予想外の展開だ!
さて、魔王の待つ城、ひいては自分の家へ帰ろう。まあ、今は魔王不在だけど。
それは良い。
だが、この状況はいただけない。
道無き道に近い森の中を前方に見える城だけを頼りに元気よく進んでいたわけだが、もちろん敵…いや味方?ともよく遭遇するわけで。
「あっ、大王様!どうしたんです?こんな辺鄙な所まで?」
「いや、ちょっと出てきてみたんだけど」
「じゃあ、丁度良かった!良ければこれ持って帰って下さい!旅人から剥ぎ取ってきたんですよ!」
「あ、ありがとう」
「いや、お礼なんてそんなそんな!じゃ、俺らは帰りますね!おい、お前らー帰んぞー!」
手を振りながら去って行く陽気な骸骨の集団を見送る。
先程渡された傷薬とお金の山を抱える自分の両腕を見てため息。そして、整理して詰め込めるだけ詰め込めた持ち物欄を見て再度ため息。
ステータス欄等を開けられる時計っぽいやつが鞄の役割やら何やらを果たしているようで、中々保存が効くからついつい詰めすぎた感がある。一度取り出して詰め直すべきか。
「と、いうかそもそもは何でこうなる!普通は魔王って人からもモンスターからも怖がられる存在じゃ無いのかよ!」
ぼやいた所で、一度受け取った品物が減るわけでもない。
会う先々でモンスターやら魔族やらからのプレゼントの嵐。
慕われているようで嬉しいのは嬉しいのだが何事にも限度というものがある。
とてもじゃないが、持って彷徨けるレベルの量ではない。
「何か無いのか…」
必死に持ち物欄をスクロールする魔王。
端から見ているととてもシュールな光景であろうが、そんなことは俺の知ったこっちゃない。俺の場合は死活問題である。
「えーっと、傷薬、傷薬、傷薬、傷薬、薬草、傷薬、石ころ…ってか傷薬率高っ!しかも全部×99?!まだ外に出てる分あるし!どんだけ旅人から傷薬剥ぎ取るの大好きなんだあいつら!」
何で揃いも揃って傷薬取ってくるんだよ。何か他に無かったのか。
魔法を使えば浮遊させたり等も出来るだろうと思ったが、MPが高いのに魔力1という何とも言えない能力持ちの俺。
一度調子に乗って浮遊魔法を使おうと思って使ったものの、MPを大量に消費したにも関わらず品物が1cm足らず位しか浮かないという衝撃的事実を目の当たりにした為断念。
恐らくはMPがいくらあってもセンスが無いと無理だということであろう。賢さも低かったし。
くそ無駄なチートである。
その癖、体力と力は有り余るくらいにあるので、荷物の重さ自体はそれほど感じないが、量が量だけに前が見えない。これでは居るのかどうかは不明だが、冒険者辺りとばったり会った時に不便である。
どうしたものか。
無い知恵を絞ろうと努力している俺の頭に何かが刺さった。
《目標》
“new”荷物を運ぼう
魔王の城を目指そう
次の話でようやく一人増えます。
魔王のステータスはかなりチートですけど無駄な面が多い。
さてさて、魔王はどうするのか。