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木曽義仲の覇業・私巴は只の側女です。  作者: 水源


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18/109

熊狩り・熊の毛皮は暖かいし肉はおいしいです

 次は寝所をなんとかしたいところです。


 この時代は比較的暖かく冬でもまだすごしやすいとはいえなにせこの時代には布団も毛布もないのです。


 床に敷くのは畳ですがこの時代の畳は藁で編んだむしろ要するに茣蓙ござを何枚か重ねたもので、上にかけるのはふすまと呼ばれる長方形の一枚の布地です。


 大貴族であればしとねと呼ばれる綿詰めの敷布団のようなものを持っているらしいですがこの時代の綿はとてつもない貴重品で簡単に手に入りません。

褥を共にするというのは男女が一緒に寝るという意味ですね。

ちなみに暑い時期は裸ですし寒い時は衣を重ね着して寒さをしのぎます。

庶民に至っては敷き詰めた藁の中に潜り込んで寝るのが普通でした。


 まあ、いざ合戦となれば夜は地面に雑魚寝が普通なわけですが、大規模な合戦が起こるのは今しばらく先です。


 そして、木と紙でできたお屋敷というのは冬は寒くて仕方ありません。


 ちなみにこの時代の寿命が40ぐらいだったりする理由の一つが寝てる時が寒すぎるだったりするわけです。


 しかし、今の時代綿は熱帯性の植物なのでこの時代に伝来しているものの栽培に失敗しているはずです、なので輸入された綿は絹と同じくらい貴重で高額だったりします。


 今の日本には羊も山羊もいないので羊毛はありませんし…ああ、そういえば毛皮という手がありました。

貴族のように迷信深い人達は毛皮の服なんて絶対着ないでしょうけど、殺し合いが日常の武家には関係ないことです。

毛皮を敷いて寝ればさぞ暖かいことでしょうね。


 そもそも具足に使われる皮は牛の皮だったりするのですから殺生と無縁ではいられないのです。


 思い立ったら膳は急げです。

義仲様に許可を頂に行くことにします。


「熊を狩りに行きたいのですが許可をいただけますか?」


 義仲様はにやっと笑い


「熊狩か、鍛錬ついでに俺も行くとしよう」


 ああ、そうきましたか、まあ、そうなる可能性も考えていましたが。


「あ、はい、では準備をいたしましょう」


 下人を呼ぶと弓や熊槍、手斧、鉈と解体用の小刀。

もち運びための縄や背負子を持たせ草鞋に木製のタカツメを履かせます。

竹の水筒と笹で包んだ玄米のおにぎりに、ゆでた卵をそれぞれ渡しました。


「おお、これはなんともありがたい」


 早速山へ向かいます。


 ツキノワグマは、普通で80kg。

まれに200kgを超す大物もいるようです。

鋭い爪の前足は一撃で牛や馬を倒すことができ本州ではとても危険な猛獣ですね。

狼も危険ではありますが危険度では熊のほうが上です。

熊の脳、胆や肝は昔から薬として貴重品扱いされ高値で取引されます。


 これから行うのは巻き狩りです

私は義仲様に向かって言います


「義仲様は向こうの移動していただき獲物の様子を見ながらセコに指示を」


「おう、わかった」


 義仲様が移動します。


 そして下人の皆さんに言います。


「皆さんはセコです。間を空けて待っていて

 義仲様から合図があったら大声を上げて下から熊を上に追い込んでください。

 私がしとめます」


「了解だあ」

「よっしゃまかせとき」


「ソーレア!ソーレア!と大きく叫んでくださいね」


「おおう、わかった!」


 熊はまっすぐに登ろうとする習性がある。

だから私が射手がとして尾根の方で待ち構え弓でいるのだ。


 獣でも登りながら逃げるのは苦しい。

常緑樹の茂った所に姿を隠しながら、楽なルートに沿って尾根へ出ようとする。

ノボリマキは、熊が逃げる速度も遅く、いかけやすい。

つまりしとめる確率が高く、危険も少ないという利点がある。


 私は急いで尾根に向かう。

やがて私がたどり着くと義仲様が叫んだ。


「よーっし、はじめろ!」


 その声が響くとともに


「ソーレア!ソーレア!」

「ソーレア!ソーレア!」

「ソーレア!ソーレア!」

「ソーレア!ソーレア!」

「ソーレア!ソーレア!」


 とセコの追い出しが始まりました。

