俺は…カードを信じる!俺のターン!ドローっ‼
唐突に大阪に行くと言い出す、先輩の姿のファムナ。けど先立つものが…え?心配すんな?…そ、その黒光りするアイテムは!まさか⁉ 大阪を目指す車中、俺は彼女から意外な告白を聴くことに。「モナミ、自分は死んだことにしてくれって…。」そんな先輩を、ファムナを…優しく包み込めるのか⁉ 俺!
#twnovel 北越谷なう。ってか新大阪まで幾らかかるんだ?すいません、ファムナさん。お金降ろしに行ってもいいてすか?とほほ…「心配せんでええで。お金のことなら。ほら。」彼女は財布から黒光りするカードを出して見せた。…なんだそりゃ?げ!まさか‼ 俺も実物見るのは初めてだが…!
#twnovel 北越谷なう。クレジットカード界最強の「黒いカード」!真の金持ちだけが持つというカードの横綱!一説には取引上限額がなく、家でも飛行機でも買えるという…都市伝説じゃなかったのか⁉ で、なぜそれをお前が? 「うちのじゃないけどな。モナミのや。」…いや一緒。なぜ先輩が?
#twnovel 北越谷なう。「モナミの元カレの親がくれたらしいで。モナミが飛び降りた後に。」ありそうな話だが…マジで?「最初サンゼンマン入ってたけど、引越しや新しい家に使ったさかい、残りイッセンマンちょっとやって。…足りる?」…行って帰るだけなら二百往復ぐらいできるんじゃね?
#twnovel 北越谷なう。じゃあ一回、家に寄らせてくれ。着替えとか準備したい。「だめ!今から行く!必要なものがあったら買ってええってモナミも言うとるし。」…なんだこの展開。日帰り?「一日で回れるん?うち大阪で行きたいとこ、結構あんで。」無理…USJだけでも一日かかりそうだな。
#twnovel 北越谷なう。「なら宿取って泊まりがけやなぁ。安心しい。宿代もご飯代も全部モナミが払うてくれるし。」…体は初恋の先輩、心は異世界の関西系巫女とツン系お姉さんの二重人格。どちらも俺を憎からず思ってくれてるそんな女の子と、資金の心配なしの二人きりの泊りがけ大阪旅行…⁉
#twnovel 北越谷なう。無論やぶさかではないが…こんなことって‼ 俺の身に起きていいのか⁉ 春…まだまだ先だと思ってた遠い春が、すぐ目の前に…。バシイッ!後頭部を思い切り殴られ、目から火花が。痛って…!いきなりなにすんだ⁉ ファム! 「うちやない!モナミや!」…ほんとかよ。
#twnovel 北越谷なう。「…あたしの許可なく、あたしの体に変な真似しないように、やて。」…まだなんもしてないじゃないすか先輩。あーまだ痛え。先輩が嫌がるようなこと無理にしたりしませんって。信用ねえなあ。「さあ行くで、ヒロ!デンシャ乗ろ!デンシャ!」テンション高えなぁファム。
#twnovel 北越谷駅なう。…取り敢えず東京まで出て新幹線、かなぁ?登りホームで電車待ち。「よっ!清水!」ああ、遠藤。同じ専修の悪友だ。「あれ?女の子連れ?…彼女とか?」ああ。話せば長いが、一言で言うなら運命の人だ。この人丸々。色々ひっくるめて全部。紹介しよう。ファムナだ。
#twnovel 北越谷駅なう。「でえっ!マジでっ⁉」ぺこりとおじぎするファム。「…弱み握って脅してるんじゃなかろうな。」あのな。清水家嫡男、清水火炉人。家名に誓ってそんな卑劣な真似はせん。遠藤が顔寄せて囁く。「ま、お前が騙されてるという可能性はある。」…否定はせん。顔ちけえよ。
#twnovel 北越谷駅なう。とにかくそういう事だ。今後宜しくな。「…ちょっと写メ、いいか?」いやだが、いいだろう。パシャ!「Cクラのみんなには一斉送信しとく。」いやだが、まあいい。お、登り来た。じゃあな、遠藤。「せいぜい幸せにな、裏切り者!」幸せに関しては心配すんな!じゃな!
