対バケカマキリ戦 いのちをだいじに
森に喧騒と撃剣の音が響き渡る。謎の騎士団といつかのバケカマキリが戦ってる！黙って見てる俺たちじゃないですよね、アベさん。うなれ！走法！達磨転！
#twnovel RPGっぽい異世界なう。大変。イベント発生。クマゴリラの腕と脚を背負い家路の半ば。街道へ向かう道から複数の怒号と剣撃の音。アベさんと顔見合わせ武器以外の荷物を一旦置いて、身を低くして小走りに近づく。茂みに身を隠しつつ様子を伺った先には…バケカマキリ！また出た！
#twnovel 異世界なう。戦ってるのはいつか街ですれ違った白い鎧のリアル騎士団！ついアベさんの方見ると複雑げな表情。どうやら悪路にスタッグした馬車を護っているよう。…どこのバカだ、こんな森に馬車って。馬モドキが四頭、正気失っていななきまくる。騎士は十人くらい？十人隊って奴？
#twnovel 異世界なう。二人の騎士が地面に倒れてるのが見える。一人は生死不明。一人は…真っ二つで断面から赤黒い内容物が。気の毒に。隣でアベさんが剣を抜く。俺も屈んだ姿勢のまま剣を抜いた。「ヒロ」珍しく名前呼ばれる。ここに居ていいぞ、と眼が語る。俺は小さく首を振って応える。
#twnovel 異世界なう。アベさんが何か一言ボソッと。「無理はするな。」って雰囲気。唾一つ飲んで頷く。前は飲めなかった唾が今回は飲める。アベさんと一緒に戦うと思うと、不思議と恐怖を感じない。マヒしてたのかな？色々あり過ぎて。冷静に考えれば、具体的な死に直面する場面なんだが。
#twnovel 異世界なう。考えてみりゃたかが虫！そういやカマキリって動体には敏感だけど動かないものって余り見えないんじゃなかったっけ？「飛び出せ！科学くん」が深夜枠だった頃観たような。異世界カマキリが同じ性質の保証はないが、やってみる価値はある。騎士も注意引いてくれてるし。
#twnovel 異世界なう。アベさんと同時に茂みを飛び出す。アベさんは倒れてる騎士に。俺が狙うのは柔らかそうな奴の腹。走り出したがカマ野郎がこっち向いたらピタッ。よそ向いたらダッシュ！を繰り返す。見よ！これぞ「走法・達磨転」！この時流石に周囲から浮いてると感じた…が命が大事！
#twnovel 異世界なう。アベさんは負傷騎士を助け起こし肩貸しながらカマキリから離れる。騎士を安全な場所に置くと他の騎士に声をかけ、連携して馬車から中の人を連れ出した。白いぞろっとした服の…女？二人？よく見る余裕はない。向こうは盛り上がってるが俺は一人でだるまさん転んだ中。
#twnovel 異世界なう。三十回ばかりピタッ、ダッシュ！を繰り返し丸太のような後脚をかいくぐって遂に奴の腹の下へ！息を一つ大きく吸い込み、渾身の力で剣をブヨブヨした巨大な腹に突き刺す！怖くないぞお前なんかっっ！うわぁ〜ん！そのまま両の手に体重をかけカマ野郎の尻尾方向に走る！
#twnovel 異世界なう。突き立てたままの剣がじゅうたんみたいな感触の奴の腹を5メーターばかり切り裂く。どろりとミルキィな体液。続いて真っ白でいびつな、ぬれたゴムホースみたいなものがでろでろ飛び出す。うぇっ！キショっっ！ああ、手と言わず顔と言わずミルキィ体液が！あったけえ！
#twnovel 異世界なう。カマキリはたまらずのけぞると振り返って自分の腹を覗き込む。やべ！腹の影の死角に入るように今度は命がけの隠れんぼ。…なんだ？あの女。人が命がけで戦ってるのにそんなとこで何おどったりクルクル回ったりしてるんだ？いいから逃げろ！お前護る騎士が動けんだろ！
#twnovel 異世界なう。カマキリはあっち振り向き、こっち振り向き自分に傷を負わせた相手…俺を探す。その度にひょいっと反対側に移動する俺。しつけえ！アベさん助けて〜。くそぅあの女まだ踊ってる…応援のつもりか？と思った次の瞬間、耳鳴りがして空気が変わった。風が、踊る女に集る。
#twnovel 異世界なう。なんだ？と思う間もなくまぶしい閃光！と鼓膜を打つ音…というより衝撃波！…落雷？恐る恐る目を開けるとカマキリの動きが止まっている。今だ！転がるように腹の下から飛び出し距離をとって振り向くと…何が起きたんだ？カマキリの首から上が…頭が、無くなってる！
#twnovel 異世界なう。もしかしてこれ…魔法？あの女の？じゃ、あの踊りみたいのは魔法の準備動作か何かか？助けられたのか俺。ってか準備動作、長っ！十分な年月寿命縮んだわ！「ベギラマっ！」とか叫べばすぐ出るわけじゃないのね？…微妙。威力は凄いが戦闘中にあれは…実用的なのかな？
#twnovel 異世界なう。カマキリは解体される建物みたいに崩れ伏し完全に動かなくなった。騎士達が歓声を上げる。なんなんだこいつら。何しに来たんだ？もしかして…アベさんを捕まえに来たんじゃ⁈アベさん逃げて！…とアベさんを探すと魔法少女と談笑中。…あれ？なんか手とか振ってるし。
#twnovel 異世界なう。亡くなった騎士の塚を造って弔い、馬車から荷を降ろすと騎士一人と負傷騎士は馬車で帰って行った。騎士八人と魔法少女、侍女？のおばさんと共にずらずら連なってアベ邸に向かう。…なんなんですか？アベさんこの人達は。僕らどうにかなっちゃうんですか？…腹減った。
