表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/109

地獄の訓練仕上げ編

 4年の歳月を経て、天神で訓練している皆の練度はほぼ完璧になったと思います。


 彼らは合図に従って密集散開や戦闘陣形のままの移動などを完ぺきにできるようになりましたし、長距離の行軍を迅速に行うことも、陣地の構築や食料や水の確保や煮炊きも完全にこなせます。


 また、弓兵もみな三人張りの強弓を用いて的に9割は命中させることができる腕前です。


 騎兵も集団での騎乗移動のくわえて馳射や長槍を用いての突撃などもこなせるようになりましたね。


「そろそろ、最後の常設兵力に新しく木曽松本の各村より100名ほど追加で集めましょうか」


 時間的に考えればこれが戦時中ではない長時間の訓練を行える兵の最後の徴収になるでしょう。


「後発組は基礎訓練身体として、先発組は最終訓練ですね」


 まずは歩兵です。


 私は10尺(3m)の長さの木製の棒の先に朝を丸めた練習用の長槍を持たせて、古代マケドニア式の軽装歩兵ファランクスっぽい、縦5名横5名の密集方陣での1小隊として、この小隊を3部隊横に並べる陣を作らせます。


 そして、それとの対面には木の盾と脇差し程度の小太刀の長さの竹刀を装備させた歩兵を同数並べて対峙させます。


「双方掛かれ!」


 私はその間の離れた場所から号令をかけます。


 その指示を支持をの左右にいる伝令兵が手旗信号で伝え、双方が全身を開始しました。


「うおぉおおおおおおおおおおおおおお!]


「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 双方が鬨の声を上げてぶつかりあいます。


 しかし、槍衾を盾で防ぎつつ、じわじわと左右に戦列を伸ばして槍兵を包囲する盾兵が次第に槍兵を左右から突き崩して、最終的には槍兵を打ち倒しました。


「やはり、練度と装備が十分であればが槍兵の密集方陣より盾兵の散開戦術のほうが強いようですね」


 まあ、ナポレオンの大陸軍(グランダルメ)も練度が十分なときには散開戦術を取っていたものの、ロシア遠征で練度の高い兵士を失ってから歩兵は密集陣形を取らざるを得なくなったらしいですしね。


 しかし、槍衾は騎馬の突撃を防げるメリットがありますし、中央に配置するのは槍兵のほうがいいのでしょう、そこに右などから盾兵、後ろから騎兵が挟み込んで攻撃するというわけですね。


 いわゆる鉄床戦術(かなとこせんじゅつ)で、軍を分け、正面の部隊が敵をひきつけているうちに他の部隊が背後や側面に回りこみ敵を挟撃するというものですね。


 正面の部隊に敵を引き付け、そこに機動力のある部隊が打撃を打ち付ける様が鍛冶屋の槌と金床に似ていることからこう呼ばれるわけで、古代のローマやオリエントでよく使われていたはずです。


 ただし、この戦術を行う側は十分に統率の取れた機動力のある部隊と少々の打撃では崩されない部隊が必要であり、その連携がうまく取れている必要があります。この戦術は自軍の兵力を分散してしまうという短所もあり、兵力集中において勝る敵軍に各個撃破される危険性もある欠点も持っています。


 しかし、密集した槍兵による槍衾は騎兵を寄せ付けないというメリットがあります。


 盾兵にはできないことなので、槍兵は騎兵に強く、騎兵は盾兵に強く、盾兵は槍兵に強いと言うような三すくみが出来上がってしまうわけですね。


「まあ、どんな相手にも無敵で欠点のない兵科など存在しませんから、状況によって使い分けましょうか」


 今度は槍騎兵の巻藁への突撃訓練です。


 紐をつけて肩に担ぎ、脇に抱えて馬の突進力でもって敵の兵馬に突き立てる、西洋のランス的な長柄の馬上槍を抱え巻藁にめがけ突進させます。


 揺れる馬上で巻藁を正確につくのは意外と大変なのです。


「うおぉぉぉぉぉぉ!」


 ですが、流石に4年も訓練していれば皆できるようになっています、と言うかできないものは他の部隊に転向ですからね。


 さて弓騎兵や弓兵の最終訓練は兎狩りです。


 草原を三方から歩兵に囲んでもらってうさぎを追い出してもらい、そのうさぎの頭を撃ち抜くというものですね。


 なんで頭のかというと胴体を射抜いて腸などが破れてしまえば腹の中に腸の中に詰まっている便があふれだしてしまって、臭くなってしまうからです。


 まあ、失敗した人には責任持って食べていただきますが。


 私は勢子にウサギを追い出すために時の声を上げるように支持を出します。


 手旗信号で私の指示が伝わると”そーれあ、そーれあ”と草原の反対側から大きな声が上がり、驚いたうさぎたちがそこかしこで弓手に向けて走っていきます。


「これを外したら飯抜き、胴体にに当てたら臭い肉を食うことになる…… 集中集中……いけ!」


 弓が引き絞られて次々にウサギに向けて放たれました。


 そして矢が次々とウサギを仕留めていきます。


 私も持参した狙撃用の火縄銃でウサギを狙います。


「こういうときに使わないと、火薬や弾がもったいないですからね」


 スコープ越しにうさぎの頭に狙いをつけて私はウサギを狙撃します。


 もちろん弾丸は狙い違わずうさぎの頭を撃ち抜きました。


「まあ、これくらいできないと馳射で相手の顔を狙うなんてできませんしね」


 兎狩りの結果に私は満足しました。


 更に山を登っての戦闘や山林中での戦闘も想定しナタを持たせての山登りや山林中での罠のし掛け方の訓練も行います。


 木の枝のしなりを利用した跳ね上げ網や跳ね上げ縄、縄と刃物と落下物を組み合わせた罠、落とし穴の作り方、草を結んでおいてそこに脚をひっかけさせて転ばせるころばし罠などですね。


 このくらい仕込んでおけば戦闘部門に関しては問題ないですね。


 そして訓練のときに負傷したものは薬師兵がテキパキと応急処置を行っています。


 殺傷力は最小限にしていても、多少の怪我はどうしてもおうものが出ます。


 ですが適切な処置さえ行えばそうそう再起不能にはなりません。


 さらに歩兵は船上での射撃や白兵戦、遠泳を行い銛で船底へ穴をあける訓練なども行わせます。


「まあ、実際に穴を開けられても困るのですが」


 ともかく私は兵を様々な状況で戦えるように訓練を施したのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