#twnovel 北越谷なう。「ヒロ、うち…ヒロの彼女?」違うのか?俺はとっくに、俺とお前は彼氏と彼女…恋人同士だと思ってるんだが。「…でも、うち…」ああ、体は先輩ってことなら気にすんな。先輩が認めてくれる範囲で、恋人でいよう。「けど…モナミも、ヒロのこと、好きなんやで。」
#twnovel 各駅停車なう。ドップラーしながら踏切の音が遠ざかる。「中にいたら分かるわ。モナミ、うちと同じかそれ以上に…ヒロのことが好きや。」……。「モナミ最初な、自分を死んだ事にしてくれってうちに言ってん。」え?「もうヒロの前にモナミとしては現れない、会わす顔がないって。」
#twnovel 先輩…。「でもうち、それは違うって。モナミが死んだって聞いたらヒロはめっちゃ悲しんで自分を責めるで、って。」ああ…実際そうだった。「だから一緒に会いに行こって誘ってん。一人で死のうとしたバツに、死ぬほどビックリさせたろ、って。」…ファム。お前いい子だなぁ。
#twnovel ファム、お前、先輩の事きらいか?「ううん。しゃべり方とか生き方とか全然違うねんけど、なんか他人って気がしないねんな。…違う世界の、も一人の自分…って感じや。」大事な事、聴くぞ?正直に答えてくれ。…俺と先輩が仲良くするの…イヤか?答え辛いなら返事は今でなくても…。
#twnovel 「…ヒロは?」…前に答えた通りだ。先輩のいない日々に慣れてはいるが、好きな気持ちが消え去ったわけじゃない。ファムは…俺なりに護りたいと思ってる。この先、できればずっと。「でもうちは…『ここ』におらん。おったとしても…ヒロと結婚もしてあげられへん。だからなヒロ、」
#twnovel 「モナミのこと、うちと同じに大事にしたげて。ヒロを必要としてるってことでは、うちより多分、モナミの方が切実や。元々モナミが願わんかったら、うちはヒロとも、出会わんやったわけやし。」……。「こうしてちょいちょい遊びに来るわ。そん時は…一緒におってな。ヒロ。」…ああ。
#twnovel 先輩は?なんて?「…なんも言うてない。モナミ。それでええ?うち、急に来て体…借りるかも知れんで?」自分の内側に語りかけながら彼女は…右眼から一筋、涙を流した。そんな彼女の様子にたまらなくなった俺はそっと彼女を、二人を抱き寄せ…がんっ!おもっくそ踏まれた足に激痛!
#twnovel つウッ‼ いきなりなにすんだ!ファム!「うちやないモナミや!あたしの許可なく変な真似するなって言ったでしょ?やて。」…えぇっ⁉変、ってかごく自然な流れだったと思うんですが?…こんな三角関係もあるのね。くすくす笑う彼女。今のはどっちだ?はあ…いつか貰えるの?許可。
#twnovel 山手線なう。上野乗り換えで東京に向かう。「…にしてもヒロの世界すごいなぁ!何もかも。色々聞いてええ?」いいけど…全部答えられるとは限らんぞ。「まずデンシャ!これどうやって動いとるん?」…うーむ。この世界の乗り物は殆ど、電気か内燃機関で動いてる。「ふんふん。」
#twnovel 山手線なう。例えばカミナリも電気の一種。でかい機械で造って、太い針金に流して遠くに伝えてる。ほら…隣の線路…鉄の棒の道の上、黒い紐がずうっとあるだろ?「ほんまや。」電車の屋根に伸び縮みする鉄の枠があって針金…電線から電気をひろってるんだ。「…で?なんで動くん?」
#twnovel 山手線なう。あっちの世界に鉄にくっつく石ってある?「ああ、あるで。」こっちじゃ磁石って言うんだが、細い針金をぐるぐる巻きにした棒を作って、磁石を近くに置き、細い針金に電気を通すと…電気と磁石の力で棒がクルクル回るんだ。…そういう仕掛けを、モーターと呼んでる。
#twnovel 山手線なう。その回る棒の先に歯車やはずみ車やらを付けて早さや強さを調節しながら、電車は走ってるんだ。「へえ…ややこしいけど、魔法、とかではないんやなぁ。」そうだな。…こっちじゃ「科学」って言われる分野だ。自然の力を解き明かし、加工し、便利に使うための学問。
#twnovel 「もうひとつのナイネン…なんやったっけ?それは?電気と違うん?」内燃機関な。ざっくり言うとよく燃える油を…ってな調子で電車を乗り換えながら、ファムへの科学講座は続いた。車、飛行機、コンクリート、電灯、スピーカー、携帯電話、テレビ、コンピュータ、インターネット…。
#twnovel ファムはやはり賢い。時に画像検索した画像を見せつつ、時に乱暴な例えをまじえつつの俺の拙い説明でも、どんどんこっちの世界の知識を吸収し、素直で鋭い質問を返して来る。それに必死で答えて気がつけば、次が新大阪。あっという間の三時間だった。げほ。しゃべり疲れた。喉痛え。
#twnovel のぞみ車中なう。「ヒロ!今、『次は新大阪です。』いうたで!あのスピーカー!」ああ、そうだなファム。周りの人が変な目で見るから、スピーカーを強調するのはよそうか。彼女は胸元からペンダントを引き出すと、カオルの鍵に語りかけた。「カオルお待たせ。…着いたで。大阪や。」
#twnovel のぞみ車中なう。周りの乗客も降り支度。…まずどこから行く?「たこ焼き!たこ焼き食べたい!」そか。じゃあたこ焼き食いながらルートを相談すっか。「うん!へへ ♪」嬉しそうだなあ。二人で新大阪駅のホームに降り立つ。お?ホームの段差思ったよりあるな。ん⁉…ここ…どこ⁉