クマゴリラよ、安らかに
狩り…繰り返される凄絶な命の遣り取り。現代文明社会の食生活しか知らなかった俺が、そこに見た真実とは?
#twnovel RPGっぽい異世界なう。今日は…狩りの内容は充実していたし、初!の俺単独で獲物取るも達成できたのだが、素直に喜べない感じ。タバリィッス…あ、ボウガンね。やらして貰えて角兎仕留めた。その後、次の罠ポイントに移動中、いきなりクマみたいな生き物が襲いかかって来た。
#twnovel 異世界なう。茂みから飛び出して来たそいつは大きさも含めほぼクマなんだけど腕だけ太く長くて…ゴリラの腕みたいな?なんか「読者が考えたモンスター」っぽい安易なデザイン。俺とアベさん、ほぼ同時に剣を抜いて構える。…正直、この瞬間このシチュエーションには自分で酔った。
#twnovel 異世界なう。脳裏では不謹慎だけどドラクエの戦闘のBGMが流れる。アベさんが動く。あ!出た!「ゆらぁ〜」!…そうか、ゆらぁ〜の動きを相手の目線が追い始めた瞬間、真逆にヒョイッと身をかわす感じで動くのか!第三者目線で見て初めて理屈が解ったが真似はできなそうだな…。
#twnovel 異世界なう。クマゴリラの死角に滑り込んだアベさんの必殺の一撃がうなる!…あれ?浅くないですか?アベさん。意外にちょっと斬ってすぐ飛び退いて間合いを取った。そしてじりりと間合いを詰め、ゆらぁ〜、ちょっと斬って飛び退く。ほう。そういう戦い方ですか。これなら俺も。
#twnovel 異世界なう。そうだよな、通常一人で狩りしてたら怪我して動けなくなったら死ぬもんな。時間かかってもヒット&アウェイで自分の身を護らないと。カッコ良くはないがリアル。実用的。呼吸を合わせ、二人でクマゴリラに傷を増やして行く。怒りに吠えて腕を振ってもまあ当たらない。
#twnovel 異世界なう。毛皮の意外な防御力の高さ。なかなか刃が通らん。体重と勢いが乗り、当たった刃の角度がそのベクトルと一致して初めて斬れる感じ。アベさんは十回斬れば十傷になるが、俺は十回斬って四、五傷ってぐらい。…これ時間かかるな。けど気は抜けない。下手すりゃ大怪我だ。
#twnovel 異世界なう。クマゴリラも必死だが人間二人の方がしたたかだ。傷だらけの血まみれになりながら、徐々に動きが鈍くなって行く。ヒット&アウェイの回転が上がる。怒りの咆哮は段々痛々しい悲鳴に。それでも俺たちはやめない。…なんかカワイソウだな。血まみれでズタボロ。凄惨。
#twnovel 異世界なう。実際一時間くらいだろうか?失血と疲労で息も絶え絶えなクマゴリラ。俺たちもそこそこ返り血浴びて息は荒れてる。まだ続くのか、これ?って思った瞬間。どこにそんな体力を残してたのか、アベさん稲妻の如く奴の懐に飛び込んで喉元を一閃!刃は動脈と気管に達した。
#twnovel 異世界なう。喉元から大量の血と「ひょう〜」という調子外れな音を出しクマゴリラが倒れる。アベさんはそれでも構えを解かない。二、三度痙攣したクマゴリラが完全に動かなくなると、深く息を吐いてようやく構えを解いた。で剣を合掌した両手の親指に水平に挟み、しばし黙祷する。
#twnovel 異世界なう。正直俺は緊張と疲労、生き物を痛めつけて殺すっていうストレスからすぐにでも座り込みたい気持ちだったが、アベさんに習った。いや、必要だよ。この黙祷は。上手く言えないがクマゴリラの命に俺たちが敬意を払わなくてどうする?みたいな。ごめんな…クマゴリラ…。
#twnovel 異世界なう。その後は二人とも黙って黙々と解体作業。こいつは腕と脚のみ食用にするらしい。頭と胴体は確かにあんまり食べるとこなさそうだ。さっき腕の一部を塩焼きにして食ったんだが…うまかった。思ったより柔らかく、ぷりぷりした食感。ありがとう…クマゴリラ。頂きました。
#twnovel 異世界なう。狩りってこう…男のロマンてかゲームっぽい感覚で爽やかなイメージだったけど、世間知らずな俺の勘違いだった。生きようとしてる命を断って…殺して食うってことなんだよな。文字通り命のやり取りなんだよ。狩る相手に対する敬意や感謝、忘れないようにしないとな…。
#twnovel 異世界なう。それはそれとして今焚き火の番中。一人焚き火のそばで例の「ゆらぁ〜っ」の練習…ってか真似してたら寝てると思ってたアベさん起きてて、クスクス笑われた。…人が悪いなぁ…恥ずい!この技勝手に名前付けていいですか?命名。「歩法・柳葉」。…ありがち過ぎるか。