帰還フラグか死亡フラグか ウェルトゥって何?
騎士団と巫女の目的は魔の森の奥にあるという異世界への扉を閉じることだった。異世界への扉?もしかして…帰れる?よし!待ってろ扉!行くぞ、扉の地ウェルトゥへ。
#twnovel RPGっぽい異世界なう。そこへアベさんが来た。巫女さんが立ち上がろうとするがアベさんが目で制す。慌てて涙拭う。アベさんと巫女さんが会話して。「ほったらかしですまんかったな、大事な話がある。一緒にきてんか?やて。」おお!通訳!込み入った話に混ざれる!意思の疎通!
#twnovel 異世界なう。気付くと騎士達はそこかしこでかがり火を焚き、テントを張って野営の準備を始めていた。会議終わってたんだ。俺は巫女さんとアベさんとアベ邸のダイニングへ。以下、アベさんの発言を巫女さんが通訳してくれたもののまとめ。
#twnovel 異世界なう。巫女さん軍団は魔の森にある「ウェルトゥ」を目指す。そこには「扉」がありそれを閉じる為に。最近、異世界からの来訪者が急増し、四日程前には王宮のすぐそばに怪物が現れ、多数の死傷者が出た。これを重く見た神聖庁は事態の収拾の為、神儀任務隊の派遣を決定。
#twnovel 異世界なう。巫女とその世話係、護衛の精鋭騎士から構成される特別部隊だが、目的地周辺「魔の森」は踏み込めば生きては帰れぬと近隣の猟師も近寄らない。(俺そんなとこに住んでたのか。この世界のデフォルト森じゃないのね…)アドバイザーとしてアベさんの助力を請いに来たと。
#twnovel 異世界なう。アベさんは話を受ける事にした。俺を同行させる事を条件に。…俺?扉!そうか!もしかして「そう、多分最初にして最後のチャンス…元の世界に帰れるかもしれん、って。」マジで?ここに来てまさかの帰還フラグ?そうか、そのウェル…なんとがトリップの根源なら…!
#twnovel 但し帰れる保証はない。扉をくぐれないかもしれないし、くぐれたとしてその先は全く別世界かもしれない。いや、扉まで辿りつけずに「死んでまうかもしれへん。」…通訳さんが関西弁なのでアベさんまで巻き添えで関西人めいてみえるなぁ。諸般の事情は解りました。行きます!絶対!
#twnovel 異世界なう。巫女さんが俺の意思をアベさんに。アベさん満足げに微笑む。「そう言うやろと思てはったって。明日朝、夜明けとともに出発するから支度してはよ寝や、やて。」あ、一つお願いしていいですか?アベさん一緒に写真撮らせてくれませんか?宗教上のタブーとかでなければ。
#twnovel 異世界なう。巫女さんが不思議そうな顔を。あ、写真ってのは瞬く間に肖像画を描く仕掛けです。明日から立て込んで、そのまま帰るかもしれないし。「…うちも混ざってええ?」え…まぁ、どうぞ。「うちらどうすればいいん?」えと、誰かもう一人、仕掛け動かす人が必要で…。
#twnovel 異世界なう。侍女のおばさん、超おっかなビックリ俺の携帯を。表の騎士のかがり火二つ借りて。ナイトモードならギリ写るハズ。パシャッに驚いたおばさん携帯を落とす!だーっもう!あ、でも写真は一発で完璧な一枚が。にしてもなんだこの3ショット。あ…改めて見ると俺、汚いな。
#twnovel 異世界なう。ほなな、お休み、と巫女さんと侍女は自分のテントに帰って行った。ダイニングの隅に俺用マット敷いてその上で、俺は自分の荷作り。家鍵に革紐通して首から下げる。現世の服と財布をバッグに丸めて詰め、道具ザックとは別にする。んー…体拭いて顔洗って髭剃っとくか?
