みんな…第二外国語なんにした?
真実を求め、現実世界で先輩の消息を追いかける俺。そんな俺に余りにも淡々と日常は降り積もる。教務課からの呼び出しで久し振りに大学を訪れた俺は、懐かしさとともに改めて現実世界に帰って来たと実感する。そんな俺に忍び寄る黒い影。やるならやっぞ!異世界帰りなめんじゃねえ!
#twnovel 千葉大附属病院なう。…同じだ。いない。別の病院なのか?そもそも千葉じゃないのか?それともやっぱりウェルトゥは先輩の…。「そのツラじゃ、いなかったか。」はい。…すんません。JR本千葉までいっすか?「どーすんだ?諦めるのか?」いえ別の方法で当たってみます。はぁ。
#twnovel JR本千葉駅なう。9千2百円か。そんなもんだろう。…ありがとうございました。色々。「いらねえよ。代金はもう貰った。」いけません!「なら花代にとっとけ。俺からだ。先輩にでっけえ花束買ってやんな。」でも…「話にはオチがいるんだ。今回のオチを運賃で買うぜ。」…だけど。
#twnovel 本千葉駅なう。「なら一個だけ頼むわ。先輩がどうなったか分かったら、」ビッと差し出される名刺。「結末を教えてくんな。花を喜んだかどうかな。後日談もウケがいいんだ。俺は大槻。稲タクの大槻だ。アタマはねえしウデは弱ええが、アシがいるときゃ電話しな。」黄色い歯でニッ。
#twnovel 本千葉駅なう。タクシーは短くクラクションを鳴らすと走り去って行った。…マンガみたいな運ちゃんだったなぁ。あんな大人、ホントにいるんだ。…結局今日も収穫なし。いや…とりあえず実家は越してるのと、市内の総合病院にはいないことは分かった。前進はしてる、と考えよう。
#twnovel 南越谷なう。うーん…あとは郵便くらいか?ここ一月で越してるなら、転送手続きがされてれば転居先に届くはず。ただ先方が返事くれなきゃそれっきりなんだよな。あ電話。って俺の部屋じゃん!出ます出ます!…はい。あ、はいそうです。え?あ病気してて。分かりました。明日。はい。
#twnovel 南越谷なう。大学の教務課からだ。履修登録の締め切りが過ぎてると。…そういやそんな手続きあったなあ。面倒くさっ!今それどころじゃないっつの!でも仕方ないか。俺、騎士だけど本分は学業だしな。…明日は北越谷か。大学…すげえ久し振りな気がする。履修登録?気乗りしねえ…。
#twnovel 南越谷なう。天気悪い。狩人生活を経て天気に敏感になったかな。いや感じ方が、とかではなく。単純に空を見上げたり、風の匂いを嗅いだりする回数が増えて…まあ、以前はそんなこと全くと言っていいほどしてなかったけど。降る、と天気予報も見ず確信。…見れば済む話でもある。
#twnovel 区間準急なう。電車の中で降り出した。高架から見下ろす越谷の街並み…カンカンとドップラーしながら過ぎてゆく踏切。なんかこの景色こそ現実感がないな…。ゲームか映画の画像をぼんやり眺めてるみたいだ。わざとらしいというか。雨とか降ってると余計に。…俺がズレてるんだろうが。
#twnovel 北越谷駅なう。ぱらばらと降りる人波に緩く混ざりながらホームを流れる。一度意識してしまうと、風景への違和感は一層強く…あっちにいた時と変わらない。気分はまるで異世界の迷子。…これ残りの一生続くのかな。いつか地に足が着いた感じになるんだろうか…アベさんやファムを忘れて?
#twnovel 北越谷なう。…やめよう。せんなきことだ。南口も人はまばら。通学時間帯だが春休みだからな。傘をさし雨のそぼ降る通りに出ながら、陽の光を薄く漏らす雲の様子に、程なく止むな、と思った。…ん?気のせいか。誰かに見られてる気がしたが…感覚妄想気分?ええい!ヤワな精神め…!
