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秘密結社は壊滅寸前!!

作者: 猫小判

「くくくくく………、はぁーはっはっは! 見ろ! 戦闘員がゴミのようだ!!」

「………あの、ジャスパー様。そのようなことを言っている場合では無いと思うのですが」

「うるさい副長! あれはもう笑うしか無い状況だろ!!」


俺が指を差した方向では、俺のかわいい部下、戦闘員たちが正義の味方を自称する五人組が駆る巨大ロボットにアリのように踏みつぶされているという地獄絵図が広がっていた。

 俺は猛烈に叫んだ。


「つーかいきなり巨大ロボは反則だろ! この星の戦隊モノではピンチになってから使うのが王道だろ!?」

「ならば我々も巨大化して対抗しましょうか?」


副長は胸元から虹色の液体の入った注射器を出す。おいおい、うら若い乙女がそんなところに秘密兵器を隠すもんじゃありません!


「ってか巨大化出来るの俺だけじゃん! 万が一俺が死んだら、我々ゾイサイト人は滅亡するじゃないか!」

「………そうでしたね。すみません。軽率でした」


副長は全く申し訳なく無さそうな無表情で謝罪した。むかつっ………、ってコイツに表情制御回路は実装されてないって話だったな。

 俺はくるりと巨大ロボに背を向けた。


「良し、撤退する!」

「良いのですか? 戦闘員たちは戦闘を継続しておりますが」

「いいんだよ! どうせ誰かのクローンだろ?」

「あなたのクローンですが」

「俺のかよ! 気分悪いなぁ、おい!」


俺は一度振り返って巨大ロボに立ち向かい踏みつぶされていく戦闘員たちを見た。あれが全部俺と同じモノだと思うと最低な気分になってくる。

 あ、巨大ロボ転んだ。そして、あーーーっ!?


「あ、あいつら比良坂ヒルズぶっ潰しやがった! どんだけ日本経済に影響すると思ってんだ! 軽く10兆円はマイナス出るぞ!?」

「………我々ゾイサイトよりも彼らクォーツレンジャーの方が日本にとって害悪では無いでしょうか?」


俺たちの目的は征服であって、破壊ではない。破壊してしまったら、民衆から搾り取って豪遊することが出来なくなるじゃないか! くっそー! あいつらいつか『許してくださいご主人様』って言わせてやるーーー!


「ジャスパー様。発想が不潔です」

「副長、勝手に思考を読むな」

「了解しました」


全く、油断も隙もねぇ。まぁ兎に角、今日は負け戦だ。尻尾巻いて帰ることにしますか。


「帰るぞ副長。これ以上は無駄だ」

「了解」


俺と副長はかわいげのない戦闘員たちを捨てて戦場を後にしたのだった。



 20XX年。日本は経済都市として飽和した東京から首都を新経済都市、比良坂市に移転させた。それから日本は更に発展していくわけだが、それはおいといて。

 20XX年。

比良坂市に突如、ゾイサイト帝国を名乗る武装集団が侵攻してきた。ゾイサイト帝国は様々なオーバーテクノロジーを持ち、比良坂市は窮地に立たされる。そんなとき、クォーツレンジャーと名乗る五人組が巨大ロボと共に現れた。それからの展開は圧倒的で、クォーツレンジャーは瞬く間にゾイサイト帝国の怪人達を撃破。ゾイサイト帝国は壊滅的打撃を受けた。多少の敗残兵が残ったようだが、もはやゾイサイト帝国に日本を征服するほどの力はなく、比良坂市には仮初めの平和が戻っていた。



ー比良坂市地下・ゾイサイト帝国本部ー


「お帰り、ジャスパー。今日も散々だったようね」


本部に帰還するなり俺を迎えたのはメノウの冷たい微笑みと嫌みだった。この女、黙ってればイイ女なんだが二三言多いのが全て台無しにしている。


「うるせぇ。あいつら巨大ロボ出して来やがったんだぞ? 俺と副長と戦闘員だけでどうにかしろって方が間違ってる」

「あなたが巨大化して戦えば良かったじゃない」

「我々ゾイサイト人はもうお前と俺しか居ないんだぞ? 俺が死んだらゾイサイト人は絶滅じゃないか」


メノウはわざとらしくポンと手を打った。


「確かにそうねぇ。地球人と交配できなくはないけどね」

「やめろそんな気色悪い話。それよりかゾイサイト人のクローンを交配させて増やした方がマシだ。つかメノウ! お前、止めろって言ったのに、また俺のクローンを大量生産しやがったな!?」

「はいはい、そうね。で、セレス。異常はない?」


メノウは俺を軽く無視して副長に問いかけた。副長は短く一言で答える。


「問題ありません」


こっ、こいつらナチュラルに無視しやがって! 今は俺が暫定的にボスなのに!


