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福原遷都と信濃平定

 6月に入り平清盛は約四百年続いた平安京を捨て、炎天下のなか福原への遷都を強行しました。


 以仁王の謀反を鎮圧した直後の治承四年五月末、清盛は安徳天皇・後白河法皇・高倉上皇の福原遷行を発表しており、この時点ではこの遷行が“遷都”であるとは公表されておらず、そういう噂はあったものの、なぜ福原へ行くのかということはまだ誰も知らなかったのです。


 しかし、六月二日には天皇や法皇、上皇が福原に入り、同十一日には内裏となった頼盛の邸で遷都についての議定が開かれました。


 これにより、ようやく人々はこれが遷都であったことを知るのです。


 以仁王をかくまった園城寺、興福寺を始め延暦寺も今回は謀反に加わらなかったものの、平家に反旗を翻すか分からないという状況であり、有力な寺院勢力に挟まれた京都ではいざというときの防衛もままならないですからね。


 ですが、清盛が遷都によってめざしたものは、皇族や公家などの古い制法の束縛を取り払い、平家が新しい政治を始めるためでもあったようです。


 そんなかで我々は6月中旬に入り戦の準備をし終え、私達はまず各豪族に対して、以下の約定書を発行したのです。


 一つ.郡衙に残されていた年貢米や武具は没収し木曽軍の糧秣、武具とする.

 一つ.京都からやってきた平氏側の役人は全員逮捕し牢へ入れる.

 一つ.木曽軍に敵対した武士の領地は没収する.

 一つ.木曽軍に参加した者は領地を安堵する。

 また功績を上げた者には敵対したものより没収した領地を分け与える.

 

 また敵兵より具足や武具を剥ぎ取る行為は許可するが、農民の蔵や寺社の蔵からの略奪、村人への乱暴狼藉は禁止しました。


 ただでさえ去年の冷害で米の備蓄が少ないところですから、これ以上農民から食料を奪うようなことをさせては支持を失います。


 それに、基本食料や武具は役所から奪ったものでまかないますので、略奪や乱暴狼藉の必要はありませんからね。


 そして、木曽一党は佐久党と諏訪党の連合軍と別れ、善光寺を目指しました。


 我々の味方である栗田寺別当大法師範覚(はんかく)及び村山義直(よしなお)の軍と合流し、笠原平五頼直かさはらへいごよりなおを討ち果たさなくてはなりません。


 私達の最初の本格的な戦は国府から善光寺へ向かう道筋の、平家の荘園である会田御厨(東筑摩郡四賀村)・麻績御厨(東筑摩郡麻績村)で吉田安藤馬允・千葉三郎との間で行われました。


 そして、我々はどちらの戦いでも勝利したのです。


 練度でも兵数でも圧倒している状態では当然ではありますが。


 そして善光寺裏の市村で我々と笠原がぶつかります。


 私達の軍は義仲様と私を中央、二人の兄が左右の両翼で鶴翼で陣を敷き、笠原平吾頼直と対峙しました。


 笠原平吾頼直の兵は約300、こちらは500。


 私は愛馬春風の馬上で義仲様の号令を持ちました。


「よし、皆のものかかれ!」


 義仲様の号令を聞き私は馬をはしらせました。


「やあやあ、遠からんものは音にも聞け、近からんものはよって目にも見よ。

 われこそは最勝王より平氏追悼の勅を受け、旗揚げした源氏の御曹司木曽次郎六位蔵人源義仲殿の乳母子にして便女、木曽中三信濃権守兼遠が娘の巴申す女武者なり。

 我と思わんものはかかってこい!」


 そう言って敵の陣中へ切り込み赤く輝く方天画戟をビュンビュンと振り回し逃げ惑う敵兵を斬り殺しなぎ倒し突き殺しながら敵陣を切り込んでいきます。


「あれは女夜叉だ!」


「いや女鬼だ」


「ひいぃい逃げろ」


 もともと戦力差のあった戦いで敵兵が我先にと逃げていきます。


 決して私の形相が鬼のようであったからではないはずです。


「義経殿、追撃を!」


「承知!」


 軽装の義経の弓騎兵が逃げていく笠原の騎馬兵を後ろよりおって次々に射落としていきました。


 そして勝鬨が上がりました。


「敵将笠原平吾頼直を山本義経が討ち取ったり!」


 追いついた義経が敵の大将を射落としたようです。


 軽装騎兵の機動力は侮れませんね。


 まあ正面からぶつかるような場面には危なくて使えませんが。


 こうして市村の合戦は我々の勝利に終わり、宇治平等院合戦で討たれた義仲様の兄上たちの仇討ちも無事行えたのでした。


 私達が依田城に戻りしばらくすると佐久党と諏訪党の連合軍も戻り、無事に信濃は平定できたのでした。

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