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農業改革

 年が明けて、雪も溶けてきた頃久方ぶりに若狭屋の広幡善治がたくさんの荷物と人を従えて木曽の屋敷にやってきました、。


「前に頼まれていた件のめどがつきましたのでやってまいりました。

 宋の国の部曲(奴隷)の男女2組と宋の国で栽培されている、西瓜や日照りに強い米の占城稲(せんじょうとう)蚕豆(そらまめ)高粱(とうきび)(コーンではない)といった農作物に、肥料になる蓮華草それに羊と山羊ですな。

 農具もお持ちしましたよ。

 あとは疲労回復のため酒の酒精分を強くするための蒸留器もお持ちしました」


 そういって彼が見せた鍬は刃先の部分だけで無くすべて鉄製のものでした。


「これはすごいですね。宋の国ではこれが普通なのですか?」


「そうですよ、大陸の国の道具などはわれわれの国のはるか先を行っているのです。

 無論これは農具に限ったことではありませんがね」


 そういう彼の目は皮肉めいた光が宿っていました。


 さらに牛馬に引かせて、土壌を耕す(すき)馬鍬(うまぐわ)、泥の上を深く沈まぬように歩くためのかんじきである田下駄(たげた)などと獨酒を蒸溜できる蒸留器も彼は置いていったのでした。


「詳しくは彼らに聞いていただくのがよいでしょう。

 片言ではありますが言葉はわかるようしてあります」


「わかりました、ありがとうございます。

 してお代はどのくらいで?」


 彼の目が細められます。


「そうですな、すべてあわせまして…百貫文といったところですな」


 おおよそ1千万円相当ですか。


 うーん、予想よりだいぶ高かったです……がその程度の価値はあるのも事実でしょう。


「わかりました、百貫文ですね」


「毎度ありがとうございます、今後も若狭屋をどうぞごひいきに」


 彼はニコニコして銭を受け取ると帰っていったのでした。


 そして彼より売ってもらった唐人の知識は非常に役に立つものでした。


 蓮華草を用いる緑肥、馬糞、牛糞、人糞などを藁や籾殻、大鋸屑などと混ぜて発酵させる下肥、落ち葉、籾殻や籾殻の使った腐葉土などによる土を豊かにする知識。


 田に直接種をばら撒くのではなく苗を育てたあと間隔をあけて植える田植えの知識。


 足踏み式の水車や水樋の活用など水を効率よく利用する知識。


 牛や馬などを使って深く早く耕したり岩や切り株を取り除いて開墾を早める知識。


 高粱酒、焼酒などと呼ばれる酒を蒸留して濃度を高める知識など。


 治水、灌漑、農法、酒造の全てにおいて大陸ははるか先をいっていたのです。


「私はこの時代の宋の国の農業の事はあんまり知らなかったけどずいぶん進んでいたんですね…」


 まあ、多分こういった技術や知識しばらくしたら入ってきて日本でも広まったはずですが。


 そして私の屋敷で飼育して増えていた鶏や家鴨もだいぶ増えてきたので木曽の村人に分けあたえはじめたのです。


 鶏卵を各家で入手できるようになれば栄養不足もだいぶ解消されるでしょう。


 そして田畑に家鴨の雛を放すことにより雑草の繁殖も抑えられるようになったのです。


 そしてこの秋は去年の5割増し近い米や麦、蕎麦が収穫できたのでした。


 こういった技術がよそにも伝わってくれるといいのですけどね。

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