#twnovel 携帯の明かり頼りに一人川原で洗顔と体拭き。うがいしつつ見上げる夜空には今日も二つの、糸のように細い月。帰れる…きっと帰れる!アベさんとのお別れは寂しいが親不幸はできん。あれ…なんで今あの巫女さんの顔が浮かんだ?ちげぇよバカ!冷水でも一度顔洗う。冷たい夜風が頬に気持ちよかった。
#twnovel RPGっぽい異世界なう。ウェルトゥ探索の旅一日目。聞き損ねたけどウェルトゥってなんだろ?ダンジョン?この世界に転落した最初のツイで「RPGっぽい異世界」って書いたけどほんとにRPGっぽくなってきた…ドラゴンとかいないよな?ウェルトゥに。いや無理だぜ?マジ無理。
#twnovel 異世界なう。出発前に騎士団から俺とアベさんに剣と鎧の贈り物。けど俺もアベさんも辞退した。俺は単に長い剣に慣れてないし森歩きには今のが向いてると。逆に騎士さん達は鉄板鎧に鎖カタビラまで着込んで片道三日あの森を往く気?剣も長いのがカッコイイけどお勧めしないがなぁ。
#twnovel 異世界なう。アベさんが辞退したのは実用重視なだけでなくやはり王立騎士団の鎧は着れないというケジメだろうな。巫女さんに聞いたんだがこの任を無事果たせばアベさんは罰を許され騎士団に戻ってよい、と王様は言ってるらしい。アベさんは答えを保留したらしいが…うーん。
#twnovel 異世界なう。朝一驚いたのは巫女さんと侍女さんの服装。二人とも髪を結い上げ俺が着てるよな鎧下の木綿服の上下にブーツに手袋。森歩きを分かってる。ローブなんか着てったらビリビリになるもんな。巫女さんと目が合う。「…変やない?」いえ、新鮮…じゃねぇ、お似合いです。
#twnovel 異世界なう。夜明け直前に出発し、約一時間毎に小休止、三時間毎に大休止と食事。アベさんが号令するのだが時間正確。感覚で測ってんのかな。俺携帯あるから時間判るけど。騎士の人達かなりバテバテ。だから言ったじゃん。普段馬モドキにばっかり乗ってるからだよ。槍いらなくね?
#twnovel 異世界なう。「ン・ヒロ」小休止中、車座で休んでいると若い騎士の人が話かけてきた。ン・ヒロ?「…あんま疲れてへんな、何か歩き方にコツでもあるんか?やて。」巫女さんが通訳。そういや巫女さんもン・ファタリって呼ばれてたな。ンって「さん」とか「殿」とかの敬称かな。
#twnovel 異世界なう。森で疲れないコツ…「荷物を軽くする事です。」とは流石に言えない。んー…足場を良く視て、なるべく固い地面や安定した岩を選んで踏む事。同時に少し遠くの先行きにも注意して予めどう歩こうかイメージしながら歩く事か?それと小休止を馬鹿にしないで全力で休む事。
#twnovel 異世界なう。巫女さん通訳中。「…全力で休むってどないするんか?って。」俺は無言でアベさん見てみ、と首の動きで合図。アベさんブーツの紐ほどき装備帯もザックも全て体から外し鎧の金具も外して体が一度完全に「緩む」状態を作ってる。普段の狩りの時もそう。休む時は休む。
#twnovel 異世界なう。始めは俺も脱いだり付けたりが手間なんじゃ?と思ってたが「緩む」タイミングを作る作らないでは翌日、翌々日の疲れの溜まり方が全然違う。俺も今同じように全部外し緩め中。騎士達は感心したように鼻を鳴らした。…だらしなく見えるから騎士には真似しづらいよね。
#twnovel 異世界なう。「流石はン・ヒロ。ン・アベェが異世界の勇者とたたえるのも無理あれへんな、やて。」…ごめん、も一回言って?何?ジョブチェンジイベント発生?学生→要救助者→居候→狩人見習い…と来て唐突に勇者⁉アベさん…持ち上げ過ぎっす。自分、オタク崩れのヘタレっすよ。
#twnovel RPGっぽい異世界なう。夜も更け野営中。俺とアベさんは交代で寝る。騎士達も常時一人が起きてる制。騎士団の持参食の世話に。今日も飯が旨い。夕飯後の焚火まったり中、騎士の一人が竪琴のショボい版みたいな楽器だして来てポロンポロン弾語り始めた。おお…雰囲気あるなぁ。
