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海の幸の保存食・まあ保存できないものも多いけど。

 さて、重盛に許可を得た私は早速塩田や魚介類などの採取養殖、造船施設の製造に取り掛かります。


 まずは塩田ですね。


 一般的に言われている揚げ浜式塩田法というやつです。


 作り方としては満潮でも海水が届かないくらいの高さの砂浜をまず少し削り粘土を用いて海水が染み込んでいかないように表面を加工してもう一度砂を戻します。


 これが海水から塩を抽出するための塩田になります。


 本来ですと人が桶でえっちらおっちら運んで塩田の砂の上に海水をにざばっとぶちまけて、それを太陽熱によって海水を蒸発させて塩分濃度を濃くし、白く塩が吹いた砂を塩田の中央に設置された樽に集めて海水をかけ、濃い塩水を採りそれを鉄の塩釜で煮詰めて塩の結晶とするのですが、桶で運ぶところは木製のピストン式ポンプで海水を汲み上げ、竹を割った水道で塩田まで運ぶことで省力化を図ります。


 もっと効率が良い流下式塩田を作りたいところですが、あれには高能力な電動ポンプがないと正直難しいですからね。


「おお、コレは楽ですな」


「んだんだ、海に入って桶に水を組んでそれを運ぶのは大変だったからたすかるだな」


 それでも、今までよりは全然楽なのでしょう、宋の国ですでにピストンポンプが開発されていて助かりましたね。


 どういうやつなのかと言われれば井戸水のレバーを上下に動かして水を汲み上げる手動ポンプを思い受けべてもらえればわかりやすいでしょうか。


 また、水門とピストンポンプや龍水車を組み合わせて、船の製造や修理、補修を行うための乾ドックも作ります。


 木造船の最大の敵は船食虫(ふなくいむし)です、フナクイムシはミミズのような姿をした貝ですが、シロアリのようにどんな木材であっても奥深く入りこみ木材をたべる穴を開けます。


 これにより沈没した木造船も数少なくありません。


 これを駆除するため年に二回船を陸にあげ、船底を持ちあげで萱でいぶして煙と乾燥させることで船食虫を駆除しました。


 また船底に付着するフジツボも悩みのタネでした。


 小さく底が平たい船であれば砂浜に引きずりあげて、皆で抱え上げて木の台の上に乗せて船底を燻すこともできますが、大きな船ではそうは行かないわけで、そのために大型船の建造進水が容易になりメンテナンスが可能な乾ドックをまず作ります。


 フナクイムシ対策としては大型の船に総櫓及び船体の総てに防火・防蝕、フナクイムシ虫対策を目的とした銅板を有ります。


 銅板張りは鉄板を貼るよりは費用が高くつくものの、理論上は塩分に対する耐久性が高くなり緑青がフナクイムシを侵入させなくさせますからね。


 まあそれは当面先の話で今はまずは海洋資源の確保の仕方を考えていきましょう。


 まずは素潜り漁による(あわび)栄螺(さざえ)床伏(とこぶし)、ばい貝、牡蠣(かき)などの貝類、ガザミや越前がに、甘エビなどの甲殻類、雲丹(うに)海鼠(なまこ)、ホヤのような、その他の食用の海の動物、和布(わかめ)海蘊(もずく)岩海苔(いわのり)天草(てんぐさ)などの海藻を採取します。


 続けて、蛸壺(たこつぼ)を設置して(たこ)を取りましょう。


 更には浮延縄を用いて延縄を水面近くに張り、小型のメジマグロとそれに紛れている迷いカツオを狙わせましょう。


 刺網と曳網も用いて(いわし)(さば)(たら)(たい)、メジナ、(あじ)、ホウボウ、(ぶり)ハタハタ、(かれい)平目(ひらめ)(さわら)細魚(さより)などのその他の魚なども狙います。


