さようなら、アベさん
試練をクリアし、いよいよ「扉」に向かう俺たち。仲間たちとの、アベさんとの別れを思い、気持ちの晴れない俺。そしてついに、その時が訪れる。さようなら、みんな!さようなら、アベさん!
#twnovel RPGっぽい異世界なう。いつものそっけない階段。歩幅に合わない。登る足取りが…重い。疲れもある。一生分の冒険を一日でしたようなもんだからな。けど一番の原因は、仲間たちとの…アベさんとの。一段登る毎に近づく、別れだ。段を登る度、名場面の記憶がフラッシュバックする。
#twnovel 異世界なう。俺に襲いかかる目玉ヘドロを棘棒で一撃するアベさん。ジャーキーくれるアベさん。高熱にうなされるアベさんにおろおろする俺。街での買い出し。酒場?でのご飯。この世界の成り立ちを教えてくれた。剣の朝練。対クマゴリ戦。…「ゆらぁ〜」の練習を笑われたりしたな。
#twnovel 異世界なう。騎士たちとの野営…異世界の歌が聴きたいなんて無茶振りの人に乗っかって。いい歌だと褒めてもらった。塔にもし、生贄が必要でも、誰も死なせたくないと言う俺に同意してくれた。…で、お前も命を大事にしろ、って。王の間での激烈なバトル。アベさん、無事でよかった。
#twnovel 異世界なう。光の間…あの肩ぽんってのはやっぱ「ここまで頑張ったな。」だったんだろうな。自分が塩になろって時まで、俺に気持ちを向けてくれてた。さっきの騎士叙勲式。真剣な顔だったのは儀式だから?俺との別れを寂しがってくれてるから?…くそ、扉になんかつかなけりゃ。
#twnovel 異世界なう。俺の想いとは裏腹に着いた。いつもの広間…だけど二面の壁に扉が一つずつ。左の扉には長い文章が書いてある金属のプレート。右の扉にはなんか四文字書いてある小さなプレートが。こっちは「出口」とかか。「…うん。一階へ、て書いたる。こっちは…『扉』…えーと。」
#twnovel 異世界なう。「…試練を乗り越えし者。自らにウェルトゥに触れる資格ありと信じる者。命を賭けるに値する願いを持つ者。扉をくぐれ。但し一度くぐらば戻るべからず。その時はなんぴとも、その資格を失う。永遠に…やて。」うーん…やっぱ入ったら死ぬかもなのか?あれ…って言うか。
#twnovel 異世界なう。ここがウェルトゥだろ?『ウェルトゥに触れる資格ありと…』ってどゆこと?触りまくってるばかりかウンコまでなすりつけちゃったが。てか『扉』ってこの扉のこと?異世界への扉は?俺たちそれに用があるんだけど。異世界への扉の名前が、ウェルトゥ…だったのか?
#twnovel 異世界なう。…とにかく。ここから先は、俺とファムナだけで、かな。入った途端全くの異世界に飛ばされる可能性もあるし。な…ファムナ。「そやな。ようやく巫女の出番。この扉の先を確かめて、扉を閉じるのがうちの仕事や。」うん。俺も一緒に。…帰れるのかな。元の、俺の世界へ。
#twnovel 異世界なう。まあ帰れなかったとしても…別の世界に飛ばされたとしても、ファムナと一緒ならいいか。好きな女の子と両想いになるってのは、それだけで世界を丸々一個、手に入れたようなもんだし。「なに?ニヤニヤして…なんかエッチなこと考えてるやろ?」…当らずとも遠からず。
#twnovel 異世界なう。ファムナ、訳してくれ。皆さん、ありがとうございました。ここまで来れたのは本当に…皆さんのお陰です。だれ一人欠けてても…ここまで来れなかった。なんて言っていいか…ありがとう以外の言葉が…出てきません。ありがとう、本当に…ありがとうございましたっ!
#twnovel 異世界なう。仲間たち一人一人と握手する。…ン・ヴァルキュリアス。も少し仕事に真剣になれば帯のレギュラーどころか冠番組も夢じゃない。頑張れ。…団長さん。最後まで名前知らないままでしたけど、ここで蒸し返すのはやめときます。ヅラon塩からの復活。お見事でした。元気で。
#twnovel 異世界なう。ン・ポ。異世界版アンパンマ◯にあなたの魂を見ました。俺の歌、作ってもいいけど…無理だろうけど誇張はほどほどにして下さい。あと仕事中は仕事しないといずれクビになると思います。泣かないで。…アベさん。ン・アベェンスグストゥス。ファムナ、訳してくれ。
#twnovel 異世界なう。アベさん。俺の師匠にして命の恩人。ウェルトゥの騎士である俺の君主。生涯の友人。アベさんがいなければ、俺、とっくに死んでました。アベさんがいなければ俺、ここまで来られませんでした。アベさんがいなければ俺、…俺…だめだ、泣けてきて言葉にならない…。
#twnovel RPGっぽい異世界なう。ううっ…離ればなれとか、やだよぅ…アベさぁん!人目もはばからずアベさんに抱きつく。アベさんは、心地よい力加減で俺を抱きとめると、しばらくそのまま、俺の嗚咽が落ち着くのを待った。後ろでファムナがなんか貰い泣きしてる。うわ〜ん!オロロォーン!
#twnovel 異世界なう。ぐすん。えぐっ。えぐっ。でも…帰らなきゃ。父ちゃん、母ちゃんの為にも。ファムナを独りでは遣れないし。ひっく。ひっく。「ヒロ。ティクニグ・ウェルトゥ。」アベさんは俺の肩を持つと、優しく引き離しながら俺の目を見据えた。そのアベさんの目も、涙ぐんでいた。
#twnovel 異世界なう。アベさんが語る言葉。ファムナが訳す。「うちは陛下のお申し出を辞退しようと思う。今更騎士に戻っても勝手の違いに恥をかくだけや。魔の森に生き、魔の森に死す。ヒロにも解るやろ?この森の暮らしも慣れれば悪くない。時にお前のような…珍しい客も訪れるしな。」
#twnovel 異世界なう。「そんな時、森にも誰かおらんとな。今回の事が終わっても、またいつ何時、ウェルトゥへの道案内が必要になるか分からん。配下の一人もいはしないが、魔の森の主は…この先もずっと魔の森の主や。」はい。それが…アベさんらしいと思います。「だからな、ヒロ。」はい。
#twnovel 「またこの世界を訪れることがあれば、魔の森のうちの家に寄りや。うちはずっとそこにおる。」はい。「…ウェルトゥってのは色んな意味があってな。本によっては『聞き届けるもの』と訳したものもある。もしお前が必要になった時、急に呼ぶかも知れん。…その時は、聞き届けてや。」
#twnovel はい!約束します!ウェルトゥの騎士、シミズ・ヒロトの名に於いて!「短い間やったが楽しかった。ヒロのお陰でうちは失くしてたもの、取り戻したわ。礼を言うのはこっちや。…おおきに。」や、そんな…「元気で、な。」アベさんも…有難うございました!いく久しくお健やかにっ!
#twnovel 異世界なう。それじゃ…里心が付くと旅立てなくなるし。みんなありがとう!さようなら!元気で!ファムナ、行くぞっ。「うん!」二人で扉を開く。石造りの薄暗い…トンネル。先の方に明かりが見える。怖くはない。何が待っていようと。踏み込む俺たちの後ろで扉は音を立てて閉じた。