だからモンハンは苦手だって
ファタリとすれちがったまま「闇の間」に挑む俺。漆黒の闇の中、ついに最強最悪のモンスターが姿を現す!生き残れるか…俺!
#twnovel RPGっぽい異世界なう。ふてくされるファタリの手を握り、たいまつを手にそろりそろりと闇の部屋を進む。本当に暗い。現世ではまず体験しない本当の「闇」。たいまつがあるからまだ前のイケメンの背中が見えてるが、これが消えたら伸ばした手の先も見えないんじゃなかろうか?
#twnovel 異世界なう。とりあえず向こう側の壁を目指して進んでるんだが、思ったより長いな…暗いからそう感じるのか?と思った瞬間!ごうぅっ!と強烈な突風が吹いた。たいまつが消え、俺は突き飛ばされたように床に転がる。いけね! ファタリの手、放した!たいまつも落とした!どこだ⁉
#twnovel 異世界なう。ファタ…と叫ぼうとしたその時、ひた!と血の気の引いた冷たい手が俺の手を掴む。そしてそのままがばっと抱きしめられた!「…ヒロ!」ファタリ!無事か良かった!「怖かった…。」大丈夫。一緒にいるよ。だから、その、そんなにぎゅうっとしなくても…してもいいけど。
#twnovel 異世界なう。この時、この子意外に胸あるな、と思った俺を誰が責められる?俺だって健全な青年男子!真っ暗闇で好みの女の子に抱きつかれたら全神経の九割は女の子と接してる部分に集中するさ!俺の意思とは関係無く!フルオートでな!…ところでイケメンは?みんなは?…はぐれた?
#twnovel 異世界なう。アベさ…と叫ぼうと息を吸い込みかけた時、ファタリが俺の手を引いた。どした?「ヒロ…あそこ!」なんかいる?闇の中に目を凝らす。言われてみれば…なんか影みたいなもの?「動いた!…ほらまた!」ほんとだ!闇よりなお黒い塊みたいなもの…!剣のツカに手をかける。
#twnovel 異世界なう。「…大きい!」確かに…ってかこの部屋、どんな広さだ!塔の闇の中、巨大な黒い影…まさか。俺の脳裏に最悪のモンスターの名前が浮かぶ。赤い目が二つ闇の中に輝く。もたげた首は、クレーン位か?鍾乳石のような牙が並んだ口は、喉の炎で内側からめらめらと照らされる!
#twnovel 異世界なう!ドラゴンっ⁉ ぎゃおぉぉぉぉぉっ‼ 奴が天に向かって吠えた!ちょ!待て!いないハズだろっ⁉ ドラゴン!倒せるわけ…奴の目がこっちを向く!やべえっブレス来る!…ごおおおっ!危ねえファタリ!「きゃあっ!」暗闇を転がって炎を躱す!一応剣抜く…が、無理だ!
#twnovel 異世界なう。言ったじゃん俺!「生身の人間はドラゴンと戦うべきじゃないと心から思う派」だって!来る!もう一度!炎ブレス!ファタリ!こっちだ!「きゃ…ん!」ごうううっ!熱っ!今の近かった!服からアイロンかかった匂いがする!こんなんどーすんだ!走って…逃げれるか?
#twnovel 異世界なう!ファタリ、走るぞ!逃げるんだ!「逃げるってどこへ⁉」いいから早く!闇の中ファタリの手を引き、奴から遠ざかるように走る! 「ヒロ…!」黙って走れ!…って危ない!俺はファタリを押し倒して一緒に倒れる!頭上を炎の柱が通過する。う熱っ!くそ!どうしようも!
#twnovel 異世界なう!ファタリを助け起こし、再び走り出そうと手を引くが…彼女は走ろうとしない。どうした?どっかやられたか?「もう無理…あたしたち死ぬんだわ!せめて最後は一緒にいさせて!ヒロ!」抱きついてくるファタリ。バカ言うな!俺もお前も死んでたまるか!必ず生きて…あれ?
#twnovel 異世界なう!「塔の試練を乗り越えようなんて無理だったのよ!」…待て。「あたしたちは死んで、仲間も全滅するんだわ!」待て!ファタリ!「何もかも、もうお終いよ!」待てっつってんだろ!涙目の彼女が俺を見上げる。ファタリお前、言葉…どうした?関西弁…じゃなかったぞ、今。
#twnovel 異世界なう。やけにネガティブなことばかり言うな、お前。「何を言ってるの?ヒロ。」…そういや最初にあそこ!とか大きい!とか言い出して…何かいるような…いや『何かいる』って俺に思わせようとしたのか?手にしたって…部屋入るまではあんなに温かかったのに。…冷たすぎる。
#twnovel お前…誰だ?目の前のファタリが亀裂のような笑みを浮かべた。「もう遅い。」剣を横薙ぎに!奴はカエルのように背後にジャンプし闇に溶けた!ケケケッと悪趣味な笑い声を残して。…ノセられた!あいつの言うまま闇に悪いイメージを膨らませて…!多分あれは…俺が生んだドラゴンだ!