#twnovel 異世界なう。「世界の成り立ちの神話を歌った歌やで。」いつの間にか隣に座ってた巫女さんがささやく。…近いっす。けど今更、離れる動きするのも感じ悪いよな。歌が終わり、皆が拍手する。こっちの世界でも拍手は称賛の合図なのね。文化も類型進化するのか…と、妙に納得。
#twnovel 異世界なう。前回の休憩中に話しかけて来た騎士がまた話しかけて来る。何?「ン・ヒロの世界の歌を聞かせてんか?やて。」ちょっ…おま!アベさんも珍しく混ざる。「そりゃええ、是非うちも聞きたいわ、やて。」アベさんまさかの無茶振り派?皆の期待の目。逃げ場はない。とほほ…
#twnovel 異世界なう。こうなりゃヤケ!歌うからには全力で行く!咳払いを一つ。訳して貰ってイイですか?これから歌うのは…うちの世界で有名な英雄の歌です。彼はいつも自分の身を犠牲にして人を助けます。恩人にして先生、ン・アベェの為に歌います。聴いて下さい。「アンパ○マンの歌」
#twnovel 異世界なう。えーっなんでア○パンマン?って思った人、挙手。…一度アンパンマ○の歌の歌詞、歌詞検索して読み上げてみて欲しい。タイミングによっては泣ける!TVのOPで流れてるのは実は二番なんだ。一番とラストのサビパートの繰り返しとか超メッセージソング。胸熱くなる。
#twnovel 異世界なう。アベさんの過去と今、これからを想い、これまでのアベさんと俺との暮らしを想い、いずれ訪れる別れを想い、心を込めて本気で、丁寧に歌う。隣でボソボソと巫女さんが同時通訳。ショボい竪琴の人、感覚で伴奏合わせてくれてる。が諸般の事情により歌詞は書けません…。
#twnovel 異世界なう。ぜぇ、ぜぇ、歌い切ったぞ…決して上手くはないと思うが魂が乗った感覚あり。あれ…静まり返って…何?なんかやらかした?その気ないけどタブー犯した系?「ええ歌やね…」ぐすん、て。大袈裟なw。巫女さんの拍手に続いて皆も大きな拍手をくれる。ほ…乗り切ったか。
#twnovel 異世界なう。ショボい竪琴の人、立ち上がって近づいて来て早口でなんかまくし立てる。え、あの、スンマセン。「ちゃうよ、素晴らしい歌だって。後でちゃんと教えて欲しいって。こっちの言葉にして歌として広めたいんやて。うちも手ぇ貸すわ。」…はぁ。なんか大事になって来たな。
#twnovel 異世界なう。という訳で初回の焚火番は、俺とショボい竪琴の人と巫女さんに。アベさん寝床に向かう前に俺んとこ来てボソッと。「今まで聴いたどの歌よりも、ええ歌やった。ありがとう。やて。」分を越えた賛辞です。気持ちが伝わってヨカッタ。その後!竪琴の人のしつこさ…!
#twnovel 異世界なう。三時間みっちり繰り返し「アン○ンマンの歌」を…!なんか革表紙のでけえ手帳みたいのにインク壺?と羽根ペン出して来て、歌わせちゃ琴を弾き、訳させちゃメモり。「今んとこ、も一回。」とか同じとこで二十回位言われるワケよ。そりゃ後半、咳き込みっ放しにもなる。
#twnovel 異世界なう。一通り編曲と歌詞翻訳が終わり、一度通して竪琴の人が歌う。…前奏ながっ。ま、雰囲気あるけど。オペラとかのOPみたい。だが歌は流石に上手い!しまった!動画撮れば良かった!暗いけど音声は入るじゃん!異世界版アンパン○ンなんて音源、二度と入手できねえよ。
#twnovel 異世界なう。声もいいしビブラートはんぱねえ。声量も十分で聴き応えバッチリ。外国語だとほんとアニソンと思えない…と聴き惚れてたら「ア〜アァ♬○ンパンマァン…」の部分はそのままで、おいっ!ってなる。多分この人の中でアンパンマ○は鎧姿の凛々しい壮年の男なんだろな。
#twnovel 異世界なう。これまた長く切なげなエピローグが終わり巫女さんと二人で拍手。竪琴の人も満足げ。…これでこの世界にもアン○ンマン英雄譚が拡がっていくのか。やなせたかし先生もまさかRPGっぽい異世界に自分の歌が歌い継がれて行ってるとは夢にも思うまい。なんかすみません。