傀儡子になるのも楽じゃない
さてさて、そろそろ夜用ということで高く買った男女の下人にも働くための準備をしてもらいましょう。
予定では傀儡子として信濃の周辺の越後や美濃、上野、三河などを回ってもらいたいところです。
傀儡子というのは平安時代には、狩を行いながら諸国を旅し、操り人形の人形劇を行い、女性は劇に合わせた詩を唄い舞い、男性は奇術や剣舞や相撲や滑稽芸、たとえば複数の剣をお手玉にしたり七つの玉投げなどの芸、扇から水を噴出させる水芸といったことを行いながら旅をして回った、一種の大道芸人です。
そして女性は禊や祓いとして、客と閨をともにしたともいわれる人たちです。
問題なのはどうやってそういったことを教えるかということです。
私が悩んでいると声が帰られます。
「巴殿何を悩んでいるのですかな?。」
声のかけられたほうを振り向くと戸隠大助先生でした。
「ああ、先生、ちょうどいいところに。
実は…。」
と傀儡子に関してどうすればいいか悩んでいることを話します。
「なるほど、ではそれは私のほうで行いましょう。」
…この方は本当に何でもできる超人のようです。
しかし考えてみれば忍者というのは山伏を装ったり、行商人を装ったり、傀儡子のような芸能集団を装ったりして日本各地を行き来しているのですから、不思議なことではないのかもしれません。
その訓練は翌日から始まりました。
女性に対しては先生の弟子であるらしい女性が歌や舞おそらく枕事に関しての技術者知識も教えているのでしょう。
ちょっとだけ教わってみたいきもします。
男性に対しては先生自身が剣を使った剣舞などを教えています。
問題なのは
「何で男性が女性の格好で女性が男性の格好なのですか?」
私は思わず聞いてしまいました。
「いやいや、寺社ではお稚児を女装させ白拍子を男装させるのが普通ですぞ」
「日本の寺社の闇は深いです」
ぼそりとつぶやいた私が遠い目になっていたとしてもだれがそれをせめられるでしょうか。
「まあ実際今の状況は朝廷、貴族、寺社、平氏といった勢力の乱戦状態ですしね。」
もちろんいずれは私たちが平氏を倒して見せるつもりですよ。