#twnovel 異世界なう!ファタリーッ!「ヒロ!どこや!返事してやーっ!」無事か!良かった!そう遠くはない。が何分暗くて見えない。「みんなに伝えろーっ!こっちには来るなーっ!でかい敵がいてやばいっ!」さあ、どうする俺。俺のイメージが生んだ怪物なら…俺になら消せるはず!消えろ!
#twnovel 異世界なう。あれ?消えないな?わっ!ブレス来たぁっ!「きゃあっ!」声…近づいてる?ファタリ!くんなっつったろが!「だってヒロが!」「ヒロ!」アベさんまで!来ちゃダメです!…まずい!早くあいつなんとかしないと!でも…目の前で火吹いてる竜を頭から消すとか…無理!
#twnovel 異世界なう!消えろ〜っ消えろ〜っ!ダメだ!意識すればする程、あいつハッキリして来てる!…そうだ!追加であいつを倒す武器かなんか出せば!なに出す?戦車?戦闘機?戦艦? ダメだ…微妙にハッキリイメージできん!できたとして怪獣に勝てるイメージも湧かん!「ヒロ!どこ!」
#twnovel 異世界なう!仲間達の足音が聞こえる!時間がない!俺のせいで…みんなが!くそーっ!俺は叫んで天を仰いだ!すると真っ暗な闇に、白い点が見えた。…なんだ?アレ。小さな輝きはゆっくりと降りて来る。世界が静寂に包まれる。時間が…止まった?いや、光はゆっくり降りて来ている。
#twnovel 異世界なう。ゆっくりと降りてくるそれ…白い短い柄の先にチューリップに似た半透明の飾り。ゴールドのライン。…知ってるぞ。俺はあの道具を知っている。確かに見覚えがある。昔…まだ世界が未知と冒険に満ちていた…少年の日。それは淡く輝きながら目の高さまで降りて来た。
#twnovel 異世界なう。間違いない!スパークレ○ス!懐かしいっ!っつっても知らない人もいるか。ウルトラマ○・ティ○の劇中の変身アイテム!俺○ィガ大好きだったんだ。スパークレン○、クリスマスにもらえた時は狂喜乱舞したもんだ。電池ブタに名前書いてどこにでも持ってったっけ…。
#twnovel 異世界なう。俺の目の前でゆっくり回るス○ークレンス。見ると…俺のか、これ。名前書いてある。マジックで。ヒロ○って。これで何回しただろう、変身ごっこ。何枚描いたろう、ウルトラマ○・ティ○の絵。なんだ、最初から知ってたよ俺。怪獣を倒すのが誰か。何をここに呼ぶべきか!
#twnovel 異世界なう!意を決してスパークレン○をこの手に掴む!一層明るい光が周囲を照らした!ぐるる…と竜が目を細めてたじろぐ。意外に近い所まで来てたんだ。ファタリ、アベさん…「ヒロ!それ…」来るなっつったろが。俺は大丈夫。頼む。離れてくれ。踏んじゃうかもだから。「え?」
#twnovel 異世界なう!ティ○ッ!短く叫んでレンスを掲げる!カシャッと開いた先端の白いクリスタルが目を開けてられないほどの光を放つ!光の粒子が俺を包み、光に溶けた俺は見る間に身長53メートルの光の巨人に!『…ジャッ!』足元に驚くファタリ達が見えた。危ないぞ。離れてろ。
#twnovel 異世界なう!あ、だめだ脳裏に勝手にブイシック○のテーマソングが…!不謹慎だが…止められん!だって当時は毎日のように「聴いたまま歌い」してたんだもん。正直、今もプレイリストに入ってるんだよね。う!竜が炎吐く態勢に!この角度だとファタリ達が危ない!『ジャッ!』
#twnovel 異世界なう!俺はパントマイマーのように空中に壁を描く!すると描いたままの光の障壁が出現する!障壁は炎をことごとく跳ね返す!ああ、ティ○だ、俺。まさかこの年でティ○になる夢がかなうとは…!『ヘァッ!』俺は竜に駆け寄る!大きさは奈良で見た鹿くらいの感じ。これならっ!
#twnovel 異世界なう!渾身のチョップ!炎を躱して顔にキック!『ジャッ!』奴の口から炎弾連射!連続バク転で躱す俺!大ジャンプで一気に間合いを詰め!行け流星キック!「くぎゃぁぁぁっ!」『ヘェアッ!』角を折られた奴はふらふらだ。トドメだ!ゼペリオ○光線!『ハァァァッ…ジャッ‼』
#twnovel 異世界なう。大爆発!俺は光線の構えを解く。カラータイ○ーが点滅を始めた。短いな3分。こんなもんか。…ありがとうウルトラマ○・ティ○。こんな…根性なしのモヤシっ子に力貸してくれて。闇の中、子供の俺が笑ってVサインした気がした。俺を再び光の粒子が包む。…光に溶ける。
#twnovel 異世界なう。元の大きさ…俺に戻る俺。光の残滓がまだ俺の周りを漂う。手のスパーク○ンスは…光を失い、石になっていた。少し力を込めるとそれは、くずっと砂になって…宙に消えた。「ヒローッ!」ファタリ達が駆け寄って来る。みんな無事みたいだ。俺は流れる涙を袖で拭った。