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内政官の育成をしましょうまずは算数国語から

 さて、平安時代末期において中央官庁は特定の氏族が特殊技能や知識を家職・家業としてそれに関連する官司を支配し、その上首いわゆる責任者にあたる官職を世襲する体制になっていました。


 官司請負制によって継承されるのは、単にその官職が持つ地位や名誉、職権のみではなく、それに付属する所領や課税権限など様々な経済的な権益などを伴っていたのです。


 そして中原氏は明法道(みょうぼうどう)明経道(みょうぎょうどう)外記(げき)東市正(ひがしいちのつかさ)大炊寮(おおいりょう)酒造司(さけのつかさ)検非違使(けびいし)を世襲職とする京の都の行政や教育のエキスパートだったのです。


 明法道は、律令法(法学)を講義した学科で法学部の教授みたいなもの。


 明経道は、儒学を研究・教授した学科で大学の文系クラスの教授みたいなもの。


 外記は少納言の下に置かれ、中務省の内記が作成した詔勅を校勘し、太政官から天皇に上げる奏文を作成したり、太政官の上卿の指示に従って朝廷の儀式・公事の奉行を行い、必要に応じて関係する先例を調査・上申してその円滑な遂行に努めたり、更に人事案件の手続の一端を行う躍如です。


 その重要性から、平安時代中期には五位に昇進する大外記も現れるようになったくらいです。


 これを大夫外記と呼ばれ、後に大夫外記の筆頭を局務(きょくむ)とも称するようになるのです。


 東市正は都の東に置かれていた市を監督をおこない、市における不正及び犯罪の防止や交易における度量衡の管理、物価の監視などにあたる他、時に応じて公用に供する物資の調達にもあたった役職で、市の治安を扱う事から検非違使を兼務することもあったのです。


 大炊寮は宮中で行われる仏事、神事の供物、宴会での宴席の準備、管理を分掌するし、御料地の管理も行いました。


 酒造司はその名の通り主な職務は酒や醴・酢などの醸造をつかさどった役所です。


 検非違使は「非違(非法、違法)を検察する天皇の使者」の意で警察のようなものですね。京都の治安維持と民政を所管したのです。


 他にも蔵人方の出納(すいとう)は、蔵人所の職員の1つで蔵人所の財物の出納をはじめ、一切の庶務を掌った場所です。


 刑部省の品官として罪人を裁く判事も中原が行っています。


 主殿寮(しゅでんりょう)で内裏における消耗品の管理・供給官奴婢・官戸の管理も行ったりします。


 また丹波重康にまなび典薬寮医生となる中原有言(なかはらのありとき)の後裔は典薬の家系でもありました。


 また陰陽師や天文に関する職務についたものもおりました。


 このように様々な官僚機構や大学の講師を行っている中原ですが、逆にいえばそういった知識はその他の家系には伝わっていないということでもあります。


 なおのこと普通の農民は読み書きや計算なども細かくはできません。


 しかし、軍事の規模が増大し、武器や糧秣の準備や管理を領地内の郎党などに行わせるのではなく、一元で管理しようとするのなら、だがそういった物資や食料の位の管理や輸送の手配を行う人間が必要です。


 本来の私たちは国庫に集められた米を奪い取ったり反延暦寺派の寺社に食呂の寄進を願ったりすることで食料を手に入れていたはずですが、それでは不安定要素が多すぎますからね。


 そこで、まずは、数の数え方それと足し算と引き算ですね。


「数の数え方ですが1,2,3,4,5,6,7,8,9、10を基本とします。

 1は一で壱

 2はニで弐

 3は三で参

 4は四で肆

 5は五で伍

 6は六で陸

 7は七で漆

 8は八で捌

 9は九で玖

 繰り上がって10は十で拾

 100は百で佰 

 1,000は千で仟

 10,000は万で萬となります

 足すは+

 引くは-

 掛けるは×

 割るは÷

 の記号で表します

 10までは左右の指の数と同じですので指を折って数えれば理解しやすいでしょう」


「巴様流石にそれくらいはわかります」


「では9+9はいくつでしょうか?」


「ええと……」


 指を折って数えますが両手には10本しか指がないので困っているようです」


「答えは18ですね、1+1から10+10ぐらいまでは暗記してください」


「わ、わかりました」


 私は白い石10こと黒い石10こを渡して、20までの足し算と引き算を覚えられるようにします。


 その次は掛け算ですね。


 1☓1=1

 1☓2=2 2☓2=4

 1☓3=3 2☓3=6  3☓3=9

 1☓4=4 2☓4=8  3☓4=12 4☓4=16

 1☓5=5 2☓5=10 3☓5=15 4☓5=20 5☓5=25

 1☓6=6 2☓6=12 3☓6=18 4☓6=24 5☓6=30 6☓6=36  

 1☓7=7 2☓7=14 3☓7=21 4☓7=28 5☓7=35 6☓7=42 7☓7=49

 1☓8=8 2☓8=16 3☓8=24 4☓8=32 5☓8=40 6☓8=48 7☓8=56 8☓8=64

 1☓9=9 2☓9=18 3☓9=27 4☓9=36 5☓9=45 6☓9=54 7☓9=63 8☓9=72 9☓9=81


 私は紙に書いた中国式の九九で掛け算を説明します。


「このような場合9かける9から数を減らしていって覚えるのが一番かんたんです。

 最初はこれを移したものを暗記するようにしてください」


「はい、分かりました」


「それからこれが、物資や駄馬などを管理する帳面です。

 たとえば木曽屋敷の蔵に槍が10本あるとしたらここに槍10と書きます。

 さらに槍10本が5組入ってきたらやりは何本でしょうか?」


「えっと……10本が5組だと50でそれに最初からあるのが10本ですから合わせて60本です」


「はい、そのとおりです

 あなた達が実際に蔵の出納を行う際は最初に棚卸しを行って在庫を確認してもらいます」


 ちなみに今までは米などの帳簿はちゃんとつけてないですね……てへ。


 これからはきちんとやるようにしましょうか。


「文字については最初は必要そうなものから覚えてもらいます。

 武器とか鎧とか納税品などです」


「わかりました」


  パソコンとかエクセルとか会計ソフトとかがあるなら楽なんですけどこの時代はないから目録や帳面の管理も大変ですね。


 漢の後方を支えた蕭何(しょうか)とか銀河英雄伝説のアレックス・キャゼルヌのような有能な後方内政官にぜひなって欲しいものです。


 それにしても、基本的に国民全員が国語算数理科社会と切った基礎知識の教育を受けられるって結構すごかったんですねと今更ながら思います。


 まあ、習ったことが全部役に立つとは限らないのがなんですけども。

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