

プルルルル。プルルルル。

ん?なんで電話のコール音なんだ?機種変した?

「あ、もしもーーし。今何してるの?うんうん。機種変した?あぁ。通信機能分けたのね。了解了解。それより兄さんが呼んでるんだけど……。うん。……大丈夫?いや、そうじゃなくて。うん。えっと、兄ちゃん先に行くし、みんなも来るからゆっくりで大丈夫だよ。うん。本当に大丈夫?まぁそれはわかってるけど。うん。じゃあ待ってる……」

末の弟は少し人間に対して思うことがあってね。いい子なんだよ?でも父さんの事もあったし、やっぱりね。

「行くんですか?」

「うん、もちろん。一緒に来てくれる?」

「アテナが心配ですからね。同じ太陽系の意思として」

「優しいねぇ!」

「それに、太陽の事でそろそろ話さなくてはならないことがありますから」

彼女は、僕が水星に来たときに出会った……人?兄さんの力で見えるようになったらしい。この星で生きる方法は、大抵彼女から聞いた。そのお陰で、僕はサバイバル生活をしながら準備ができたんだ。

兄さんのために準備したもの。それが、この星の地下にある。僕はそれを使って、兄さんを助けるんだ!

「よし、じゃあ行こう!」

アテンションプリーズ、アテンションプリーズ。当機は水星発、地球行きのジェット機でございます。シートベルトをお締めください。超高速で参ります!


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