「それよりジャスパー。どうにか一勝ぐらいしてきなさいよ」「お前その万年一回戦の野球部の監督みたいな言い方止めてくんない? マジにヘコむから」

「了解よ」


メノウは一度俺に背を向け、くるりと半回転し俺にビシッと指を突きつけた。


「勝ってくるまで帰還は許さないわ!」

「てめぇいつから俺の上官になったんだコラーーーッ!!」

「わがままねぇ。それじゃあ………」

「いや、いい。真面目な話をしよう」


俺はメノウの言葉を遮って軌道修正を試みた。目論見通りメノウは真剣な表情を取り戻しーー


「お腹が空いたわ。セレス、おにぎり作って来て」

「了解しました」


副長はおにぎりを作りに食堂へと消えていった。


「ごらぁぁぁぁあっ!! 真面目に勝つ気があんのかぁぁぁぁ!!」

「体育会系部活の熱血顧問みたいなノリ、止めてくれない?」

「あ、ごめん」

「でもね、必勝のアイテムはもう出来てるわ」


メノウはいつになく真剣な、それでいて自身に満ちた表情だった。これは信用出来る!


「何なんだそれは?」

「目には目を。歯には歯を。巨大ロボには巨大ロボよ!」


メノウはビシッと巨大プラズマディスプレイを指した。そこに表示される、憎きクォーツレンジャーの巨大ロボとは似ても似つかない巨大ロボが映っていた。ほぅ……、こいつは………。


「実用には耐えうるのか?」

「当然よ。我々の秘密兵器ね。巨大化ゾイサイト人の100倍の戦闘力があるわ」

「そいつはすげーな」


どうやって戦闘力を計ったのかは問うまい。ゾイサイト人の技術でもスカウターは作れんのだがな。


「じゃあ、早速明日にでも披露しようじゃないか」

「それはいいわね。そろそろ実戦データが欲しいと思ってたのよ」

「良し! 明日の明朝に出撃するから準備しとけ!」

「了解よ」


我々の明日の作戦は決まった。そして勝利も! ついに、ついに俺たちの悲願である日本征服の第一歩を刻むことが出来るのだッ!!

 そこにちょうどおにぎりを持った副長が帰ってきた。


「メノウ様、どうぞ。今回は昆布が入っております」

「ありがと」


メノウは短く礼を述べておにぎりをぱくつきはじめた。俺も一個だけ失敬する。


「ちょっとジャスパー。私のおにぎりよ」

「いいじゃんか。10個はあるんだし」

「ま、いいけどね」


そんな会話をしてる間におにぎりは全て消えていた。相変わらず早食いだな。味わっておにぎりを平らげた俺は令を下す。


「全員、明日の作戦に向けて早めに休むこと! 以上、解散!」

「あの、ジャスパー様。あれを実戦配備するのですか?」


副長はモニターに映された巨大ロボを指して尋ねてきた。


「そうだ。これで俺達の勝利は決まったも同然だ」

「あのロボには問題が……」

「問題? あぁ、強すぎて街を破壊してしまうということね?」

「関係ないな。もうそんなことを気にしている暇は無くなっちまったんだ。兎に角、奴らクォーツレンジャーの巨大ロボを破壊して勝利するのが最優先だっ!」

「そうではなく………」

「副長は心配症だな。今日は俺を信じて休んでおけ」


俺達は翌日の作戦の英気を養うために早めに就寝するのだった。




ー翌日ー


 俺達、ゾイサイト残党(とは言っても俺とメノウと副長だけだが)は巨大ロボに乗り込み、物質転移装置により比良坂市中心街に降り立っていた。俺は巨大ロボの中、無駄にハイテクチックなコントロール用のコンソールの前に立っていた。


「さて、奴らは現れるかな?」

「現れるわよ。今時珍しい正義感を持った奴らだもの」


と言ってる間にクォーツレンジャーが駆る巨大ロボが空の彼方から現れた。早っ!? もしやこちら側の情報が漏れてーーって、三人しかいないんだからそれはないか。素直に奴らの反応の良さを誉めるべきだな。

 俺は外部スピーカーのスイッチを入れる。


「さて、俺達ゾイサイト帝国の復活祭だッ! 出始めに貴様らクォーツレンジャー共を皆殺しじゃーー!」

「ふっ、これまで悪が栄えた試しは無い! 今日も正義勝つ!」


あ、なんか返事が帰ってきたよ。それに生意気なこと言ってるし。ここは我々の本当の力を見せてやるしかあるまい!

