第六話
熊おっさんは色々話をしてくれた。
時間待ちもあり、朝のこの時間はおっさんも忙しくないらしい。
それでも出自を誤魔化しながらの話はなかなかに難しい。
この世界の、この町の言葉は英語だった。
そして通貨はポンド。
これはもうこの国は英国からの転生者か転移者が作った国でいいだろう。
通貨の基本は一ポンド。補助通貨としてペンスがあるという。ペンスは名前こそ同じだが、各領主によって発行されその領地内でしか使えないという。
だからペンスの前に領地の名前を付けることもあるという。例えばスミスペンスとか。
一ポンドは銅貨一枚。銅貨十枚で銀貨一枚。銀貨十枚で金貨一枚。金貨一枚は百ポンドだ。ペンスは十枚で一ポンド。ペンスはなんとお札らしい。
価値的には一般的な店の食事が五十ペンスほど、宿屋が五ポンドほどから。給料はこの国では週払いが一般的で、大体四十ポンド程度らしい。
大体一ペンスは百円くらいで一ポンドは千円くらいだろうか。金貨はおよそ一枚十万円だ。
最近純金貨というものができたらしい。一枚一枚箱に入っていてとても大きいらしい。誰も見たものがいないらしいが。
ちなみに狩人は免許制らしい。領主から許可をもらい受け持ちの狩場が決まっているようだ。
大体が罠猟で知らない人が軽い気持ちで森に入るととても危険らしい。
狩りの権利は売っていて、買えば誰でも獲物を得ることができるが、先ほどの罠があったり、そもそも動物たちもすぐ逃げるのでなかなか成功するものではない。
またこの世界の動物は地球よりも大きく、狩ること自体難しいのと、運ぶのも大変らしい。
ちなみに聞いてみたところマジックバックやアイテムボックスはないらしい。
やはりそんな物理法則を無視したようなものは現実にはあり得ない。
「おお、あんちゃん計算できたぞ。」
熊のおっさんが仲間から書類を受け取りながら話しかけてくる。
「はい。」
いくらになるだろう。まだこちらで定職もなく稼ぐ当てもないから出来るだけ貰えると有り難い。
「うーんと、二千ポンド、金貨二十枚だな。それでいいか?」
おお、金貨二十枚!日本円にすると二百万円くらいか。命の危険を思うと安い気もするが、純粋に二百万はうれしい。
「そんなに貰えるんですか。ありがとうございます。」
思わず頭が下がっちゃう。
「ああ、税金と解体料と一日の権利金も引いてあるからまるまる二十枚だな。あと金も出来たところであんちゃん風呂に行けよ。随分匂うぞ。」
え?
「……匂いますか?」
「ああ。すごい汗臭い。ハンターギルドを出てまっすぐ道沿いに行くと温泉があるから入ってくるといい。」
なんと、温泉もあるのか。日本人としてそれは行かねば。
「わかりました。」
俺は金貨二十枚を受け取ると挨拶をしてギルドを出た。
時刻は暫定午前十時。風呂屋はこの時間からやってるのだろうか。
言われた通り、まっすぐ道を歩いていく。
「あれで決まりだな。おい、スミス家に報告しろ。」
熊のおっさんは仲間に指示をした。