遠見筒と火縄銃
さてさて、本日は遠見筒、いわゆる望遠鏡を作成したいと思います。
私はのこぎりを持ってを竹林に入ると竹を一本切って屋敷へ持ってきました。
さらに蛍石を善光寺方面の鉱山より寄せます。
「巴様今度は何をなさってるのですか?」
小百合が不思議そうに聞いてきたので私は答えました。
「遠見筒を作ろうと思ってます。
筒の中を覗くと、遠くのものがはっきり見えるというものですよ」
「また、変わったものを作ろうとなさってますね……」
「でも、色々役に立つんですよ。
遠くはなれた場所をはっきり見れれば狩りの時に獲物を探すのが楽になりますし」
「なるほど、それはそうでしょうね」
まずは純度の蛍石結晶を削っておおまかに大きな凸レンズと小さな凹レンズに加工し、更に木工旋盤のバイスを磨くための布にして鏡面を綺麗に研磨します。
出来上がったところで私は凸レンズを手にすると文字の書かれた巻物に向けてみせ小百合を呼び寄せます
「ほら、これを通してみると文字が大きく見えるでしょう?」
「本当ですね、不思議な事でございます」
虫メガネやルーペが普通に手に入る時代ではなければ当然の反応ではありますね。
レンズと言うのは光の屈折を用いるものですが、この時代の日本では純度の高い大きなガラスは手に入りにくいので、蛍石を用いました。
均一に研磨するのは手作業では難しかったでしょうから旋盤の存在はありがたいですね。
それから竹を曲がりの少ない部分を選んで、切断し切断面をヤスリがけをしたて綺麗に整えます。
切り出した竹筒の内部をアスファルトで黒く塗装をし遮光と防腐処理をします。
太さの違う竹を4段の入れ子にして携行性を高め、長さを変えることで焦点合わせがしやすくします。
先端の対物レンズと手元の接眼レンスを竹同士で挟んで紙をぐるぐる巻きにし柿渋で紙を固めれば出来上がりです。
私は早速遠見筒を伸ばして覗き込んでみました。
「うん、ちゃんと遠くのものがはっきり見えますね」
後はこれを元にして職人さんに同じものを作ってもらいましょう。
蛍石はともかく竹を手に入れるのはそんなに難しいことではないですしね
遠見筒ができたら次は火縄銃です。
この時代原始的な銃として大銅砲や突火槍などと呼ばれるものはすでに大陸には有りました。
しかし、銃身を手で持つのではなく中空の青銅の筒を肩に担ぎ、火薬への点火も、肩に担いだものとは別のものが火口と呼ばれる穴に先を熱した鉄などの金属の棒を直接押し付けていました。
それでまもちろんまともに狙いを付けるのは難しいですから、金の重装機兵に対してはそれなりに効果がありましたが、モンゴル軍の蒙古騎兵にはあまり効果がなかったようです。
火縄は硝石を煮込んだ竹もしくは木綿の繊維を糸として編みこんだもので、火縄銃の熱源として長い間用いられました。
そして、火縄銃の構造自体は割と単純で青銅もしくは鍛鉄製の金属製の筒である銃身を備え、銃身内を清掃するためのネジの尾栓と銃身を保持するための木製の銃床、火縄を押し付けるための火薬を置く火皿、銃口内部と火皿をつなぐ火穴、暴発を防いだり火薬がしけるのを防ぐための火皿を覆う火蓋です。
火縄を保持する火鋏火皿に火縄を押し付けるためのバネ仕掛けと引き金でなど。
銃口の下には、火薬や弾丸を詰める木の棒、朔杖が備えてあります。
火縄を引き金を引くことで火薬と接触できるようになることが、命中精度の上位賞に大きく寄与しました。
火縄銃は玉の重さで口径が分類されていて、「○匁筒」と呼ばれています。
戦国時代に主に使われたのは全長3.5尺(約130cm)、銃身長3尺(約100cm)、口径は二匁から二匁半くらいの銃が主でした。
弾丸重量と口径の関係は
一 匁→ 8.7mm
二 匁→ 10.7mm
三 匁→ 12.3mm
四 匁→ 13.5mm
五 匁→ 14.6mm
六 匁→ 15.5mm
七 匁→ 16.2mm
八 匁→ 17.0mm
九 匁→ 17.7mm
十 匁→ 18.3mm
二十匁→ 23.1mm
三十匁→ 26.5mm
百 匁→ 39.5mm
一貫目→ 84.2mm
といったところです。
一匁では流石に威力が低いので主に練習につかわれましたが、二匁・三匁であっても女子供でも訓練すれば使え、なおかつ腹巻や胴丸といった足軽の鎧であれば十分貫通できました。
そして狭間筒と呼ばれる主に城の防衛用に使用された銃があります。
5尺(1,5m)から7尺(2m)の長さをもつ銃で、長くて重いため扱いづらいかわりに、銃身が長いために火薬の爆発が効率的に活かされるこの銃は、通常の銃を超える射程を誇り2-300mの距離を狙撃できたそうです。
「どうせ作るなら狙撃銃を作りましょうか」
私は設計図を作り青銅で銃身と尾栓を、木で銃床を、その他の部材は真鍮で火縄銃を作らせることにします。
銃身自体は梨花槍を、その他の部分は弩をさんこうにしてそれを組合わせるのですね。
ついでに細めの竹筒使って狙撃遠見筒も作って銃につけてしまいます。
「こんなところですかね」
早速的を使って狙撃をしてみましょうか。
弓術の訓練に使う的を用いて30間(約55M)の距離から狙撃遠見筒の中の十字を的の目標の中心に入れて引き金を引きます。
”ダアン”という発砲音とともに鉛球が放たれそれは的の中心近くを穿ちました。
「んー……やっぱり弓よりは楽かな」
銃の重さが10kgあるとはいえ、5人張りの和弓を引くよりはらくですからね。