説得開始!
今回は少し説明が続きます。
さて、目標のルナ説得である。
一応俺がルナに求めているものを説明すると、転送魔法である。転送魔法というものは、術者が指定した範囲にある人、物の全てを術者が指定した場所へと転送させる魔法である。
これを使って俺は荷物と俺をまるごと城へと転送してもらおうと考えていたわけだ。
一般的に会話中で使われている魔力は、ステータスとしての"魔力"ではなく、"MP"のことであり、転送魔法は移動させる距離と物体の量によって定められる。今回の場合は俺と山積みの傷薬、そしてルナ自身であるため、MPは万単位で飛ぶ。
ルナのMPは魔王を除く敵の中では多い方であるが、流石に魔王ほどのチートなMP量ではないため、転送魔法を使えるには使えるが、MPを半分以上は使いきる計算になるだろう。
MP切れを起こした場合、反動として一定時間の行動不能と体力からMPへの強制変換が起こるのが、俺が知っているゲーム時の状態であったから、恐らくゲームが現実となった今、痛みと疲れになってくるのだろう。そりゃあルナも嫌がるわけだ。
ルナの魔力を支えて尚且つ荷物ごと転送魔法をルナに発動させる方法が無いわけでは無いが、あれは極力使いたくない。しかし、ルナの説得は難しそうだし、何よりもこのままこの場所に居座っていると、さらにモンスター達がやってきてプレゼントfor youになることは自明だ。
一番良い方法はルナを説得出来る事だがそれが難しそうな今、俺が打てる策としてはルナに道案内をさせつつ荷物を抱えて歩く事か、荷物を諦める事か、あのチートに近い最終手段だけだ。
荷物を抱えつつ歩くこと自体はは別に悪くは無いが、恐らく荷物が道中増えすぎて、動けなくなるだろう。
荷物を諦める事などは論外だ。折角自分達で獲ったものをわざわざ分けてくれたあいつらの為にもそれだけはしたくない。
「よし」
腹は括った。
「ルナ」
「はいはーい、何ですか御主人?難しい顔をして?」
「俺の魔力をお前が好きに使って良いように契約を結ぶから、俺と荷物を城まで運んで」
「…はい?」
「だから、契約を結ぶから運んでくれ。」
「…え、ええーっ?!」
「うおっ?!」
何でコイツは人の耳元で叫ぶんだ!まぁ、その反応は予想通りといっちゃ予想通りだが耳元で叫ばれることは予想していなかった。
「えっ?えっ?御主人良いんですか?!契約は破棄不可能ですよ?しかも御主人の仰っている契約は”忠誠の誓”と呼ばれているほうですよね?!あれって破ったら死にますよ?!」
「うん、知ってる。とりあえず城に戻らない限りは契約も実行出来ないんだけどどうする?」
「うえっ、あー…んー…城に戻ったら絶対契約してくれるんですか?」
「そのつもりだ。」
「うーん…魔力…あー…」
俺が提案したのは”忠誠の誓”。相手に対する一切の裏切り行為を禁じ、反逆を防ぐ代償として、相手に対する虚偽の言動ですら裏切りと見做され、裏切り行為をした行為者のみならず、裏切り行為をされた本人も死という大きなリスクを背負う。
一応、相手に対するジョークやからかいの言葉に対してはこの虚偽の言動には含まれない。あくまでも虚偽の言動が禁じられるのは戦闘中と、公的な会話、文章中である。また、他の契約が破棄可能であるのに対してこちらは破棄が不可能である。
しかし、それだけの制約があるが故に、非常に効力が高い。契約の効果として裏切りが無くなることはもちろんとして、魔力の共有、魔法の共有、武器や衣服も含む全ての持ち物の共有などが挙げられる。
今回の場合、俺は魔力だけをルナと共有したかったのだが、他の契約や誓の中では持ち物の共有や魔法の共有のみのものは存在しているが、生憎魔力の共有が可能であるものはこの誓をおいて他に無い。だから俺は余りこの方法を取りたくはなかったのだが背に腹は変えられない。
「で、どうなんだ?」
「うっしゃ、ルナちゃんやってやりますよ!元々私は魔王に忠誠を誓う使い魔ですから、よく考えたらこの契約の内容私的に全く困らないものだったんで!おーし、御主人任せてください!お城に到着し次第契約してもらいますからね!破ったら全身全霊の魔力を込めて電撃を放つので受け止めてくださいね!」
「お、おう。なら転送魔法を頼むな、ルナ」
「任せてください!ルナちゃんこう見えても学校は主席卒業掻っ攫ったんですからね!ミスなんてしませんよ!あ、その前に御主人、私のトライデント返して下さいよ!あれが無いと魔法が発動させにくいんですよー」
「ああ、はいよ。あ、そうだそうだ!それの名前トライデントだ!」
確か、ルナが使用可能な武器の内で最も練度が上がりやすいのがトライデントだったっけ。武器としての攻撃力はもちろん、防御にも使える便利な武器だったけど、魔法を発動させる時にも使用するとは知らなかったな。うーん、やはりゲームは見ているだけでは分からないことが多いな。まぁ、中に入れる奴の方が確実にレアケースなんだろうが。
「それで魔法を発動させるのか?」
「あーっと、魔法自体はこれで発動させるわけじゃないんですけど、私の場合は結構大雑把に魔法を発動することが多いので、トライデントを軸として発動させた方が安定して魔法が発動するんですよ。あとは、ライトで・・・あ、ライトってこのトライデントの名前なんですけど、ライトで魔法陣書くことも多いので良く使ってますーっとよし!御主人、出来ましたよ!」
ルナに説明を聞いている間に魔法陣が完成する。トライデントに名前を付けるほど大切にしているのにそれで地面に魔法陣を書くのは良いのか。
「んじゃ、御主人、荷物をこの中にちゃちゃっと入れてください!あ、文字は消さないように気をつけてくださいね!」
「わかった」
黙々と荷物をルナとの二人がかりで魔法陣の中へと置いていく。何だか少し目を離していた隙に傷薬の数が増えているような気がする。いや、これは気のせいじゃないレベルだな。どうやら目を離していた間にまたも置いていった奴がいるようだ。
「ふう、これで全部だな。これでもいけるか?」
「大丈夫ですよ御主人!では、帰りましょうか!と、その前に御主人、」
「契約な?わかったって」
「絶対絶対絶対絶対絶ー対ですからね!」
「はいはい」
「んじゃ、ルナいっきまーす!えいっ!」
ルナがトライデントを魔法陣の中心にさした瞬間、淡い光に辺りが包まれ始めた。
ふむ、とりあえずは城まで帰れそうだな。
《目標》
“new”契約を結ぼう
【済】ルナを説得しよう
荷物を運ぼう
魔王の城を目指そう
説明長かった!着いてきて下さってありがとうございます!
さて、ようやく魔王も帰宅出来るようです。
キャラクターもどんどん増えていく予定ですが、とりあえず山積みであろう問題を魔王に解決していって貰いましょう。