対決魔王の鎧1
「どうするにゃ?車に隠れてやり過ごすのにゃ?」
「いやあ、あのまま歩いて来たら間違いなくこっちに来るだろう。下手に隠れたりしたら車ごと攻撃されて運良くて車がおシャカにされるだけ、悪けりゃ逃げ出せないままなぶり殺しとかだな」
「なんでただの鎧がそんなに勘が良いのにゃ?」
「そりゃ作った奴に聞いてくれ」
「じゃあ連れてくるにゃ」
「まあ死んでることになってるから無理だな」
「まったく、とんでもないもん置いて行きやがったのにゃ」
それに最初に気付いたのは夕食を終えて日課のヴィークルの点検に運転席に着いたマリィだった。随分離れてはいたがこの御時世に全身鎧に大盾と抜き身の大剣なんて異常なものが視界に入って無視するわけにもいかない。その黒一色で揃えた全身鎧はマリィが聞いていた魔王の鎧の特徴を揃えていたので食後くつろいでいた交戦経験のあるカイルが呼び出されていた。
「それではどういたしますか?車を出して振り切るのも手でしょうか?」
「あれで結構素早いから無理だな」
「じゃあやるしかないにゃ」
「まあそうなるわな。さて、それじゃ用……ん?」
エミリアと共に裏に置いてある籠手を取りに入ろうとしたカイルをマリィが止める。自分が倒すから高みの見物でもしていろと言うのだ。
「大丈夫なのか?」
「ご主人が始末したことがあるならマリィにできないはずないのにゃ。まあ見てるといいにゃ」
そう言ってさっさとヴィークルから降りていってしまう。確かにカイルは聖騎士時代に何体も倒してはきていたがそれでも易い相手では決してない。
ただマリィも弱いわけではなく気を抜きさえしなければなんとかやれるのではないかと思う。
そんなことを考えていて少し黙り込んだカイルにエミリアが不安になったらしい。
「よろしいのですか?魔王の鎧というのはそれなりに強力なモンスターだと前に話されていましたが」
「まあ気を抜かず一手々々対処すればマリィでも無理な相手ではないから構わないだろう」
「そうですか……」
「まあ危なくなれば直ぐに助太刀をするから大丈夫だって」
「その時は宜しくお願いします」
肩に手を乗せ軽く揉んでやると微笑みが返ってくる。
娘のようにとは言わないが、マリィ自身がどこまで気付いているかは知らないが、エミリアは多少自由すぎるマリィのことをよく心配している。端から見るとマリィがやり過ぎてしまったように見えるときは決まって後から謝りにくるエミリアを何度か宥めた記憶がある。