#twnovel 北越谷なう。ロータリーの表通りから一本入った道。それでも数人、大学方面へ。学生らしき人もそうでない人も。この人たち、誰一人…異世界の存在なんて信じないだろうな。この世界だけが唯一無二の盤石なものって堅く信じて一生を終えるんだろうな。…ホントは違うんだよ?マジで。
#twnovel 北越谷なう。世界は夜空の星みたいに沢山ある。この世界なんてその内のたった一つに過ぎない。…なんて。この俺でもふと、全部結局…妄想なんじゃないかと未だに思う。写真フォルダ確認するもん。アベさん、ファム、俺の写真。今のとこ、見る度にそこにある。現実だ。何もかも。
#twnovel 北越谷なう。角を曲がると緩やかな登り坂。元荒川の土手。出津橋という歩道のみの細い橋を渡ればBK大学。土手に沿って桜並木の遊歩道。桜の蕾は膨らんではいるが、もう一息といった所。なんか…懐かしさすら感じる。大学。もっかいこうして来られるなんて。帰ってきたんだな…。
#twnovel 北越谷なう。オケ…管弦楽部の音合わせをBGMに正門を抜け、新館の教務課へ。謝って履修登録の用紙を提出。…学食で早めの昼メシにするか。今日のB定なにかな?白身魚フライ…よしとしよう。券売機、セルフサービスの水くみ機、人の少ない学食の独特の雰囲気。日常だ…余りにも。
#twnovel 北越谷なう。よし、食ったぞ。帰って手紙の作成だ。先輩のご両親の情に訴えかけて、つい返事を書いてしまうような短くも巧みな文面を考えよう。稲タクの大槻さんも話の結末を待ってる。警備員さんに会釈して、雨の正門を抜ける。その時ふと、警備小屋のそばに立つ人物が目に入った。
#twnovel 北越谷なう。黒い大きな傘で顔は見えない。黒いジャケット、黒いスキニー。バイク乗りが履くようなゴツ目のブーツ。誰か待ってるにしてもなぜ傘差してまで外で?と違和感を覚えた。…ま、俺には関係ないか。と、そ知らぬ顔で通り過ぎたんだが…ちょっと離れてついて来てないか?奴。
#twnovel 北越谷なう。よくある自意識過剰かも知れん。俺は出津橋を渡ると遊歩道を右に…ワザと駅と反対に曲がった。この遊歩道、この先は国道まで数キロ延々住宅地と川原に挟まれていて「こっち側」に曲がる人間はまずいない。どう出る?革ブーツ…。むう。ついて来るかそれでも。こいつ…。
#twnovel 北越谷なう。純粋な北越谷住民の可能性もゼロじゃない。が、もし違うとすると…俺に何か用か?心当たりはない。右手が剣の柄を探り空振りする。バカ!帯剣してるわけねぇっての。体格はっきり見てねえな。そう大男って感じじゃなかったと思うが。クマゴリよりは小さい。怖かねえぞ。
#twnovel 北越谷なう。桜見るふりしてさりげに後方確認。20mくらいか?雨の遊歩道には俺と奴だけ。まどろっこしい。確かめてやる。俺は立ち止まると踵を返した。奴は歩調を変えずこっちに歩み続ける。俺は奴に向かって歩き出す。異世界帰りなめんな。こちとらウェルトゥの騎士だっつうの!
#twnovel 北越谷なう。10m…5m…みるみる縮まる俺と奴の距離。すれ違うか?このまま。距離が2mを切る。その時!奴が俺の進路に立ちふさがった!2m弱…一足一刀の間合い。俺は傘を上げて会釈すると右に寄る。奴も同じだけ動いて再び道を塞ぐ。左に動けば奴も左に。やっぱ俺に用、か。
#twnovel 北越谷なう。あの…どいてもらえませんか?「……。」傘の向こうの表情は見えない。聞こえないのか?そこ、どけよ。わざと自分の中の怒りを掻き立てる。「……。」一際大きな声に怒気を載せ、腹から叫ぶ。どけっつったら…【どけぇっ‼】その瞬間!奴は傘を捨て、俺に突進して来た!
#twnovel 北越谷なう!余りに意外なその顔に固まる俺!奴がその隙を逃すはずがない!奴はやすやすとおれに飛びつく!奴の両腕がガッチリ俺を捉える!立ちすくみされるがままの俺!奴が叫んだ!「ヒロっ‼ 会いたかった!」お前…ファムか?異世界の巫女?ファムナ=ファタリ?…マジでかっ?