私は弓に矢を軽くつがえつつじっと待ちます。


「巴!行ったぞー!」


 義仲様の声が聞こえるとともにツキノワグマが見えてみました。

だいぶ大きいですが何とかしとめましょう。


 私は弓を引くと熊めがけて矢を放ちました。


「ガァァッ!」


 頭部を狙ったのですが刺さったのは肩口。


「グオオォォア!」


 地響きのような吠え声を上げながら熊はこちらに突進してきます。


 私は弓を置き、熊槍を構え待ち受けました。

そして私の目の前で熊が立ち上がった瞬間に熊槍を水月のあたりに突き出します。


「グウゥゥッ…」


 熊はうめき声を上げ倒れました。


「ふう、何とかしとめられました」


「ソーレア!ソーレア!」


「おいー。巴がしとめたからもういいぞー!」


「おおー!」


 倒れた熊の首の頚動脈を切って血抜きをした後

縄を巻きつけ薄く雪の残る山を降りていきます。


 義仲様が私に近づいてきてうれしそうに言いました。


「今夜は熊鍋だな」


 義仲様の声に私も笑って言い返します。


「はい、腕を振るいますから期待して待っていてくださいね」


 屋敷についたあとヒグマを仰向けにし、股間部から首に向けて、

体の中心に沿い小刀で切れ目を入れて、皮を左右に剥ぎます。

同様に手足の中心に皮を左右に剥ぎます。

剥ぎ取った皮は猟師に頼んでなめしてもらいます。

手首・足首の関節の部位で手足を鉈で切って外します。

胃や腸、胆嚢、膀胱を傷つけぬよう気をつけながら腹部を開きます。

胸部は、肋骨の根元をなたで割って開きます。

首から食道を取り出し、外に引き出します。

横隔膜は骨に沿って切り取り、残りの内臓を引き出します。

肛門部は肛門の回りをくり抜いて取り出すします。

胆のうを慎重に剥がし、胆汁が漏れぬよう胆管をひもできつく縛って切り取ります。

胆嚢を乾燥させてると消化器系全般の薬になるのです。


 さて調理に取り掛かりましょう。

米は炊いてお櫃に入れてあります。

残りの内臓のうち肝臓は塩を振ってじっくりあぶり、その他の内臓は捨ててしまいます。

熊の内蔵は寄生虫が怖いのと雑食性なので腐敗臭がひどいものが多いですので。

肝臓をスライスして軽く塩を振り火であぶります。

さらに並べその上にごま油をかけます。


 肉は薄めに切って、鍋に水を入れ味噌と生姜、

ささがきにしたごぼう、ぜんまい、ねぎ、サトイモと一緒に煮込みます。

余った肉は後で塩漬けにしますが、どれくらいあまるでしょうか。


 鍋がぐつぐつと煮え始めると湯気とともに味噌と生姜の匂いがあたりにただよい始めます。

そして十分煮えたら溶き卵を入れた小鉢を義仲様に渡します。


「はい、どうぞ。召し上がってください」


「ん、これに肉を浸してから食えばいいのか?」


「それでは、いただきます」


「遠慮なくいただくぜ」


 鍋に箸をつける肉をつまみ上げて、溶き卵に浸し、肉を口へ運んだ。


モグモグ…


 熊肉は生臭いと聞いていましたが予想していたような生臭さは全くなく、

肉の風味は強いて挙げると牛に近く、濃厚な味噌の味が溶き卵につけることに

よってマイルドな味に仕上がっています。

ぎゅっと、かむと肉のうまみが口に中に広がります。

味噌風味の牛肉のすき焼きに近いでしょう。


「うん、おいしい」


「おおぅ、超うめぇ!」


 そして、レバ焼きを差し出します。


「こっちはこのまま食えばいいのか?」


「はい、そのまま食べてください」


 私たちは箸でレバ焼きをつまんで口に運びます。


 ごま油のつるりとした血生臭さを感じさせない風味、

レバーなのにしっかりした食感で、舌の上に乗せると濃厚な味が溶け出すように

口の中に広がりました。


「こっちもおいしい」


「おお、すんげぇうめぇ。巴!飯をくれ」


「はい」


 私は茶碗に玄米飯をよそって義仲様に渡します。


「んー、飯に会うなぁ」


「はい、気に入っていただけたようで何よりです」


 そのあと私たちは無言でひたすら食べたのでした。


 そのあと下人下女のみんなにも食べてもらうよう鍋を持っていったら

みな喜んでいました。


 そしてしばらく経って熊の毛皮で敷物ができてくると私は暖かくねられるようになったのです。

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