 日本ではまだ網を用いた漁法は盛んではありません。


 これは網を作るためには糸が多量に必要ですからですね。


 とは言えもっと昔から網を用いた漁法はありますからなんとかなるでしょう。


「まあ、糸の確保は大丈夫だとして…先に漁船が必要ですかね」


 船が傾いた時の垂直方向の復元性が高く逆風でも遡行が可能で、速度の出やすい小型の漁船を先ずは作りましょうかね。


 船底をv字型にして水の抵抗を少なくし、積載量より速度を優先した漁船を作らせます。


 帆は麻と割竹を使った三角帆ですね。


 漁船を駆って烏賊(いか)をたくさん釣り上げます。


 持ち帰ってきた海産物はマグロは半分は醤につけこみ、半分は油で煮てツナにしてそのまま油の壺漬けで保存します。


 烏賊は内蔵を取り除いて天日で干したスルメと、塩と内臓をまぜて漬け込んだ塩辛の赤造りにします。


 さらにはイカ墨を混ぜて日持ちしやすい黒造りも造りましょう。


 蛸も同じように干し蛸とタコの塩辛に加工します、これに技日を加えるとタコわさびですね。


 鯖は酢で締めてしめ鯖にしたり塩辛にしたりします。


 鰯は煮干しにしたり、頭と内臓をとって、高濃度の塩水に軽く漬け、オイルで煮込むとオイル サーディンですね。


 干物にできるものは干物にしてそういった長期保存がむずかしいものに関してはおすそ分けもしてさっさと消費してしまいましょう。


 しかし、油で煮て油でつけておく保存方法は色々応用がききそうです、問題はこの時代の日本では植物油が貴重だということですが。


「あと、大事なのはカツオブシですね」


 まずカツオの頭と内臓を取り除き、三枚におろして形を整え、籠に入れて、釜で一刻(2時間)分前後お湯を沸騰させない程度の火力で、煮立たせないように慎重に煮ます。


 煮汁は出しとして使えますね。


 煮えたら取り出した後に冷まし、鱗を剥ぎ、脂肪や骨の除去を行います。


 この状態がいわゆる、生利節でそのまま食材に使うこともできますが、長期保存はできません。


 このあと、燻蒸して乾燥させる、表面を削って汚れを除いてから、水分を落とし、天日干しで乾燥させつつ、コウジカビを繁殖させ身を熟成させます。


 カビが繁殖したらこれをこそぎ落として、またカビを繁殖させるを繰り返すと、水分が失われて硬いカツオブシになり、カビも付かなくなるのです。


 まあこの工程には2ヶ月以上かかったりしますが、カツオブシといえば昆布や椎茸、煮干しと並ぶだしのものもとでもありますし、軽く持ち運びに便利で、平鉋のような削り機で削って醤をかければおかかが出来上がります。


「カツオブシって超優秀な保存食なんですよね」


 ついでにマヨネーズも作ってしまいましょう。


 卵黄と大豆と酢と大豆油と塩を私は用意して、まずは酢と黄身を混ぜ合わせ、そこに油を少しずつ加えながら混ぜていくと黄色のマヨネーズが出来上がりました。


「ん、そろそろご飯にしますか」


 義仲様に出せないのは残念ですが、マグロの油煮をほぐしてマヨネーズであえたもの、要するにツナマヨとカツオブシを削って醤をかけたものをご飯にかけて食べてみましょう。


「ん、懐かしくて美味しい……」


 海産物の保存食のバージョンが増えるのはいいことですね。


 マグロやイワシ、ナマコや牡蠣、サザエ、トコブシなども塩辛にできるはずですしね。


 海産物の食糧事情が改善されたら真珠の養殖も試みましょう。


 アコヤ貝やヒオウギ貝に球体に削った核と外套膜と一緒に挿入して、真珠層を形成ましょう。


 まあ、最悪真珠ができなくても身を食べたり貝殻を美術品として貿易に使うこともできるでしょう。

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