 俺はコンソールにコマンドを打ち込む。何故非効率的なコマンド式なのかは良くわからんが、メノウは様式美とか言ってたなぁ。

 コマンドを打ち終え、ようやくゾイサイト帝国巨大ロボの起動準備は整った。


「帝国巨大ロボ、発進!!」












 しーーーん。










 あれ? 動かない?

 コマンドを叩き込む。

 コマンドを叩き込む。

 コマンドを叩き込む。

 しかし…………動かない。


「おい、メノウ。動かないぞ」

「………おかしいわね」


と、コクピットを衝撃が襲った。俺はコンソールに頭をぶつけ、メノウは転がり、副長は平然としていた。


「ぐぉぉぉぉ………」

「何がおこったのよ?」

「クォーツレンジャーの巨大ロボが攻撃してきたようです。ダメージはありません」

「さすが私の巨大ロボね。圧倒的な防御力じゃないの」


しかし、衝撃は断続的に続いている。このままじゃ、ロボが大丈夫でも俺達が参っちまう。


「メノウ! どうして動かないんだ!? コマンドは間違ってないぞ!!」

「………おかしいわね。何が悪いのかしら」


俺達が頭を抱えて悩んでいると、副長がおずおずと手を挙げた。


「ん? どうした副長」

「あの、確かこの巨大ロボは五人のゾイサイト人の生命エネルギーを動力源として動くのでは?」

「………あ」


………………


「おい、メノウ! どういうことだ!!」

「………ごめんなさい。忘れてたわ」


メノウは申し訳なさそうに頭を垂れた。


「忘れてたわ、じゃねー!! どうすんだよ!? このままじゃなぶり殺しじゃねぇか!!」

「大丈夫よ。コンソールの上の赤いボタンを押して」

「あ、あぁ」


俺はコンソールの上の方に設置されている核ミサイルのスイッチみたいなボタンを躊躇いなく押した。短時間だけスピードが3倍になるとかのブーストボタンか何かだろうか?


「なぁ、メノウ。ちなみにこのボタンは何なんだ?」

「自爆スイッチよ。ゾイサイト帝国の最後を華々しく飾りましょう」

「ってオイ! なんでそんな無駄かつ危険な装備がついてるんだ!?」

「様式美よ」


様式美ですか。そりゃ仕方ない。…………じゃねぇ!!


「副長! 爆破まで何分だ!?」

「30秒切りました」

「たっ、退避! 緊急退避だっ!!」




 こうして、ゾイサイト帝国の巨大ロボの大爆発により地球外からの侵攻者、ゾイサイト人とクォーツレンジャーの戦いは、ゾイサイト帝国の滅亡という形で終結した。こうして地球の脅威は過ぎ去り、真の平和がーー



「おーい。メノウー、副長ー。生きてるかー」

「………かろうじてね」

「下半身がロストしましたが、概ね大丈夫です」


副長の下半身は腹の辺りから千切れて無くなっていた。うぉぉぉぉ!? ショッキング映像!?


「ジャスパー、やっぱり諦めましょう。我慢ならないけれど人間に紛れて生きるのが………」

「んなことできるか! 俺はまだ生きてんだ! 死ぬまで俺は諦めんぞーーーッ!!」



 ーー比良坂市に真の平和が訪れるのはまだまだ先になりそうだ。

ふと思い付いて書き上げた即興作品です。ちなみに固有名詞は全て宝石で統一されています。

僕は戦隊モノの悪役ってやつが好きです。兎に角好きです。なんか強いようで情けなかったり、強いのにどこか抜けてるとか。負けることが宿命づけられているが故の戦いがそこにある! なーんて言ってみたり(笑)


悪役が好きな方、感想くださると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] ☆DH書いています、和砂と言います。 初めまして。 ノリの良い悪役、素敵です。 うちの悪役は仕事よりアフターファイブに力を入れているような気がしてなりません。 是非、参考とさせていただきま…
[一言] 初めまして。佐竹と申します。 悪役、私は敵役と判断していますが、いいですね。斜に構えるというか反骨精神というか、とにかく好きです。 もう少し長くて起承転結がある、読み応えのある作品でもいいか…
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