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志田義弘との対面

 さて、途中で何度か野盗の群れを壊滅させて、彼らのためていた食料や物品を回収しながら私たちは常陸国の志田荘にたどり着きました。

家人に取り次いでもらい、屋敷の主と面会を果たします。


 屋敷の主は何か悟ったような少し暗い感じの方でした。


「ふむ、そなたが駒王丸の家人ともうす者か」


「はい、駒王丸はもう元服されて今は木曽次郎六位蔵人義仲と名乗られております

 私はその便女で中原中三信濃権守兼遠が娘の巴と申します。」


 私は言葉を返しました。


「そうか、あの幼かった駒王丸が六位蔵人などという

 官位を持つほどに大きくなるとは

 時の流れは早いものだ、私が志田義広だ。」


私はくすりと笑い彼に問いました。


「赤子の義仲様は可愛らしかったでしょうか?」


私に質問に彼は表情を崩して答えてくれました。


「おお、誠に可愛らしい赤子であったな。

 まあ、こんなところで立ち話も何であろう。

 屋敷に上がるがいい」


 かれは義仲の父である義賢の同父同母の弟であり、関東ののは田を一緒に耕したこともあったそうですね、義仲様にとっては最も血のつながりが近い叔父にあたる人物であればこその感想しょう。

そして私は彼の勧めに従って屋敷にお邪魔いたしました。


 彼は183年2月、義仲様と合流しようとして下野の野木宮合戦で破れてそのまま木曽の軍に合流し、行家とこの方の合流に難癖をつけた頼朝によって義仲様と頼朝の対立が表面化したのでした。

無論後の行動を考えればもともと頼朝は義仲様を部下として扱う気はなかったでしょう。

血筋的に近く武功を上げている競争相手は全て排除しましたからね、彼は、その結果として頼朝源氏の血筋は、ほぼ滅ぶのですが。


「ところで義広様、現在の世の中をどう思いますか」


 私の言葉に彼は少し考えたあと。


「まったくひどいものだ、朝廷の国司と平家の目代が

 夫々勝手に税を取り立てているから

 坂東の豪族はみな苦しんでおる。

 平将門が反乱を起こしたときと変わらん、

 いや平氏が更に税を取ろうとしているだけ更に悪い。

 坂東の中でも朝廷や低毛に不満を持っておるものは

 少なくないと私は見ている。

 今はまだ暴発するほどではないがな」


 彼の言葉に私はうなずきます。


「やはりそうですか、もし、何かで我々木曽の力が

 必要なときはぜひ我らを頼ってください」


「ふむ……」


彼はしばらく考えていたのですがやがて口を開きました。


「わかった、何かのおりにはよろしく頼む。

 ささやかではあるが宴席を設けるとしよう。

 今宵はゆるりと楽しんでいくがいい」


「ありがとうございます」


そして宴が始まりました


「たまには宴などというのもいいというものだ。

 我が兄義賢が義平に討たれ、保元の乱で父源為義や弟達が討たれ

 平治の乱では源義朝と義平・朝長などが討たれ

 今や誰も訪れるものはおらぬからな……」


酒が回ってきて口が軽くなったのか彼はボソリとつぶやきました。


「私の兄を討った義平、それに命じた義朝を絶対に許さぬ。

 その嫡男である頼朝も許さん……私の手で何れ討ってみせる」


「父上、言葉が過ぎますぞ」


 彼の息子らしい方がその言葉を諌めました。


「わかっておる、が聞かれて困るものなどおらぬ。

 これが私の本心だ……」


 なるほど、義賢と兄弟仲も良かったらしい彼にとって異母兄である義朝たちは許せない存在なのですね。


 やがて、夜もふけ宴も終わり私は寝所に通され一夜を過ごしました。


 そして翌朝となり私は志田荘を出立いたします。


「うむ、またいつでも来られよ。

 次は駒王丸とともにきてもらえれば嬉しいぞ」


「あ、はい、できうる事ならそうさせていただきます」


 なにせ彼は義仲様を最後まで裏切らなかった数少ない方の人ですからね。


「では、ありがとうございました」


 私は頭を下げ今度は武蔵国に向かったのです。

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