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ハイファンで良くある不遇スキルが実は拡大解釈で何でも出来るではなく、そのまんまのスキルで活躍する令嬢の話

作者: 山田 勝
掲載日:2026/05/03

「アグネス!婚約を破棄する。何だ。伯爵令嬢なのに、スキル大道芸とは何だ!」



 婚約者に破談を宣言されたわ。わざわざ学園生が集まる食堂でよ。

 皆の耳目が集まるわ。隣には男爵令嬢がいるわ。確か男爵令嬢だけど聖女だから特待生のビアンカ様。



「見ろ。それに比べて、男爵令嬢のビアンカは聖女だ!私はビアンカと婚約を結ぶ!」

「フフフ、ゲルドリア様、本当の事を言っては可哀想だわ」



 本当は・・・政略結婚なのに、私だって好きで大道芸のスキルが身についたのではない。

 そう・・好きでは・・・好きでは・・・何かが引っかかった。


 その時、辺り一面が光り輝いた。

 私を中心に光に包まれたわ。


「な、何だ!スキル発動か?」

「キャア、何?」




 ☆☆☆


 何やら膨大な記憶が注ぎ込まれたわ。

 異国の世界だわ。



「えっ、大道芸人なのに・・・アパートに住んでいるのですか?」


「あ?馬鹿なの?大道芸は肉体労働だ。路上で生活しているって、三食食って屋根のある所で寝ないと体調の維持が出きんわ!」


「いや、演出が必要でして・・・テレビに出られますよ」


「いらん!合名会社にして訓練場も確保しているのだ。ドイツでパフォーマンスするぜ」



 思い出したわ。前世、父は大道芸人だった。

 偏見があったわ・・・路上生活者、酒ばかり飲んでいる。浪費家で頑固、でも、芸はピカ一のドキュメンタリーを撮りたいとテレビ局の方が来たわ。


 でも、厳しい訓練をしないと芸が出来ない。

 心は鬼、顔は笑顔、それが大道芸人魂だわ。



 そう、大道芸人の何が悪いの?




 ・・・・・・・・・・・・・・・・



「な、何だ。光がおさまった」

「一体、何が起きたのだ!」

「あら、アグネス様、顔を伏せているわ」



 私は顔を伏せたまま、右手をあげて、人差し指から炎を出した。

 生活魔法だ。


 ボア!


 人は炎を見る本能がある。

 ザワザワと喧噪が聞こえるわ。


 沈黙は怖くない。沈黙は時に聴衆の耳目が集中する効果がある。


 私はブレイクダンスを披露した。


 地面すれすれで体を回転する。

 そして、バク転で着地。


 シーンとなっている。


 大道芸人は営業のプロでもある。


「あ~、お客さん!お客さん!ゲルドリア様とビアンカ様の婚約を祝福しますわ。近くの方は寄ってみて下さい。遠からん者は音でも聞いてやがれですわ」


「たった10分!いえ、5分みて頂ければディナーの話題になるってもので」


 口で営業する。


 ゲルドリアとビアンカは呆気にとられているわ。


「珍しいダンスか?」

「遊牧民のダンスに似ている・・・」

「この奇行、父上に報告せねば」


 ぞろぞろと集まって来たわね。


「ショータイム!」


 私はエグザイ〇みたいな首を固定して体をクネクネするダンスを披露する。

 エグいもので気味悪がらせて。


「いや、すごいけど、怖いわ」

「・・・これも身体能力なのか?」

 そして、ブレイクダンスだわ。


「ヒャホー!」


 そして、最後、体操選手のように月面宙返りをする。


「はい!」


 パチパチパチと拍手がまばらにされた。

 体力はあまりないから決めるか。


「次に、ゲルドリア様とビアンカ様に並んでもらいます。私が2人の上を跳び越えます!大技ですわ。ご協力をお願いします。お二人の今後を祝福しますわ」


「嫌だ。何だ。その大道芸は」

「そうよ。怖いわ」


「あら、そこに立っているだけですわ。立って頂けたらお二人を祝福しますわ」


「・・・そうだよ。ゲルド立ってやれよ」

「そうよ」


 何人か賛同してくれたわ。


「そこの騎士科の方、手を貸して下さいませんか?」

「俺?いいけど」


 バレーのレシーブのように勢いをつけてもらうように頼み込んだ。


「では、皆様、手拍子をお願いします。3,2,1,といったら手拍子です」


 手拍子に会わせて、足を騎士科の学生の手に乗せ。反動で・・・・・二人の頭に・・・



【ボディープレス!】


 空中で体をひねって。

 横にして体をぶつけたわ。


「ウギャー!」

「キャアアアーーーー!」


 ドタンと二人は床に転がったわ。私は反動でそれほど怪我はない。


「オホホホホ、では皆様、フィナーレですわ。さようなら」


 誤魔化しながら去ったわ。



 ゲルドリア様はその後、侯爵家で怒られたそうだわ。


『ビアンカ嬢は、力の弱い聖女だ。何故、共同事業を壊す事をするのか?』

『でも、父上、アグネスは大道芸ですよ』

『阿呆、コジキ女でも政略で結婚するのが貴族令息たる者だ』


 結局、我が家門が有利な条件で共同事業の契約を結んだ。


 その後は、私は噂が広まり。王宮に呼ばれたわ。



「アグネスよ。病弱の第二王子、ビンセントクルーガーを慰めるために芸をしてくれないか?」


 陛下に呼ばれたわ。


 第二王子を見ると、退屈そうに欠伸をしているわ。

 だから、きっぱりと断ったわ。


「嫌ですわ。芸は観客があって成り立つ物、見たくない方は路上をそのまま素通りして頂くのが流儀ですわ。それがスキル大道芸人ですわ」


「褒美を取らすぞ」

「嫌ですわ。私はコジキではございません」


 仕方ない。だって、大道芸人ですもの。


 王妃殿下が弁護して下さいますわ。


「陛下、貴族令嬢を呼びつけて芸をせよ。というのがそもそも間違いではないでしょうか?」


「うむ・・・」


 何とか退散をしようとしたら。



「待って、ごめん。僕、貴方の芸をみたい・・・です。欠伸をしたのは、昨日、咳が止らなくて眠れなかった・・・から」


「フフフ、いいですわ。お代は見てからの決めて頂きますわ」


 そう、私は王宮でブレイクダンスをしたわ。

 だけど、ある日、王子殿下から指輪を頂くとは思ってもみなかった。


「もらってくれますか?」

「まだ、芸をしておりませんが・・」

「違う。僕を台にして跳躍をしてくれないか?」

「・・・はい」


どうやらプロポーズのようだ。もっと、ロマンティックな言葉かと思ったが、大道芸人だから仕方ない。


最後までお読み頂き有難うございました。

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